人と馬とで盛り上がる16年春競馬 ひとつ疑問に思う外国人騎手の制限案
2016年は正攻法の盛り上がり
まず中山記念で昨年の2冠馬ドゥラメンテが骨折による休養から復帰。同じ明け4歳馬アンビシャスの強襲を退けて、約9カ月ぶりの実戦を勝利で飾ります。
2冠馬ドゥラメンテが復帰、ドバイシーマクラシックは惜しくも2着だったが世界クラスの実力を示した 【写真:中原義史】
そして先週末、10頭が遠征した「2016ドバイワールドカップデー」では、UAEダービー(ダート1900m)をラニが初制覇。ドバイターフ(芝1800m)を中山記念3着のリアルスティールが快勝し、3頭が出走したドバイシーマクラシック(芝2410m)ではドゥラメンテが2着、ラストインパクトが3着。国際舞台で、日本馬のレベルの高さを改めて印象づける結果になりました。
ブームを超えられるか
この春の一大ブームとなっている藤田菜七子騎手の登場は競馬界全体にいい刺激を与えている 【スポーツナビ】
ともかく、その藤田騎手。3月24日の浦和競馬で初勝利、そして同日に2勝目を挙げ、JRAではまだ勝てていませんが、今の騎乗依頼の多さからすると、JRA初勝利の日もそう遠くはなさそうな雰囲気。
もう少し静かに見守る方法はないものか、とも思いますが、とにもかくにも業界全体にとって悪いことではありません。単純に歓迎を表明していいものかどうかは、正直なところ疑問、懸念もありますが。
実際、これが他の現象同様に、一過性のブームに終わってしまうようでは寂しい限り。それこそ報じる側の姿勢や品性なども問われることになりかねず、そのような意味でも、藤田騎手の登場は、競馬界全体にいい刺激を与えることになりました。
外国人騎手の制限案
「外国人騎手の短期免許の交付ルールの変更について」です。
3月14日に開かれたJRAの定例記者会見の中で、一部の記者から出たのが、「外国人騎手の短期免許での騎乗は同時期に上限5人まで、の現行ルールの見直しは検討されていないのか」みたいな質問。
これについて「現在変更案を検討中」との答えがあり、「上限を変更、今春にも詳細を発表」と一部のスポーツ紙が報じました。
実はこれ、前回のコラムでも少し触れたネタで、本当に記者会見の場で話題に上がり、こういう質疑があったことに正直、驚かされてしまいました。例によって“検討中”であって、正式な決定でも何でもないわけですが、新聞報道があって以後、各方面から様々な意見が出ているようです。
※リンク先は外部サイトの場合があります
ここで問題になっているのが、「出馬表がカタカナの名前の騎手ばかりになっては不愉快だ」といったような、ある種の偏見をベースにした感覚ではない、としましょう。
では、外国人騎手の“寡占”で「日本人騎手の騎乗機会が減っている」ことが問題なのでしょうか? 更にそこから派生して、日本の騎手のレベル向上の妨げになっている、みたいなことでしょうか。
もしも最大の問題点がそこ、つまり“日本人騎手が外国人騎手に太刀打ちできていないこと”にあるとするならば、前向きに議論することは他にもたくさんあります。
少なくとも、だから外国人騎手を締め出せば解決する、とは単純には思えません。