中日・大野雄大が覚醒した2つの要因 エースの風格に感じる“すごみ”

ベースボール・タイムズ

連敗中も、動じないエースのすごみ

7月8日の阪神戦で9勝目を挙げて以降、勝ち星から遠ざかるも、その雰囲気にはエースとしてのすごみがにじみ出ている 【写真は共同】

 順調に勝ち星を積み重ね、オールスター前での2ケタ勝利達成も期待させた大野だが、ここで壁に直面する。前半戦最後の登板となった7月15日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で8回3失点ながら黒星を喫すると、そこから5試合で0勝4敗と足踏み。1カ月以上も白星から遠ざかってしまう。

“壁”の原因は、チームの不振もあるが、大野自身の“一発病”も大きい。7月15日のヤクルト戦ではスコアレスで迎えた7回に大引啓次に痛恨の2ランを被弾。後半戦最初の登板となった同24日のヤクルト戦(神宮)でも、再び大引に勝ち越し2ランを浴びると、山田哲人にもダメ押しの2ランを食らった。その後も病は続き、同31日の巨人戦(東京ドーム)では、2回から7回まで無失点の好投を続けながら、同点で迎えた8回に村田修一に3ランを浴びて降板。9勝を挙げるまでの16試合で4被弾だった男が、その後の5試合で5被弾した。

 だが、決して輝きを失っているわけではない。連敗中の5試合すべてで6回以上を投げ、7失点した7月24日のヤクルト戦(神宮)以外は、先発としてしっかりと試合をつくっている。そして、その中である種の雰囲気も醸し出すようになった。ベンチとマウンドを行き来する動作から、マウンド上での所作のどれもが、恐ろしいほどの静けさをまとっている。それは、もともと明るい性格の大野が今までに見せたことのない姿であり、何事にも動じないエースたるもの。黒星が続く中、逆に大野の内からは“すごみ”がにじみ出るようになった。

球界を代表する左のエースへ

 足踏みが続くが、ここまで21試合で9勝7敗、防御率2.55の成績は、先発左腕としては12球団トップと言っていい。今季の3完封勝利は、北海道日本ハム・大谷翔平と並んで2人。防御率2.55、奪三振数117は左腕投手の中でトップの成績なのだ。

 そして、この左腕にはチームの巻き返しとともに、シーズン終了後の侍ジャパンでの活躍も期待される。これまでの代表チームと同じく、現在の小久保ジャパンにも多くの好投手が顔をそろえるが、その大多数を右投手が占める。実際に、「世界野球プレミア12」一次候補に選ばれた投手32人中、左腕は大野のほかに、岩田稔(阪神)、松葉貴大(オリックス)、吉川光夫、宮西尚生(ともに日本ハム)、菊池雄星、高橋朋己(ともに埼玉西武)、松井裕樹(東北楽天)、田中健二朗(横浜DeNA)の8人のみ。さらに松井、高橋、宮西、田中の4人はリリーフであり、左のエースとしての大野の成長は、侍ジャパンの世界一奪回へ向けた重要なファクターになる。

 まずは“壁”を乗り越え、3年連続の2ケタ勝利を飾ること。再び白星街道に乗り、中日の絶対的エースとして君臨したい。そしてペナントレース同様に混戦模様となっているセ・リーグの最多勝レースを、ぜひとも制してもらいたい。その先に、世界を相手に躍動する左腕の勇姿があるはずだ。

(文:高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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