まさかの皐月賞、3強はなぜ敗れた? 伏兵マジェスティの一撃と蛯名の手腕

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8番人気ディーマジェスティ、レコード駆けで一冠

蛯名騎乗の伏兵ディーマジェスティが3強撃破し皐月賞V 【中原義史】

 JRAの3歳牡馬クラシック第一弾、第76回GI皐月賞が17日、中山競馬場2000メートル芝を舞台に行われ、蛯名正義騎乗の8番人気ディーマジェスティ(牡3=美浦・二ノ宮厩舎、父ディープインパクト)が優勝。後方5番手追走から直線外を一気に伸び、第一冠を奪取した。良馬場の勝ちタイム1分57秒9は皐月賞レコード。

 ディーマジェスティは今回の勝利でJRA通算5戦3勝、重賞は2016年GIII共同通信杯に続く2勝目。騎乗した蛯名は14年イスラボニータ以来の皐月賞2勝目、同馬を管理する二ノ宮敬宇調教師は同レース初勝利となった。

 一方、人気を集めていた“3強”だが、ディーマジェスティから1馬身1/4差の2着に川田将雅騎乗の3番人気マカヒキ(牡3=栗東・友道厩舎)が追い込み、さらに1馬身1/4差の3着にクリストフ・ルメール騎乗の1番人気サトノダイヤモンド(牡3=栗東・池江厩舎)。2歳王者でミルコ・デムーロ騎乗の2番人気リオンディーズ(牡3=栗東・角居厩舎)は4位入線も、最後の直線で外側に斜行し、5位入線した武豊騎乗の4番人気エアスピネル(牡3=栗東・笹田厩舎)とサトノダイヤモンドの走行を妨害。その走行妨害がなければ、エアスピネルはリオンディーズよりも先に入線できたと裁決委員が認めたため、リオンディーズは5着に降着となった。これにより、M・デムーロは2016年4月23日(土)から5月1日(日)まで9日間の騎乗停止となった。

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「いやあ、勝つんだぁ……って、びっくり(笑)」

ベテランも驚いた最後の脚、怪物候補は3強以外にも隠れていた 【中原義史】

 3強対決で近年にないくらい盛り上がった今年の皐月賞だが、やはり勝負というのは下駄を履くまで分からない。3歳牡馬クラシック最初のチャンピオンの座をつかみ取ったのは、8番人気の伏兵ディーマジェスティだった。

「すべてが上手くいきましたね。(ゴールの瞬間は)いやあ、勝つんだぁ……って、びっくりしましたよ(笑)」

 百戦錬磨のベテラン、蛯名も驚きを隠せない愛馬の直線一気差し。ジョッキーが振り返ったように、ペース、展開、位置取り、他馬の動き、すべてがディーマジェスティに味方したレースでもあったが、単にそれがハマって“たまたま勝ってしまった”というわけではない。もとよりGIII共同通信杯を勝った重賞馬でもあるし、実力と素質がなければ中山2000メートルを1分57秒9という破格の時計では走れない。そのうえ、2着マカヒキ以下を1馬身1/4差も突き放すことなんてできやしない。3強があまりにも輝きすぎていたことと、ディーマジェスティが共同通信杯以来2カ月ぶりの実戦だったこと、そして大外18番枠スタートだったことが、人気の盲点となっていた理由だろう。3強以外にも怪物候補がまだ隠れていた、というわけだ。

「3強とは対戦していなかったので、レース前に大きなことは言えなかったんですけど、前走も決していい状態ではなかったのに勝ち切ったし、あらためてこの馬はすごいなぁと思いました」と蛯名。そんな隠れた怪物の力をこの大舞台で引き出した鞍上の手腕も、もちろん見逃してはいけない。

焦らず、急かさず――これぞベテランの技

とにかく焦らずじっくりと……蛯名の好判断がラストの一撃につながった 【中原義史】

「とにかく焦らない。それだけでしたね」

 この日は激しい風雨が吹き付ける荒れた天気。皐月賞の前には雨も止み、むしろ晴れ間が大きく広がったが、依然として風が強かった。そんな“暴風”とも言えるコンディションの中では、蛯名ほど経験のあるジョッキーでも「ペースが速いか遅いかよく分からなかった」という。だからといって、ただ流れに身を任せていたわけではない。あらゆる場数を踏んでいるトップジョッキーだからこそ、できることがある。

「有力どころが前がかっていたんで、みんな追いかけていくだろうなと。こっちは直線の坂で一気に脚を伸ばしたいと思っていたから、周りが前を追いかけて行ってもそこは我慢。とにかく急かさないで行きました。慌てなかったのは年を取ったからかな(笑)」

 強いと分かっている馬が前団で勝負を決めにかかるとなれば、やはりそうはさせまいと早めに追いかけたくなるもの。そこをギリギリまで我慢できるのが、経験のなせる業か。「持っている引き出しを全部出しながら乗りました」と蛯名。また、「最後に脚を伸ばして、“次”につながる競馬ができればと思っていた」という無欲の騎乗も功を奏したのだろう。

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