広島逆襲Vへ、キーマンは「4番・新井」 ひたむきな38歳が盛り上げる
カープ不動の4番に君臨する新井。成績もさることながら、その存在がチームに好影響をもたらしている 【写真は共同】
まさかの復帰から半年。試合前のスタメン発表で、今ではもう、日常的なものとなった。今季、阪神から8年ぶりに復帰した新井貴浩が、広島の4番打者として存在感を見せている。
7月13日現在で、打率2割9分5厘、4本塁打、41打点。本塁打の数こそ物足りないが、打率、打点はともにチームトップで、リーグ内でも打率が5位、打点は6位タイ。そして新井は、その数字以上のものを、チームにもたらしている。
当初はファンも冷ややかだった古巣復帰
そんな状況でも広島球団は、新井にとって「もう一度、勝負できる環境」であり、「初心に帰る」場所だった。本人の言葉通り、新井はキャンプ前の合同自主トレから精力的に汗を流した。そして春季キャンプでは早出特守に参加するなど、自らを徹底的に鍛え直した。若手選手とともに息を切らし、以前とはすっかり顔ぶれの変わったチームにもすぐに溶け込んだ。シート打撃で黒田との“直接対決”が実現した際には、多くの選手が練習中にもかかわらず見学の列を作り、若手が多いチームの中で文字通りの「お手本」となった。
4番固定で打線も息を吹き返す
さらに4月7日の巨人戦(マツダスタジアム)に「4番・ファースト」で復帰後初のスタメン出場。その後、新井が4番に固定されることで、開幕から極度の不振に陥った打線は、徐々に息を吹き返す。
そして、ゴールデンウイークに地元で行われた巨人との3連戦だ。5月4日の第1戦、2回にチーム初ヒットを放つと、0対1で迎えた6回に同点のタイムリー二塁打を放ってサヨナラ勝ちに貢献。続く5日の第2戦では、本人が「記憶にない」という1イニング2本のタイムリーを放ち、計3安打5打点の大暴れ。復帰後初めてマツダスタジアムのお立ち台に立つと、ファンの「おかえりなさい」の大合唱に、「夢みたいです。最高です」と笑顔で応えた。さらに6日の第3戦でもタイムリーを含む2安打をマーク。これ以上ない舞台で、「4番・新井」が最高の働きを見せた。
4番が固まったことで、広島打線は5月にチーム打率2割8分5厘、29本塁打、131得点を記録し、3・4月の同2割3分7厘、7本塁打、69得点を大きく上回った。新井本人も、5月の月間成績は打率3割6分3厘、2本塁打、20打点と、打率、打点でチームトップを記録。途中に左手中指脱臼というアクシデントで数試合に欠場し、その後も完治しないままの復帰となった中で、この数字は見事と言うしかない。