黒田博樹が与える計り知れない「+α」 現状と今後を“元正妻”西山秀二が解説
一時離脱はあったもののここまで、チームトップの6勝をマークしている黒田 【写真は共同】
打者に先入観を植え付けた黒田の変化球
多彩でしたね。球を動かしながら、時にはズバッといって、黒田の持ち味が十分に出たマウンドでした。狙い球を絞らせず、好調なソフトバンク打線を手玉に取っていましたからね。8回(2死満塁)のピンチもきっちり抑えた。そのピンチがなかったら9回も投げて完封もあったかなと思いますけど、まぁ、仕方がないですね。楽しみは次に取っておくというところでしょう。
――5月一度、右足首の炎症で登録抹消となり、その時点では6試合で3勝2敗、防御率3.46でしたが、交流戦で自身3連勝を飾りました。ここまで11試合で6勝2敗、防御率2.61という成績をどう思いますか?
(右足首は)本人はいけると言っていたみたいですけど、大事を取ってという形のようですし、心配いらないですよ。成績的には、まぁ、こんなもんでしょう。よく頑張ってると思いますよ。内容的には、完封、完封というような圧倒的なものではないですけど、勝ちがしっかりと付いていますからね。何より、チームの連敗を止める勝ちが多い。嫌な流れをしっかりと断ち切っていますね。
――オープン戦の東京ヤクルト戦(マツダ)で投げた時のインパクトが非常に強烈でした。それと比べると物足りなさを感じなくもないですが?
あれは出来過ぎですよ。出来過ぎというよりも、ヤクルト打線が「黒田ってどんなんやろうな?」と様子を見ている間に終わってしまった感じですね。それだけテンポが良かったということもありますが、オープン戦ですからね。
――黒田投手の変化球と言えば、フロントドア、バックドアといったボールが話題となりましたが?
話題にはなったけど、実際の試合ではそんなに多く使っているわけではないですし、変化自体も、言われていたほどすごい変化をしているわけではない。ただ、打者に対して先入観みたいなものを植え付けられた。その時点で効果ありでしょうね。
メジャーでのやり方を続けるのが得策
入ってきた時の印象はまったくない(苦笑)。とにかく、その年は澤崎(俊和、現2軍投手コーチ)がすごかったので、澤崎の印象の方がすごく強かった。ただ、当時から器用でしたよ。いろんな球種に取り組んでいましたし、この間も野村(祐輔)にカーブの握りを教えてもらったりしていたらしいですからね。昔からどん欲でしたね。
――実際に西山さんが捕手としてボールを受けていた頃と、今現在の黒田投手の違いを、比べるとどうですか?
やはり日本にいた時とはガラッとピッチングの内容が違いますね。昔は力強いストレートを軸にして、完全に相手を抑え込んで勝つという投球。スピードも150キロ以上出ていたので、特にリード面で意識しなくても普通に投げさせておけば抑えられた。でも今はコントロール重視で、ボールをどんどん動かして、投球術で打たせて取るという投球です。今の方が多彩、リードするのは面白いでしょうね。黒田自身も、3安打完封だとか、若い頃のような投球内容での勝ちはあまり望めないでしょうから、球数も100球前後が目安になる。メジャーでのやり方を日本でも続けるのが得策でしょう。
――日米での戸惑いなどもあまりなかったという印象ですが?
そうですね。投手というのは自分が主体ですから、自分が投げないと始まらないですし、自分のピッチングさえすれば日米の違いなんてものはあまり関係ない。でも、打者の場合は常に受け身で、投手の球に対応しないといけない。メジャーでは動くボールに対応しないといけないですし、日本に帰ってきたら日本の投手の投球術に対応しないといけない。打者は日米間の違いに苦労するでしょうけど、投手の場合はそこまでの苦労はないと思います。
――會澤翼、石原慶幸といった広島捕手陣のリード面は?
よくやっていると思いますよ。サインは捕手主導で出していますけど、それに黒田が気に食わない時はそのままじっと待って、その間にどんどんサインを変えるという方法でやっていると思います。リードは悪くないですよ。