モーリスに見る祖父グラスワンダーの片鱗 距離不問・脚質自在のスーパー王者へ
4連勝でGI初制覇
川田騎乗の1番人気モーリスが安田記念V、4連勝でGI初制覇! 【中原義史】
今回の勝利でモーリスはJRA通算11戦6勝、重賞は今年4月のGIIIダービー卿チャレンジトロフィーに続く2勝目。騎乗した川田は安田記念初勝利、同馬を管理する堀宣行調教師は11年リアルインパクト、12年ストロングリターン以来となる同レース3勝目。さらに堀厩舎はドゥラメンテで制した前週の日本ダービーに続く2週連続GI制覇となった。
なお、クビ差の2着には福永祐一騎乗の3番人気ヴァンセンヌ(牡6=栗東・松永幹厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には田辺裕信騎乗の12番人気クラレント(牡6=栗東・橋口厩舎)が入った。
正攻法の競馬でもこれほどまでに強い
見事な正攻法でモーリスを導いた川田、でも実は「9割方、出遅れると思っていた」という 【中原義史】
ただ、「相手は強かったよ」と福永がポツリつぶやいたように、この日のモーリスの競馬は、新マイル王と称えるに文句なしのパフォーマンスだった。
「ゲートを出た場合と、出なかった場合。2つのパターンを考えていました」
レース前に描いていた作戦として、川田は“両極端”のイメージを持っていたという。昨年の京都新聞杯以来、約1年ぶりのコンビ。初重賞勝ちを決めた前走のGIIIダービー卿CTをはじめ、特にこの2戦は後方から切れ味抜群の末脚を発揮していたが、川田が騎乗して勝ったレースは好位から抜け出しての押し切り勝ち。それだけに、「前めで競馬をすれば長くいい脚を使ってくれていましたし、ゲートを出ればそれなりに競馬をしてくれると思っていましたから」。川田はモーリスが秘める違った強さの一面を“知っていた”。そして、ジョッキーの狙い通り、安田記念は最近のモーリスのイメージを完全に覆す走りで周囲を驚かせた。正攻法の競馬でもこれほどまでに強いのだ、と。
名人・内田博幸でさえ「まさかモーリスがあんなところ(先行4番手)にいるとは思わなかったよ!」と舌を巻いた先行策。さすが若手随一の腕達者、とうなる騎乗だが、実のところ川田本人も「9割方、出遅れて後方からの競馬になるだろうと思っていました(笑)」というのだから、一番に褒めるべきはモーリスなのだろう。
「そうですね、何よりもゲートを出てくれて、二の脚もついて位置を取りに行ってくれました。僕は乗っていただけです」
まだ完成途上「じわじわ良くなっている」
横綱相撲で完勝、文句なしのパフォーマンスだった 【中原義史】
「ここ数戦のズバッとした切れ味を生かすというよりも、今回は持久力を生かす競馬で勝てたことは、今後の彼にとっていい経験になったと思いますね。もっと良くなる馬ですよ」
川田の言葉どおり、差して良し、先行しても良しの自在脚となれば、これからのモーリスにとっては鬼に金棒。しかも、まだ4歳で、堀調教師も「まだまだと言いますか、じわじわ良くなっている途上です」というのだから、将来が末恐ろしい。