まさかの皐月賞、3強はなぜ敗れた? 伏兵マジェスティの一撃と蛯名の手腕

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次はダービー、二冠も狙える

3強から4強へ、ディーマジェスティはダービーで二冠も狙える器だ 【中原義史】

“次”というのは当然、競馬人ならば誰もが目標とする最大のレース、日本ダービー(5月29日、東京競馬場2400メートル芝)だ。当初よりディーマジェスティはゆったり競馬ができる東京向きと言われてきた。それだけに、さらなる上積みをもって臨めるということだろう。蛯名が言う。

「東京は合うと思うし、折り合いも大丈夫。操作性もいい馬ですから、なんとか頑張りたいですね」

 二ノ宮調教師は馬体の成長を明かしながら、ダービーへの意気込みを語った。

「共同通信杯の後から馬が変わってきましたね。背中がすらっと伸びて、前駆が盛り上がってきたことで馬の形が出来つつあります。気性的にも落ち着いていて引っかかることはないですし、身体的な問題もない。十分にケアしながら、ダービーでも全力を尽くすだけです」

 こと馬体面に関しては蛯名も「共同通信杯のときは、その前のホープフルS取り消し(フレグモーネのため)の後に作り直したわけですから70〜80の出来といった感じでした。今日は明らかに出来が違いましたし、同じ目方でもかなりパンプアップしていて、中身が詰まっている」と、今が成長期の真っ盛りだと言わんばかりだ。

 3歳牡馬の勢力図は3強から4強へ――いや、再び3頭を撃破し二冠だって十分可能。そんな期待さえ抱かせるディーマジェスティの鮮烈な皐月賞戴冠劇だった。

敗れた3強、ダービーでの逆襲は?

2着マカヒキは力を出し切ったが、あと一歩届かず 【中原義史】

 一方、3強はなぜ敗れたのか?

「スタートは出てくれましたし、でもあの位置取り(後方2番手)も予定通り。いい感じで回ってこれて、これも予定通り2頭(サトノダイヤモンド、リオンディーズ)を捕まえることはできたんですけど……。ディーマジェスティがさらに伸び続けましたからね」と振り返ったのは、2着マカヒキ騎乗の川田。上がり3ハロンはディーマジェスティを0秒1上回るメンバー最速の33秒9。川田&マカヒキとしては十分な競馬をしているが、これはディーマジェスティがさらに上手に立ち回ったと言うしかない。

 サトノダイヤモンドも同様に、現時点での力は出し切った競馬だったとも言える。確かに物足りなさの残る3着だったが、ルメールが言うには「久しぶりの競馬で、コンディションも100%ではなかったかもしれない。4コーナーの反応は良かったけど、直線の坂で馬が疲れてしまった」。その分、ダービーへ向けての上積みは3頭で一番とも言えるだろう。もとより、ダービーでピークに持っていくために2月きさらぎ賞から皐月賞直行のローテーションを選択したという背景もある。ルメールも「ダービーはトップコンディションになるよ」と太鼓判。1カ月後の府中は大逆襲の舞台となるか。

サトノダイヤモンド(右)、リオンディーズ(左)のダービーでの大逆襲はあるか 【中原義史】

 最後にリオンディーズだが、馬券を買ったファンが一番納得していない負け方を喫したのが、この2歳王者だろう。スタートから仕掛けていって、結果、前半1000メートルの通過が58秒4という超ハイペースを演出してしまった。以下はミルコの弁だ。

「今日の中山のレースを見ていると、後ろは伸びてこないと思った。だから、前で競馬をするのがいいと思って自分から前に行ったんだけど、引っかかってしまいましたし、58秒は速かったですね……」

 ミルコの作戦が裏目に出てしまったわけだが、ただ、リオンディーズは斜行があったものの、ディーマジェスティから0秒5差の4位入線(5着降着)に踏ん張っている。あれだけのハイペースで3コーナー手前から先頭に立ったにも関わらずだ。それを考えると、やはりリオンディーズの能力は底知れない。しっかりと折り合いをつけて脚をタメる競馬ができれば、こちらもダービーでの大逆襲は当然あるだろう。

 さて、“史上最高”とも言われた皐月賞は伏兵のVで幕を閉じたわけだが、3強いずれも負けたことでガックリ……というファンの気持ちも、もちろん分かる(馬券を外した方もたくさんいるでしょう。僕もその一人だ。本命はエアスピネルだったけど……)。だけど、見方を変えれば3頭のうち1頭が突き抜けてしまうのではなく、ディーマジェスティという新たなライバルが加わったことで勢力図が混沌としてきた。その分、2016年ダービー戦線はさらに熱を帯びたと言えるかもしれない。新たなダービーの楽しみ方が生まれた、というわけだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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