モーリスに見る祖父グラスワンダーの片鱗 距離不問・脚質自在のスーパー王者へ

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4連勝でGI初制覇

川田騎乗の1番人気モーリスが安田記念V、4連勝でGI初制覇! 【中原義史】

 春のマイル王決定戦、第65回GI安田記念が7日、東京競馬場1600メートル芝で行われ、川田将雅騎乗の1番人気モーリス(牡4=美浦・堀厩舎、父スクリーンヒーロー)が優勝。4連勝でGI初制覇を達成した。良馬場の勝ちタイムは1分32秒0。

 今回の勝利でモーリスはJRA通算11戦6勝、重賞は今年4月のGIIIダービー卿チャレンジトロフィーに続く2勝目。騎乗した川田は安田記念初勝利、同馬を管理する堀宣行調教師は11年リアルインパクト、12年ストロングリターン以来となる同レース3勝目。さらに堀厩舎はドゥラメンテで制した前週の日本ダービーに続く2週連続GI制覇となった。

 なお、クビ差の2着には福永祐一騎乗の3番人気ヴァンセンヌ(牡6=栗東・松永幹厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には田辺裕信騎乗の12番人気クラレント(牡6=栗東・橋口厩舎)が入った。

正攻法の競馬でもこれほどまでに強い

見事な正攻法でモーリスを導いた川田、でも実は「9割方、出遅れると思っていた」という 【中原義史】

 レース後の検量室前、馬場から引き上げてきたヴァンセンヌの鞍上・福永祐一は「いけると思ったんだけど……最後(モーリスに)もうひと伸びされた」、そう悔しさをにじませながら下馬していた。僕もヴァンセンヌ→モーリス→クラレントの3連単馬券を握りしめていたから、ユーイチの悔しさの10分の1くらいは共有できる(たぶん)。

 ただ、「相手は強かったよ」と福永がポツリつぶやいたように、この日のモーリスの競馬は、新マイル王と称えるに文句なしのパフォーマンスだった。

「ゲートを出た場合と、出なかった場合。2つのパターンを考えていました」

 レース前に描いていた作戦として、川田は“両極端”のイメージを持っていたという。昨年の京都新聞杯以来、約1年ぶりのコンビ。初重賞勝ちを決めた前走のGIIIダービー卿CTをはじめ、特にこの2戦は後方から切れ味抜群の末脚を発揮していたが、川田が騎乗して勝ったレースは好位から抜け出しての押し切り勝ち。それだけに、「前めで競馬をすれば長くいい脚を使ってくれていましたし、ゲートを出ればそれなりに競馬をしてくれると思っていましたから」。川田はモーリスが秘める違った強さの一面を“知っていた”。そして、ジョッキーの狙い通り、安田記念は最近のモーリスのイメージを完全に覆す走りで周囲を驚かせた。正攻法の競馬でもこれほどまでに強いのだ、と。

 名人・内田博幸でさえ「まさかモーリスがあんなところ(先行4番手)にいるとは思わなかったよ!」と舌を巻いた先行策。さすが若手随一の腕達者、とうなる騎乗だが、実のところ川田本人も「9割方、出遅れて後方からの競馬になるだろうと思っていました(笑)」というのだから、一番に褒めるべきはモーリスなのだろう。

「そうですね、何よりもゲートを出てくれて、二の脚もついて位置を取りに行ってくれました。僕は乗っていただけです」

まだ完成途上「じわじわ良くなっている」

横綱相撲で完勝、文句なしのパフォーマンスだった 【中原義史】

 その後の競馬ぶりは、まさに教科書通り。折り合いにやや苦労する面は見られたものの、ギリギリのところで我慢し、最後の直線もケイアイエレガントら粘る先行勢をすぐにはパスせず、我慢に我慢を重ね、タメにタメて、後続を十分に引きつけてから満を持しての追い出し。「楽勝できるかなと思った」と川田が振り返ったほどの100点満点の競馬で、実際にそうなってもおかしくない手応えだったが、そこはやはりGIだ。そう簡単には勝たせてくれない。福永ヴァンセンヌが上がり最速33秒7の脚で猛然と迫った時には差し切るかという勢いだったが、そこからゴールまでの数完歩でもうひと伸びしたのはモーリスの方。着差はクビでも、完勝と言っていい内容だろう。

「ここ数戦のズバッとした切れ味を生かすというよりも、今回は持久力を生かす競馬で勝てたことは、今後の彼にとっていい経験になったと思いますね。もっと良くなる馬ですよ」

 川田の言葉どおり、差して良し、先行しても良しの自在脚となれば、これからのモーリスにとっては鬼に金棒。しかも、まだ4歳で、堀調教師も「まだまだと言いますか、じわじわ良くなっている途上です」というのだから、将来が末恐ろしい。

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