日本バスケ界改革後も見据えて 川淵チェアマン独占インタビュー<後編>
インタビューに答える川淵チェアマン。その強いまなざしで日本バスケの未来、ひいてはすべてのスポーツの未来を見据えている 【スポーツナビ】
しかし新リーグ発足は日本バスケの到達点ではなく、日本バスケが飛躍するための出発点だ。加えて協会改革、強化といったFIBAからの指摘事項は、一朝一夕で片付く話でない。多くの人を巻き込み、長くバスケットボールに関わってきた人たちの英知も取り込まなければ、このようなテーマの解決は難しい。例えばユースチームを設置するという“大枠”が決まっても、その中身を充実させるには、当事者それぞれの努力が不可欠。川淵三郎チェアマンも「僕が出るべき場面と、そうでない場面は、自分なりにしっかり区分けしてやっている」と自らのスタンスを口にする。
新リーグそのものについては経営の透明性、リーグのフォーマット、行政の協力といった重要な論点がある。それらはまさに川淵チェアマンが、Jリーグ発足の当事者として推し進めてきた部分。それぞれについて、自身の見解を述べていただいた。インタビューの後編でも、川淵チェアマンの具体的で率直な議論をお読みいただけるはずだ。
「代表の強化につながることをやるべき」
すべての事情を知っているわけじゃないので、細かいことについて僕はコメントしたくない。ただ基本的には、日本のバスケ指導者が今のままでいいとは思わない。世界を知っている指導者がそんなにいるとも思えない。日本国内でどんなに優秀と言っても、世界を知って初めて優秀な指導者と言えるわけだから。(男子は)40年以上も五輪予選を突破していないんだから。それは明らかにドメスティックであり過ぎたからでしょう? 世界大会にも出られないほど国内を優先している限りは、日本は世界のひのき舞台では勝てないよ。(編注:2014年のU−17男子世界選手権で、明成高と福岡大大濠高の選手3名は初戦の前日に開催地UAEへ入った。世界選手権よりも高校総体を優先し、6日の準決勝まで日本に残っていたため)
やるべきことはたくさんある。新しい方向性にどう行くか、タスクフォースなくして、そういう議論は起こり得なかったということ。中学、高校、大学の指導者と膝を交えて話し合って、長い目で見て日本代表の強化につながることをやっていくべきだ。草の根とトップを車の両輪にしてそのスポーツは発展するもので、大きなピラミッドが形成されないと強い代表も作れないよ。
一つやったらすべて良くなるなんてことはない。すべて複合的にやらないと。指導者の養成から始まり、環境の整備もそうだし、若手の育成もそう。日本のバスケットボール界がどうすれば良くなるかということを総合的に考えないといけない。一個だけ考えて、将来の日本代表を背負って立つ若手だけのチームをリーグに入れてとか、そういう考え方で成功するわけはないよ。そういうことを喋っていると血圧が上がってきて仕方ない。喋りたくないな(笑)。
――サッカーでは指導者が海外で勉強したり、ライセンス制度を整備したりというのがありました。バスケでもそういうトータルな強化方針を議論してということになるのでしょうか?
そういう現場のことは僕がやるんじゃなくて、bjリーグやNBLの中心となってやってきた人たちの知恵に任せればいい。僕が出るべき場面と、そうでない場面は、自分なりにしっかり区分けしてやっている。
「きちんとしていればレベルは上がっていく」
僕は(1部のチーム数を)「16プラスマイナス4」と言ったんだけれど、FIBAから16以上は今の日本のバスケットの実力から言って無理で、せいぜい12だと言われている。
Jリーグが10チームでスタートしたときに、ビリとブービー(最下位から2番目)が浦和レッズと名古屋グランパスエイトだったんだよ。それが後にリーグを制覇し、人気クラブになったわけでしょ。スタート時は弱小チームだったとしても、将来展望が明確に示され、きちんと(リーグが)運営されてさえいれば、レベルは上がっていくと思う。それはあまり心配していない。
――ユースチームを設置して、階層性のリーグ構造にするということは、ドラフト制度は採用しないということですか?
そこまで突っ込んで意見を言う気はない。関係者が考えればいい話ですね。