宮本恒靖が選手に求める“知性”と“個性” G大阪ユースで始めた新たなる指導者人生
G大阪ユースは開幕2連勝で順調なスタート
開幕戦にグレーのジャケット、白いシャツに紺のボトムスの“勝負服”で臨んだ宮本恒靖 【平野貴也】
宮本監督はG大阪ユースの一期生でもあり、昇格後は12シーズンにわたってトップで活躍。オーストリアのザルツブルク、ヴィッセル神戸を経て11年に現役を退いた。日本代表としてもU−17、U−20、U−23(シドニー五輪)、ワールドカップ(W杯)と全年代の世界大会に出場している。引退後の13年7月にはFIFAマスター(スポーツについて幅広い視点から学ぶ、ヨーロッパを拠点とする大学院コース)を修了。昨年はG大阪のジュニアユースでコーチを務め、日本最高のコーチ資格であるS級ライセンスも取得した。今季は彼にとって、本格的な指導者人生のスタートとなる。
同じプレミアの京都サンガF.C.U−18は元日本代表DFの森岡隆三が監督を務めており、W杯経験者が育成年代の指導者を務める例が皆無というわけではない。しかしガンバにおける宮本監督は別格のレジェンド。開幕戦にはテレビ局、全国紙と多くのメディアが集まっていた。
「格好ですか? 特に考えてなかったです。万博の人工芝でやるときはジャージでやると思いますが……。今日は違うなっていう感覚でした」(宮本)
万博記念競技場で行われた開幕戦の“勝負服”はグレーのジャケット、白いシャツに紺のボトムス。足元はアディダスのスニーカーだった。彼にとっては特に気取りのない私服でも、いや応なく個性が出る。育成年代ならトレーニングウェア、Jリーグの監督はスーツがある種の“制服”となっている中で、ジャケット姿はいかにも彼らしかった。
G大阪ユースの戦いから見える宮本色
高円宮杯U−18プレミアリーグの記者会見に出席した宮本。選手たちに「大人のサッカー選手に早くなろう」と伝えているという 【写真は共同】
宮本監督もこう口にする。「ゴールを目指すサッカーをしなければいけないと思っていますが、相手にボールを持たれる時間もある。そういったときは全員で相手のボールを奪う泥臭さも必要。自分たちの時間帯、相手の時間帯が試合の中にはある。それを敏感に感じながらサッカーをしていこう、大人のサッカー選手に早くなろうと伝えています」(宮本)
「守備はさすがだなという感じです」。背番号10を背負うFW食野亮太郎は証言する。引退してすでに4年以上が経つ宮本監督だが、ユースの練習メニューに選手として加わることもあるという。食野は「対峙(たいじ)することが多いんですけれど、削り方はヤバい(笑)。『これが世界レベルか』というタックルを受ける」と恒さまの“裏の顔”を暴露する。元日本代表CB(センターバック)の力量を生かした、身体を張った指導もあるようだ。
就任してから宮本監督が一度だけ選手たちを“シメた”こともあったという。プレミア開幕5日前の練習時のこと。「ぬるい雰囲気で、タラタラ用意をしていたら『ふざけるな』って……。それから締まりました。怒ったら怖いです」(食野)
もちろん普段の“恒さま”は「楽しいし、優しい。選手とコミュニケーションも取ってくれる」(食野)とのことだからご安心を……。