中村俊輔が抱く危機感と責任感 プロ20年目、前進し続ける司令塔
鳥栖戦で勝ち点を7に積み上げ、5位に浮上
第2節のアビスパ福岡戦ではJ1通算21点目となる直接FKによるゴールを決め、“中村俊輔健在”を強く印象づけた 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
実はこの場面では、中村俊輔の肩にボールが当たって富樫にラストパスが供給されており、オフサイドと判定されてもおかしくない微妙な1点だった。中村本人も「肩だね。アシストだね」と冗談交じりにコメント。今季から鳥栖を率いるマッシモ・フィッカデンティ監督は「オフサイドだった」と怒り心頭だったが、一度認められた得点は覆らないのがサッカーだ。
ラッキーな形から手に入れたゴールで勢いに乗った横浜FMはその後、谷口博之に同点ゴールをたたき込まれたが、最終的には中町公祐のミドル弾で2−1と鳥栖を突き放した。この日の勝利で2勝1分け1敗の勝ち点7となり、5位に浮上。首位の川崎フロンターレとの勝ち点差はわずか3と、さらに上を狙える位置につけた。悲願のタイトル獲得に燃えるトリコロール軍団にとって、悪くない序盤戦となっている。
2月27日に行われた開幕節のベガルタ仙台戦直前にインフルエンザにかかり、出遅れた“エースナンバー10”も、いち早いリカバリーを見せている。5日の第2節・アビスパ福岡戦では伝家の宝刀である芸術的FKがさく裂。J1通算21点目となる直接FKによるゴールを決めたことで、“中村俊輔健在”を強く印象づけた。
走れるゲームメーカーへと変ぼう
今季ここまで走行距離はチーム一。「走れて守れてボールを追えるゲームメーカー」へ変ぼうを遂げている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「俊さんと佑二さん(中澤)は年齢が30いくつだからといって、絶対に練習から手を抜かないし、試合でも一番走っている。僕ら若手も『やらなきゃいけない』という気持ちにさせられる」と18歳の右サイドハーフ・遠藤渓太も語る。
このようなハードワークを体現する原動力に「危機感」があると中村本人は言う。
「サッカーに対するモチベーションは若い頃と全然変わらないけれど、やっぱり危機感は増すよね。1回のプレーで引退に近づくんだから。年俸だって下げられるし、クラブ側にしてみたらクビにもしやすくなる。ベテランっていうのは、それが当たり前のことだから。正直、今季開幕の時もヤバかった。アビスパ戦のFKはたまたま。ホント危なかった」
とはいえ、横浜FMの攻守両面のスイッチを入れる役割を中村が担っている事実は今季も変わらない。共に2列目を形成する遠藤も「俊さんが低い位置に落ちたら、自分や学君(齋藤)がタテへ仕掛けていく。そうすれば俊さんがそこにピタッといいボールをくれる。俊さん主導というか、俊さんがどう動くかで、自分の動きを変える感じです」と司令塔に絶対的信頼を寄せている。
それは対戦相手にもよく伝わっている。鳥栖のトップ下を担う若きファンタジスタ・鎌田大地も「俊輔さんはものすごくうまくて視野が広くて、あれだけ(チーム内で)自由に動かしてもらっている。ホントにあの人がゲームを作っているという感じがした」と脱帽していた。