イチロー、まさかの落球?=マリナーズ遠征リポート Day2

木本大志

3回 イチローが落球?

ドジャース戦の3回、中前打を放つマリナーズのイチロー。自己ベストに並ぶ7試合連続複数安打=ドジャースタジアム 【共同】

 この日の先手はマリナーズ。2回に1点を先制すると、3回はイチローのヒットをきっかけに加点。ケン・グリフィーも今季第9号を放ち、4対0とした。

 しかしその裏、イチローの失策で失点。

 2死一、三塁の場面でケーシー・ブレイクが浅いライトフライを打ち上げると、前進してきたイチローが、ひざを落とし、大事に下から救い上げようとしたものの、打球がグラブをかすめ、左足に当った。

 この間に、三塁ランナーが生還。決して簡単な打球ではなかったが、イチローの基準からすれば、もちろんルーティーンプレイ。照明が目に入ったか、大事に行き過ぎたことで、普段とは違う動きになったか……。

 直後、左中間のモニターでエラーの場面が再生される。イチローはライトからそれをじっと見つめていたが、試合後にそれが、照明のせいであることをイチローは明かす。

「ボールが見えてて、あれがグラブに当たらないとしたら、太陽か、ライトが(目に)入った以外ではあり得ない」

 そして、“それ以外”のケースをこう想定した。

「小学校2年生までの僕か、60歳でライトでやっている僕か、どっちかしかでないですね」

 そこまで言って、イチローは独り言のように口にした。

「ということは、エラーではないんですよね……」

7回 飛球を「仕留めたかった」

 確かに、イチローが照明でボールを見失ったというしぐさを見せていれば、記録はヒット。しかしイチローは、次のことを考えていた。アイスホッケーのゴールキーパーのように両ひざをついたのもそのため。

「いや、もうボールを後ろにやらないことだけ。ボールがグラブに入ったらラッキーだから、とにかく1点で止めるということやね、あそこは」

 実際、その通りになった。フェリックス・ヘルナンデスが次打者を打ち取ると、最低限の失点でイニングが終了している。

 ただ、だからといって、“よかった”と自己完結するイチローではない。7回は、同じように飛んできた浅いライトフライに対して、果敢にスライディングキャッチを試みる。これも、グラブに触れた後、ボールはグラウンドに落ちたが、「仕留めたかった」と、唇をかんだ。

「3回のにかかわったということは、これまでの経験からいけば、次にもう1回何かが来る可能性が高いので、それで来たんだけど……」

 ところで、ボールを見失いながらも、体でボールを止めようとしたイチロー。最悪の場合、顔に直撃、というケースもあったが、そういうリスクについて問われれば、イチローはきっぱりと言っている。

「それは絶対に、やらなきゃいけないことだからね」

 その気持ちがヘルナンデスにも伝わったからこそ、彼はあそこで崩れなかったのかもしれない。

 ロード2戦目。マリナーズはエースと、イチロー、グリフィーという打つべき人の活躍で、雪辱を果たした。

<了>

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