広島逆襲Vへ、キーマンは「4番・新井」 ひたむきな38歳が盛り上げる
若手との間にいい意味で“壁”ない
38歳のムードメーカーに若手との壁はない。悲願の優勝へ、目の前のプレーに全力を尽くすのみ 【写真は共同】
その中心にいる新井は、「丸(佳浩)が出塁して、キク(菊池涼介)がしっかり送ってくれる。前後には2人の外国人がいて、みんなでプレッシャーをかけられている」と、チーム一丸を強調する。打線が得点力不足に悩んだ時期には、「シーズン序盤は打てなくて迷惑をかけた。シーズンは長いので必ず借りは返したい」と、投手陣に対してもベテランらしい気遣いを見せた。
単なる言葉だけでは終わらない。6月28日の中日戦(マツダスタジアム)で先制2ランを放ってお立ち台に上がった新井は、ヒーローインタビューの後に高卒3年目の鈴木誠也に頭から水をかけられると、「しっかり覚えておくよ」と笑顔でつぶやき、周囲を笑わせた。「チームではだいぶ年上だけど、とにかく自分が一生懸命になってやること。あとはそれを見て、何を感じてくれるか」と新井は言う。今季でプロ17年目、1月に38歳となったが、若手選手との間にいい意味で“壁”はない。
試合中には打撃でも守備でも、オーバーアクションとも思える動きを見せる。その賛否両論はさておき、周囲は間違いなく盛り上がっている。あれこれ口で言うのではなく、低迷期の広島、そして阪神で戦い続けてきた経験を、自ら体現している。
プロ17年で一度も経験のない優勝を
新井自身、「勝つために」と移籍した阪神でも、結局1度もリーグ優勝は果たせなかった。優勝は、これまでのプロ17年間で1度も経験していないのだ。個人記録では、通算2000安打まで残り81本となっているが、今のところまったく意識はしていない。とにかく目の前のプレーに全力を尽くす。その姿勢がここまでの好結果を生み、その姿に一度は離れた広島ファンの心が戻ったように思える。
とはいっても、今季の残り60試合余りで「4番・新井」が81安打を放つような活躍を見せてくれれば……。単純に考えても、そうなれば未曽有の混戦となったセ・リーグの頂点、広島市民にとっては24年ぶりの歓喜が、かなり現実なものとして近づくのではないかと期待してしまう。
(文:大久保泰伸/ベースボール・タイムズ)