谷繁、記録更新で迫る決断のとき 一刻の猶予もない“後継者指名”
球団から求められる“監督専任”
3018試合出場のプロ野球記録を更新した谷繁監督兼捕手。残り50試合で自らの後継者をどのように育成するか、手腕にも期待が集まる 【写真は共同】
7月28日、34年ぶりに野村克也氏(南海など)の歴代最多試合出場記録を更新し、中日の谷繁元信が日本プロ野球史の頂点に名を記した。1988年のドラフト1位で横浜大洋(現DeNA)に入団してから27年目。2度の日本シリーズ優勝と5度のセ・リーグ優勝は「正捕手・谷繁元信」というピース無しでは成し遂げられなかった。
しかし、日本最高峰の名捕手が率いる中日は、2年連続の4位。今季はさらに苦しい戦いを強いられ、“史上空前の混セ”が叫ばれる中、7月30日時点で借金13を抱え最下位。3年ぶりのAクラスへ崖っぷちの状況だ。そして今、球団から求められているのは、熟練された技ではなく、世代交代への本格的なかじ取り。正捕手の重荷を下ろし、監督への専念である。
谷繁捕手にフル回転は求められない
「記録を達成すると(チームは)強くなると思うよ。より監督の仕事に専任できるからね。一人二役は大変。これからの期待は大きい」
谷繁采配への高い評価の表れか、良くも悪くも監督専任を指示するものだった。そんな中日グループ総帥の思いは、監督に任命した2年前と何ら変わってはいない。
2013年10月、落合博満氏がゼネラルマネージャーの正式就任を目前に控えた講演会で、「やっぱり谷繁としては野村さんの(最多試合出場)記録が念頭にあるでしょう。もし要請するのであればプレイングマネージャー。2年あったら記録を抜けると思いますから、2年間は了承してやらないと受けないと思いますよ。私がアドバイスしたのはそれだけです」と、谷繁監督誕生の過程で白井オーナーから相談を受けたことを明かしている。
現場の方向性がオーナーの意向ですべて決定されるわけではないが、谷繁がすでに不動の正捕手としてフル回転を求められていないことは明らか。腰痛で5月末から2週間の登録抹消はあったが、ここまで93試合中27試合(先発13試合)の出場にとどまっている。これは谷繁監督自身がチームの勝利を第一に考えた結果で後継者育成には一刻の猶予もない状況であることを物語る。