モーリスに見る祖父グラスワンダーの片鱗 距離不問・脚質自在のスーパー王者へ

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距離延長も視野、課題は折り合い

堀調教師(右)は「距離を延ばすことも考えている」 【中原義史】

 その“将来”に関してだが、堀調教師はこんな興味深いことも明かしてくれた。

「本当は安田記念の前までは、この馬の持ち味を考えて今後は距離を延ばしていこうかとも思っていました。でも、今日のマイル戦での折り合いを見ると、その道のりは遠いのかなぁとも思ってしまいます」

 もう少し折り合いがつくものだと思っていた、とトレーナー。さらに、マイル戦の速い流れでなし崩し的に脚を使ってしまうよりは、ゆったりとした流れの中で脚をタメていければもっといい脚を使う馬――そう考えていたのだという。しかしながら、マイル戦ですら折り合い面に不安をのぞかせてしまっただけに、距離を延ばしていくプランは一歩後退してしまったかのニュアンスだった。

 ただし、堀調教師が言うには、安田記念を勝ったこの日でさえ「メンタルとフィジカルがまだ噛み合っていない状態」。この歯車が、時間の経過とともにガッチリと噛みあったとき、指揮官の理想とするモーリス像は完成形となる。そうなれば、2000メートルの天皇賞・秋はもちろん、いずれは父スクリーンヒーローが制した2400メートルのジャパンカップ、そして、祖父グラスワンダーが劇的連覇を飾った2500メートルの有馬記念さえも視野に入って来るだろう。

“怪物”グラスワンダーのように

モーリスは今後どのような路線を歩むのか、目指すは“怪物”と呼ばれた祖父グラスワンダーだ 【中原義史】

 そう考えると、きょう誕生したのは単なる新マイル王ではないのかもしれない。マイルの器にとどまらない、怪物と呼ばれた祖父グラスワンダーのような距離不問、脚質自在のオールラウンドチャンピオンが、その第一歩を踏み出した――そこまで妄想すると、これからのモーリスが歩む軌跡がどうしようもなく楽しみになってくる。

 ちなみに、グラスワンダーと安田記念と言えば、ゴール寸前でエアジハードにハナ差かわされて2着に敗れた1999年を思い出す。孫は見事、その無念を晴らしたというわけだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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