ダービー、オークス本番への新しい視野 益々広がる大レース少数精鋭化への懸念
2冠目の展望と顕在化してきた気になる点
その結果を踏まえてオークス、ダービーへと続く2冠目の展望と、新たに顕在化してきた、若干、気になる点などについて考えてみたいと思います。
崩れた“3強”
桜花賞はジュエラー(中)がハナ差の激戦を制して一冠 【スポーツナビ】
と言うのも、1分32秒台で走った残りの2頭は桜花賞に最も直結すると言っていいトライアルのチューリップ賞1、2着馬であり、そのシンハライト、ジュエラーはメジャーエンブレムとは未対戦。力関係を比較する上で未知の部分が多いがゆえに、もう少し人気の支持率に幅が生じるかと思ったからです。
しかし、メジャーエンブレムが1分32秒5を叩き出したクイーンCが5馬身差のぶっち切りで、上記チューリップ賞がハナ差。このパフォーマンスの違いが、“単純な3強ムード”を否定したのでしょう。
それまでは行き切って、自分のリズムでレースを運んだメジャーエンブレムですが、桜花賞では3、4番手の好位から。勝負どころでも一旦ポジションを下げることになり、いつもと違う差す形に。それはジュエラー、シンハライトの土俵でした。早目に抜け出したところを捕まって4着に終わりました。
もしも途中からでも開き直って行き切る形を取っていれば、というのは結果論からみたタラレバ。名手ルメールにしても圧倒的人気を背負った時に、もしかすると普段とは違う痺れ方をするのか?と思わせる一例ではあったかもしれません。
そして名手、ということで言うと、勝ったジュエラーの鞍上デムーロには唸らされるしかありませんでした。先に抜け出したシンハライト=池添は、映像は勿論、様々な角度から撮られたレース写真も終始前に出ているように見えますし、ゴールを過ぎたところでもそうです。ちょっと誇張した言い方を許してもらうと、ゴール板のところだけジュエラーが出ていたのでは?と思えるのです。
レース後のインタビューで「タイミングが悪く、頭が上がったところがゴールで」なんてデムーロ騎手がコメントしてますが、とてもそんなふうには見えません。2着の池添騎手にしてみれば、直接聞いたわけではないですが、負けた気がしていないでしょう。何しろ2頭の走破時計はレースレコードとコンマ1秒差。敗れた方の思いは、結果はどうあれ、2冠目である「オークスでのリベンジ」という物語へと続くはずです。
“3強”から“4強”へ?
皐月賞はディーマジェスティがV、3強から4強へと勢力図を塗り替えた 【写真:中原義史】
2歳王者リオンディーズ(2.8倍)と、これを弥生賞で破って3戦全勝のマカヒキ(3.7倍)、そして同じく3戦無敗のサトノダイヤモンド(2.7倍)の3頭です。4番人気馬が16.1倍ですから、典型的な“3強”でしたが、勝ったのは8番人気のディーマジェスティでした。
“3強”ムードというのは、少し見方をかえて広義で捉えるなら、“混戦”ムードの一歩手前の状況にも感じられます。ディーマジェスティが近年好成績を収めている共同通信杯からの直行組だったことを考えると、8番人気は低評価過ぎた嫌いがありますが、その馬が後方から差して、レースレコードでの1馬身1/4差の完勝です。
確かに14年に実施された馬場改修によって速い時計が出やすくなっている中山ですし、また過去10年で2番目に速い1000m58秒4のラップに展開が嵌まったということもあったでしょう。しかし、他馬を寄せ付けない力強さは、ラッキーだけで済ませられるモノではありません。
そしてハイラップを刻んだリオンディーズが0秒5差(4着入線後、5着に降着)。直線で不利を受けたサトノダイヤモンドが0秒4差3着。最後まで勝ち馬に追いすがったマカヒキが0秒2差2着。敗れた“3強”の方も素晴らしい走りで、戦前の予想通り、ハイレベルの争いになりました。
そう考えていくと皐月賞も、やはり3強ではなく混戦ムードだった、と修正しておいていいのかもしれません。そしてダービーへ向けても、皐月賞馬ディーマジェスティには敬意を表しつつ、敢えて“4強”と呼称してみたい気がしています。