有馬記念とJCの共存、その意義 国際レースとしての将来を模索する

ジャパンカップと有馬記念の存在意義、国際化戦略から共存は今後も成り立つのか? 【写真:中原義史】

 1994年にスタートした香港国際競走。1日に4つのGI(すべてGIになったのは2002年)が行われるという、香港競馬シーズン前半の、と言うより、最大のビッグイベントと言えるでしょう。

 日本馬も開設当初から数多く挑戦。01年には香港ヴァーズをステイゴールドが、香港マイルをエイシンプレストンが、香港カップをアグネスデジタルが制するという快挙が達成されました。なかなか日本馬が勝てなかった香港スプリントについても12年にロードカナロアが制し、翌13年に連覇したのは記憶に新しいところです。

 そして今年。過去最多となる10頭(GI馬5頭)が挑戦して、モーリスが2005年のハットトリック以来となる香港マイルを制覇。香港カップではエイシンヒカリが鮮やかに逃げ切って、2着にもヌーヴォレコルトが入るワンツーを達成。日本馬全体として、大成功の香港遠征になりました。

 中でもモーリスにいたっては、安田記念、マイルCS、そして今回の勝利でGIを年間3勝。これは現時点での国内最多の数字であり、しかも出走した6戦全勝。早くも「年度代表馬か」の声も上がっていて、そうなると13年のロードカナロアではないですが、今年も香港国際競走の結果が年度代表馬選出の決め手になる可能性が出てきました。

 もしそうなると、過去3年間で2頭目。たとえそうならなかったとしても、注目を集めて話題になるだけで、香港のビッグイベントが日本競馬への影響力を強めてきたことは間違いありません。

 そう考えれば考えるほど、今後ますます日本の競馬も国際化への道を進むことになるでしょう。その際に馬の活躍だけでなく、競馬界全体としてどう歩を進めていくのか。しっかり将来を見据えたビジョンを模索する段階にきています。

外国馬との力関係の推移

今年のジャパンカップも日本馬が上位独占、外国馬は掲示板にも載れなかった 【写真:中原義史】

 そのことで気になっているのが、昨今取り沙汰されてるジャパンCの意義についてです。“海外に追いつけ追い越せ”をスローガンに1981年創設され、今年が第35回目。

 創設当初、なかなか歯が立たなかった日本馬が、徐々に互角に戦うようになり、2000年代に入ってついに招待馬との力関係が逆転。06年にディープインパクトが勝利してから、今年のショウナンパンドラまで日本馬が10連勝を遂げています。

 近年、遠征馬の数自体が減少傾向にありますが、その要因として挙げられているのが、日本馬のレベルが上がったため実績のある招待馬が遠征を避けるようになった、とか、そもそも馬場が硬いせいで遠征を避ける馬がいる、とか。そもそもを言えば、検疫日数が長いため馬にかかる負担が大きくなりすぎる、といった法制度上の課題は昔から指摘されていました。

 もうひとつ、外国馬の遠征が減った要因として話題になるのが、他のビッグレースの賞金額が上昇したことで、高額賞金がウリだったジャパンCの魅力が相対的に低下した、というモノですが、これも昨年から3億円に増額され、1レースの額としてはやっぱり高い方にランクされますから、決してそれだけが問題というわけでもなさそうですが。

 ただ、広義の“魅力”として捉えた時、単純な賞金面ではないですが、遠征費用面で決定的に気になる点があります。84年にアメリカで創設されたブリーダーズCと、上記香港国際競走の開催日程に関すること。

 つまり前者が10月下旬から11月上旬に開催され、後者は12月中旬。ジャパンCは日程的に、そのちょうど中間に位置するのです。

 ブリーダーズCは現在、2日間で13のGIレースを行う世界的にも最大級の競馬イベント。そして香港国際競走は前述した通り。

 遠征チームの立場なってみると、日本に来る場合のように一頭だけ連れて来て1つのレースを使うのか、ブリーダーズCや香港のように、数頭を帯同させていくつかのレースを使いに行くのか。効率を考えたら明瞭ですし、そのうえ前記したようなデメリットが日本競馬にあるのだとすれば尚のこと。

 そんなような流れの中で、数年前からジャパンCの改革案が叫ばれ始めました。厳しいところでは廃止論まで。

 賞金を増額したのも対応策としてあまり機能せず、今年も外国馬の入着はなし。しかも来年から有馬記念の賞金が3億円に増額。

 ここにきて、またぞろジャパンC廃止論が再燃しかねないムードが出てきたのです。

 その背景に、有馬記念というビッグレースの位置づけ、定義の変節といったようなものが無視できません。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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