中日・大野雄大が覚醒した2つの要因 エースの風格に感じる“すごみ”

ベースボール・タイムズ

大学ナンバーワン左腕から順調に成長

中日の左のエースとして、ここまで9勝を挙げている大野。11月に行われる世界野球プレミア12一次候補選手にも名を連ね、球界のエースに進化を遂げようとしている 【写真は共同】

 7月16日、野球日本代表「侍ジャパン」トップチームを率いる小久保裕紀監督が、11月に開催される「WBSC世界野球プレミア12」の一次候補選手を発表した。そのメンバーリストの中に、中日の5年目左腕、大野雄大の名前もしっかりと記されていた。

 ヤンキース・田中将大や広島・前田健太、巨人・坂本勇人ら“88年世代”の1人。京都外大西高から佛教大へと進学し、“大学ナンバーワン左腕”の評価を引っ提げて2010年秋のドラフトで中日から1位指名を受けてプロ入り。大学4年夏に左肩を痛めた影響で、1年目はシーズン終盤に1試合に先発したのみに終わったが、2年目は8試合に先発してプロ初勝利を含む4勝(3敗、防御率2.62)をマーク。翌13年には先発ローテーションに定着し、25試合で10勝10敗、防御率3.81と2ケタ勝利を挙げると、昨季はプロ初完封を飾るなど、前年と同じ10勝ながら8敗、防御率2.89と確実にステップアップした。

 こうして迎えた今季は、開幕投手こそ、昨季の最多勝投手である山井大介に譲ったが、シーズン初登板となった3月31日の巨人戦(ナゴヤドーム)で白星こそ付かなかったものの7回1失点の好投を見せると、続く4月7日の東京ヤクルト戦(神宮)で9回無失点の完封劇。さらに5月には5試合で4勝1敗、防御率2.39の好成績を残して月間MVPを初受賞する活躍を披露した。特に5月16日の阪神戦(ナゴヤドーム)での9回2安打無失点、計133球の熱投劇はエースと呼ぶにふさわしかった。

精度が上がったフォークと精神的ゆとり

 今季の大野の投球に安定感が備わった要因として、2つの理由が挙げられる。

 1つ目は、格段に精度が上がったフォークボール。昨季までは落差にこだわるあまり、無駄な力みが生じて制球も定まらなかったが、今季は「いかにストレートと同じ軌道から変化させるか」を意識。昨季までは1試合に1、2球しか使わなかったが、今季は勝負球として有効活用し、投球の幅を大きく広げた。

 そして2つ目は、大野自身も自覚し、首脳陣も評価している精神面での成長だ。7月8日の阪神戦(甲子園)では、それまで9連勝中だった相手を9回1失点に抑え込んでリーグトップの9勝目をマーク。大野は「周りや状況が見えるようになったというか、これまでいろんな経験をさせてもらったことが大きい。むしろ、去年まで何で勝てていたのか不思議に思えるほどです」と、マウンド上から打者を観察できる精神的なゆとりを自覚する。

 正捕手と指揮官の立場から大野に指南を続けてきた谷繁元信監督兼選手も「もともと体に馬力はあるけど、今年はメンタル面で成長した。(信頼している?)もちろん!」と太鼓判。友利結投手コーチも今季の投球を、「今までは気持ちを入れ込み過ぎのときもあったが、自分も試合もコントロールできている」と高く評価している。まさに“覚醒”という言葉が、今季の大野には当てはまる。

1/2ページ

著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント