中日・福田が9年目で習得した独自打法 華麗なスイングで竜の“ゴジラ”へ

ベースボール・タイムズ

覚醒を感じさせる3本塁打

オープン戦4本塁打、開幕直後にも3本塁打を放つなど華々しい活躍を見せる福田。美しいフォロースルーも特徴の1つだ 【写真は共同】

 ただホームランを期待できるから、ひきつけられるのではない。その1本を生み出す姿、その打球の軌道に芸術的魅力を兼ね備えるからこそ、見ている者をとりこにする。中日ドラゴンズ・福田永将、26歳――。彼のバットから放たれる打球は、高く、大きな放物線を描いてスタンドへ舞い降りる。これぞホームランアーティストと呼ぶにふさわしい天性の素質が、9年目にして“やっと”覚醒の時を迎えようとしている。

 昨年までのプロ8年間で放った本塁打はわずか4本だった。しかし今季は、オープン戦で日本人トップの4本塁打を放ち、強烈なアピールで開幕1軍入りを果たす。3月29日の阪神との開幕3戦目(京セラドーム大阪)に代打で登場、桑原健太朗の変化球をとらえ、いきなり左翼席へ叩き込む豪快な3ランを放った。

 続く3月31日の巨人戦(ナゴヤドーム)では、けがで登録抹消となった森野将彦に代わって「5番・一塁」で先発出場。巨人の先発・杉内俊哉から「バットの少し先だったけど、気持ちで押し込みました」と第1打席で先制の2号ソロ。さらに第3打席では貴重な追加点となるタイムリーを放った。

「自分の間合いができている。いつでもゲームに出せる」と試合後の谷繁元信監督兼任選手。開幕時点での“左投手専用スタメン”の構想を練り直させ、翌日以降もスターティングメンバーに名を連ねる。4月2日の巨人戦(ナゴヤドーム)では、2番手・山口鉄也の外角低めのチェンジアップをとらえて左中間スタンドに飛び込む3号2ラン。

「昨日、今日とチャンスをつぶしていて、それでも使ってもらえたので、何とかしたいと思っていました」と福田。宿敵・巨人に3タテを食らわす原動力となり、自身の名を一気に全国に知らしめた。

つぼみのまま過ごした8年間

 1988年生まれの福田は、いわゆる“ハンカチ世代”の一人だ。少年時代からエリート街道を歩み、名門・横浜高校では1年時からベンチ入り。3年時には主将として春の選抜大会で全国優勝を果たし、高校通算49本塁打と強打の捕手として名をはせ、2006年の高校生ドラフト3巡目で中日に入団した。

 同期の堂上直倫も、その打撃能力の高さから1巡目指名を受けたが、打球を飛ばす飛距離においては当時から福田の方が勝っていたのではないだろうか。3年目の09年7月7日、ヤクルト戦(神宮)でプロ初打席初本塁打の鮮烈デビューを飾ると、11年には阪神の守護神・藤川球児(現レンジャーズ)からも本塁打を放った。しかし、開花の兆しを見せつつも、つぼみのまま季節は巡った。満開にならない大きな要因は、打席内での悪癖だった。

「(バッティングの状態が悪い時は)右肩が突っ込んでしまうんです。今はほとんどそのことばかりを意識しています」

 波留敏夫打撃コーチから指摘された、右肩が突っ込む癖。昨秋に就任した名伯楽・土井正博特別コーチからも同じ箇所を指導された。福田自身も「ストレートには詰まるし、ボールになる変化球にはバットが止まらない。バットもスムーズに出なくなるんです」と右肩の悪癖がバッティングに及ぼす影響に気付いていた。

「微妙な感覚的なものなので、自分の意識の中で修正するしかないんです」

 しかし、それは簡単に抜ける癖ではなかった。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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