魅力に溢れた日本バスケットの“聖地” 有明と代々木第二にある大事なモノ

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ブースターが憧れる“有明”

bjリーグファイナルが行われた有明コロシアム。日本中のブースターがこの地に来ることを夢見ている 【スポーツナビ】

 屋根に覆われた有明コロシアムの中を一羽の鳥が優雅に飛び回っている。その下では、長身の男たちが、アップテンポなBGMの中、ウォーミングアップを行っていた。5月24日に開催されたのはターキッシュエアラインズbjリーグ優勝決定戦。秋田ノーザンハピネッツを激闘の末に71−69で退けた浜松・東三河フェニックスがチャンピオンの座に就いた。

 会場となった有明コロシアムの周辺には、ひいきチームのカラーに身を包んだブースターたちの笑顔が溢れていた。同じ色のTシャツを着た外国人に片言の英語で話しかけて「トゥー・ザ・トップ!」とハイタッチを交わす者、フェイスペイントを施した親子、誰よりも目立とうと奇抜な帽子をかぶっている者、多くのファン・ブースターが思い思いの方法で特別な1日を楽しんでいた。

 中でも目をひいたのが「ARIAKE」や「FINAL」の文字がプリントされたTシャツの多さ。秋田のチームカラーであるピンクも、浜松や3位決定戦を戦う岩手ビッグブルズの赤も、滋賀レイクスターズのブルーも、すべてのカラーでその文字を目にすることができた。ファイナルに向けた特別なTシャツは、もはやブースターにとっての必需品かのように思えたほどだ。それほどまでに、日本中のブースターが“有明”に憧れ、ここへ来ることを夢見ながら今シーズンを戦ってきたことがうかがえた。

ここにしかないエンターテインメント

この日が初の有明観戦だったというYUTAさん(右)とまなさん(左)。ブースターたちがこの地に憧れを抱く理由が分かったという 【スポーツナビ】

 なぜ、有明はこれほどまでに特別な存在となったのか。有明の地でbjリーグがファイナルを開催するようになったのはリーグが誕生した2005−06シーズンから。東京アパッチ(現在は活動休止)が開幕戦で使用し、視察したbjリーグの河内敏光コミッショナーらリーグスタッフが会場に一目惚れ。1万人を収容するキャパシティーに加え、すり鉢状でバスケット観戦には最適な観客席であったことが決め手だった、とリーグ関係者は言う。その最高の施設にリーグの運営努力が加わり、有明はブースターたちに“聖地”と呼ばれるまでになった。

「もちろん選手が主役ではあるんですけれども、私たちはお客様を主役にしたいという思いがありました」と語るのはbjリーグの中野秀光社長。常にファン目線を意識し、客席を歩き回る中野社長は、この日も観客席の通路に立っていた。試合前のファンイベントを眺めているのかと思いきや、「お客さんの顔を見ているんです。このイベントを本当に楽しんでいただけているのかどうか。どんな反応や感想を言っているのか、いつも拝見させていただいています」(中野社長)。

 この日が初の有明観戦という浜松ブースターのYUTAさんとまなさんはブースター歴2年目。「なんで皆があんなに有明、有明って言っているのか、正直分からなかったんです。でも今日来たら分かりました。これは来ないと分からない」(まなさん)。「お店とかいっぱいあって、まさにお祭りっていう感じです。でも会場の中に入ると真剣勝負のピリピリした感じがあって、まさに決戦の地という感じ」(YUTAさん)。

 2人が話すように、会場の周辺はお祭りそのもの。数多くの出店が軒を並べ、対戦チームのホームタウンにちなんだご当地グルメやB級グルメに長蛇の列ができていた。充実しているのはグルメだけではない。子どもがプレーを楽しめるような簡易式のゴールが設置されたコートや、チームグッズ、バスケットボール関連の商品が充実した売店、各ホームタウンPRコーナーなどさまざまなブースが所狭しと並んでいる。

 一歩アリーナへ足を踏み入れるとそこは異空間。アップテンポなBGMが鳴り響く。試合開始が近づくと会場は一気に暗転し、あちらこちらにブースターが持つペンライトが浮かび上がる。盛り上がりを煽るDJの声に1万人のブースターが歓声を挙げ、アリーナ中央に吊るされた大型ビジョンには、決戦に臨む両チームの軌跡が映し出された。

 熱心な秋田のブースター、じゅにぃさんは有明の魅力をこうも表現する。「ここってスポーツの聖地じゃないですか。錦織圭(テニス)もプレーするし。いろいろなスポーツが行われてきた歴史ある舞台。でも、私たちにとってはbjリーグの聖地なんです。去年は本当に大興奮でした。来た瞬間に『来年も来たい!』ってすぐ思いました」

 全国のブースターがここにしかないエンターテインメントを求め、聖地に思いを馳せながらシーズンを送る。チケットは昨年に続いて完売。選ばれし2チームのブースターたちは、非日常を感じながら愛するチームとともに日本一を目指し、この日も熱戦に声援を送り続けていた。

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