魅力に溢れた日本バスケットの“聖地” 有明と代々木第二にある大事なモノ

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もう一つの“聖地”代々木第二

NBLファイナルが行われた代々木第二。これまでも多くの主要大会が開催され、歴史を刻んできた 【スポーツナビ】

 有明の興奮から一夜明けると、もう一つの聖地にもバスケットボールファンが集まっていた。トヨタ自動車アルバルク東京とアイシンシーホース三河の間で争われるNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)ファイナルの会場、国立代々木競技場第二体育館。この会場がバスケットボールの聖地と呼ばれるゆえんは、設備から見ても分かる。そもそもフロアにはバスケコートのラインが常時引かれており、トップリーグからミニバスケットボールまで、数々の大会が行われてきた歴史を持つ。最も分かりやすいのが電光掲示板。ベンチ入り全選手の背番号と、試合中の個人ファウル数が表示される作りになっており、バスケットボールを見ることを前提で作られた体育館なのである。

 国立代々木競技場は1964年に開催された東京五輪の会場として建設されており、メインアリーナとなる第一体育館では競泳競技が、第二体育館ではバスケットボール競技の試合が開催された。その後も、代々木第二はあらゆるバスケット大会の主要会場となり、日本代表や大学選手権、天皇杯・皇后杯といった由緒ある大会の会場としてその歴史を刻み続けてきた。

 代々木第二が聖地たるゆえんは他にもある。それはこの会場特有の雰囲気。収容人数は3195人で、1万人収容の有明と比べればかなり劣るが、それゆえにどこの席に座っても、コートが非常に近い。なおかつすり鉢状に形成された観客席の構造は、近さだけでなく見やすさも兼ね備えている。また、屋根も特徴的だ。今から約50年前に建設されたとは思えない近未来的なデザインは、外から見るとまるでサーカスのテントのようなシルエットが印象的。中に入るとその形状はより目を引く。コートの中央付近に一番高い箇所があるのではなく、入口とは反対方向のスタンド最上段は手を伸ばせば天井に届きそうな感覚を抱くほどアンバランスな作りになっている。そうした構造もあいまって、会場内は独特な雰囲気をかもし出す。

日本最高峰のバスケを見られる地

特徴的な構造もあいまって、独特な雰囲気をかもし出す。「ここでのプレーが大好き」と選手も語るほどだ 【スポーツナビ】

 この聖地で行われたNBLの試合もまた、魅力に溢れていた。3戦先勝で優勝チームが決定する今季のNBLファイナルは、第4戦までもつれた。アイシン三河の2勝1敗で迎えたゲーム4は、序盤から目まぐるしく得点が動き、巧みなボールコントロールや鋭いドライブが連続する。3ポイントシュートが多く決まり、ハーフタイムを迎えた時点で47−39とアイシン三河がリード。bjリーグファイナルよりも30点近く多く得点が動いている。このように得点が多く生まれるNBLの魅力について、トヨタ東京を応援するファンであるGOニノさんはこう表現していた。

「大向(おおむ)こうをうならせるプレーというのも良いですけれど、日本人が好きなのは点の取り合いや、守り合い、ぶつかり合いだと思うんです」

 入らないと思ったシュートがネットを揺らし、キレのあるドライブに強靭なディフェンスが立ちはだかり、激しくぶつかり合う。気がついたらクオーター終了のブザーを迎えることもしばしば。結局88−82でアイシン三河が王座に輝いたが、試合はあっという間に終了した。

 今季が2シーズン目だったNBLはもちろん、前身のJBL(日本バスケットボールリーグ)時代から毎シーズン必ず代々木第二で優勝チームが決定している(編注:東日本大震災の影響でファイナルが開催されなかった10−11シーズンを除く)。

「ここに来ることは常に目標ですし、去年は来られなくて『やっぱりあそこでプレーしたいな』っていう気持ちが出たほど。ここでのプレーは別格ですね。代々木第二でプレーすることが大好きです」。優勝したアイシン三河のベテラン柏木真介もまた、聖地に魅せられた一人だ。

 日本最高峰のバスケットボールを見ることができる代々木第二は、常に日本中の選手たちが憧れる、特別な場所として今日まで歴史を刻んできた。2016年10月に開幕することが決定している新プロリーグは、リーグ参入チームに収容人数5000人規模のホームアリーナを持つことを条件としている。代々木第二はその基準を満たしていない。果たして新リーグにおける聖地はどこになり、どのような空間を作り上げるのだろうか。今は有明と代々木第二にしかない、特別な雰囲気が失われないことを願うばかりだ。

(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)

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