選手権「20得点」を目指す日章学園のエース 英プレミア内定・高岡伶颯は何がスゴいのか?
高岡は厳しいマークを受けながら1回戦で3得点2アシストを記録した 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
高岡伶颯(れんと)は2023年秋に開催されたU-17ワールドカップに出場し、スーパーサブ的な起用ながら4試合で4得点。そんな結果と実力を認められて、24年6月にイングランド・プレミアリーグ「サウサンプトン」への加入内定を勝ち取っていた。
しかも高岡は決して「エリート」でない。県内の強豪とはいえ公立の三股町立三股中出身で、U-17日本代表入りも23年冬の九州新人大会を取材したライターが当時の監督に情報を伝えたことがきっかけだった。三笘薫、冨安健洋、遠藤航、鎌田大地、菅原由勢と日本人選手が世界最高峰のプレミアで堂々とプレーする時代とはいえ、166センチ・61キロの17歳(2007年3月12日生まれ)がこれだけ高い評価を受けたことは異例に違いない。
その高岡は12月29日、日章学園(宮崎)のエースとして第103回高校サッカー選手権の初戦に臨んだ。チームは西目(秋田)に6-1と勝利し、彼も3得点2アシストを記録。前半だけでハットトリックを達成する圧巻のプレーを披露した。
ハットトリックにも満足せず
高岡は前半だけでハットトリックを達成したが… 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
「まだまだ満足はしていないです。しっかり決め切る部分でフィーリングが合わず、決められない場面もあった。数字だけを見ればハットトリックといういい形で終われたけど4、5、6点と取れたと思う」(高岡)
高岡は大会前に「20得点」を目標として掲げ、それをメディア経由で発信もしていた。1回戦から決勝まですべてでプレーしても最大6試合で、選手権の1大会最多得点は第87回大会で大迫勇也が記録した10得点。そんな大記録の2倍を狙うというのだから、確かに1試合3得点では足りない。
また実際に試合を見れば、4点以上を奪っても不思議のない経過があった。
日章学園は立ち上がりから高岡、水田祥太朗の2トップにボールを集め、立ち上がりから一気に畳み掛けるゲームプランがハマっていた。原啓太監督はこう振り返る。
「序盤は2トップに背後へのボールを多く、長いボールも多くという指示をしていました」
高岡は開始早々の5分、鋭い動き出しから相手の背後に抜け出して最初の決定機を迎える。7分にも左サイドバック三田井宏生のフィードから1対1の形に持ち込んだ。
10分にはついに高岡が南創太の右クロスから先制の右足ボレーを叩き込む。17分にも左クロスをコントロールして左足で流し込んだ。
高岡はシンプルに「シュートを打つ」「決定機に絡む」頻度が多い選手で、この試合もシュートを9本放っている。
前半アディショナルタイムに決めた3点目は味方のFKからDFの隙間に走り込んで、ヘディングで合わせた形。本人が「強みのジャンプが出せた。3点の中では一番いい得点」と説明する会心のフィニッシュだった。日章学園は前半で5-1として、試合をほぼ決めた。
高岡の多彩な武器
スペースへの抜け出しは高岡の大きな武器 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
彼は小柄だが跳躍力が抜群で、大型選手との空中戦を苦にしない。寄せられても簡単に体勢を崩さない逞しさもある。一瞬のスピードは分かりやすい武器で、五分の状況から3歩4歩で抜け出してしまう。右利きだが左側から抜け出せて、左足キックの質も高い。しかも振りがコンパクトで、小さなギャップから強いキックを打てる。そんな強みから決定機の数は自然と増えていく。
ただ得点だけで貢献する「古典的ストライカー」かといえば違う。西目戦は相手のマークが集まる中でアシストも2つしていて、チームファーストで確率の高い選択ができていた。74分に高岡が見せたヒールの落としは、ゴールにこそつながらなかったが、彼のアイディアと戦術眼を示す「裏スーパープレー」だった。
原監督もそんな姿勢をこう評価する。
「高岡にも『行けるところと行けないところの判断をしなさい』と伝えています。得点だけでなくアシストも付いているので、いい判断ができていた印象です」
高岡は2年次の選手権も注目選手の一人だったが、1回戦で無得点に終わり、チームもPK戦の末に名古屋(愛知)に屈した。しかし原監督によると、今年度の公式戦で無得点は「サウサンプトンから帰ってきた直後」のプリンスリーグ九州ロアッソ熊本U-18戦(5月4日)のみ。1年を通じてコンスタントに結果を残し、西目戦も結果と状況判断からその成長を我々に印象づけた。しかも過去の「怪物FW」とは違う凄みを発揮していた。