ダービー、オークス本番への新しい視野 益々広がる大レース少数精鋭化への懸念

少数精鋭化のもたらすもの

桜花賞で圧倒的1番人気だったメジャーエンブレムはNHKマイルカップへ 【スポーツナビ】

 さて今年、桜花賞と皐月賞がハイレベルで争われた結果、少し前から見られたクラシックにおける新しい動き、というより、今後益々広がりそうな潮流、みたいなモノの兆しがはっきり表れてきました。

 桜花賞で4着に敗れた2歳女王メジャーエンブレムと、皐月賞5番人気で8着に終わったロードクエストが、NHKマイルCに駒を進めることです。

 桜花賞はNHKマイルCと同じ距離ですから、2400mに延びるオークスを避けて、選択肢としてもっと選ぶ馬がいてもいいように感じていましたが、圧倒的人気馬、すなわち主役の路線変更というのは、現実的ではないのかな、とも思っていました。それはマイラーの資質が強く出ていると感じられる牡馬の場合も同じですが、実を取ろうとする判断であることは間違いなく、大レースにおける少数精鋭化が確実に進んでいること、そして競馬界全体の、近年の価値観の広がり方をよく表している、とも言えます。

 その現象が極端な形で現れたかな、と思えるのが、4月30日に行われる青葉賞。4月24日に出走予定馬の特別レース登録が行われ、出走可能頭数18頭のところに登録馬が15頭。1週前の特別登録の時点で、フルゲート割れが決定しているのです。

 ダービーへの最後のトライアルである青葉賞。過去にも何度かフルゲート割れした年がありましたが、登録の時点で、それも15頭というのは正直、寂しい限り。昨年の皐月賞がフルゲートに満たなかったのも軽く衝撃がありましたが、このような現象の頻出が、はたしていいことなのかどうか。

 その原因として、対戦相手との力関係の比較分析が徹底され、もしもそれがレースの使い分けにつながっているのだとすれば……。どこか一般ファンがクラシック、いや競馬そのものに抱いている興味とのズレを感じないではいられません。

“3強”から“混戦”への再構築

ダービーは“4強”の争いとなるのか、それでも新たな刺客が現れるのか 【写真:中原義史】

 往々にして戦前の“3強”ムードは崩れるもので、今年のクラシックは奇しくも牡牝ともにそうなりました。そもそも“3強”というのは後年、結果を見た後に名付けられるものなのかもしれません。つまりは、結果論ということです。

 ですから余計に、青葉賞のフルゲート割れは残念な気持ちになります。何故「やってみなくてはわからない」という発想が出てこないのだろうか、と。

 そんなような流れで言えば、オークスにあまり直結しないトライアルのフローラSをレースレコードで制したチェッキーノなんて、新たな“第3の馬”候補にならないでしょうか? 路線変更したメジャーエンブレムの鞍上が、オークスでこの馬の手綱を取るなら、新手としての魅力は十分です。

 そういうタイプが、今週末の青葉賞でも出てきてくれれば、と思います。フルゲート割れですが、トライアルから少数精鋭化、ということで。

 それでこそ、祭典であるダービーが盛り上がるってもんでしょう。必ずしも、単純に頭数が多ければいいってわけではないですが、大舞台には役者は十分に揃っていて欲しい。ほとんどの競馬ファンは、それを願っているはずですから。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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