F1開幕戦でレッドブルを見返した角田裕毅 その凄さを徹底検証する

柴田久仁夫

なぜ開幕戦であれだけ速かったのか

アルボン、ハミルトンを従えて6位走行中の角田。中国でも速さを見せられるか 【(c)Redbull】

 12位でレースを終えた角田だが、上位入賞をフイにしてノーポイントで終えたことにも、終始冷静に対処した。これが1年前だったら、順位を大きく落とした直後に無線で汚い言葉を吐き、自分の運命を呪っていたかもしれない。

 しかし今の角田はリーダーとしてチームを引っ張ることを求められ、角田自身もその役割を自覚している。「できることはすべてやったし、自分のパフォーマンスには満足しています。(今回の結果に)納得するのは簡単ではないですが、怒鳴っても前には進めないですから」。

 上述したように降り始めた時の状況は非常に微妙で、ほんの少し雨雲がずれていたらフェラーリや角田がそのまま走り切り、上位を独占した可能性もあった。「チームの戦略ミスだった」と非難するのは簡単だが、それは結果論というものだろう。

 一方でジョージ・ラッセルは「いますぐピットに入るべきだ」と自ら進言し、ノリスらと同じ44周目にピットイン。その決断が3位表彰台につながった。角田も真のチームリーダーとしてさらなる進化を果たすためには、その辺りも課題の一つかもしれない。

 最後に、開幕前テストでは決して速くなかったレーシングブルズと角田が、なぜメルボルンでは輝けたのか。

 新車VCARB02は昨年型マシンの抱えていた中高速域でのダウンフォース不足を、完全には払拭できていないように見える。しかし開幕戦の舞台アルバートパークは、基本的に直線を低中速コーナーでつないだストップ&ゴーレイアウトで、その短所が目立ちにくかった。さらにコーナー立ち上がりでの優れたトラクション性能、そして何より角田のブレーキングの巧さが好結果を呼び込んだ。

 対照的に今週末の中国GPが開催される上海国際サーキットは、低速から中高速コーナー、1km以上のストレートも備えたタフなレイアウト。さらにフロントタイヤへの厳しい負荷は、全24戦中屈指でもある。車体の優劣が、文字通り白日のもとに晒されるコースと言える。

 そこでレーシングブルズが、どれだけのパフォーマンスを見せられるか。角田自身は、「開幕前テストで得たデータをもとに、車体は大きくステップアップした。今回も初日フリー走行から速さを見せられれば、良い結果が残せるはず」と、開幕戦の雪辱を誓っていた。

(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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