今の日本人選手は、史上最強世代なのか―― 凱旋した大谷、今永の思い、そしてイチロー独自の感覚とは?

丹羽政善

開幕シリーズで日本に凱旋したドジャースの(左から)大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希 【写真は共同】

 2012年の日本開幕戦。マリナーズのクローザーだったトム・ウィルヘルムセンは早く球場に着いたため、阪神対アスレチックスの試合を外野席で観戦していた。

 すると、「一人か?」と阪神ファンに声をかけられ、うなずいたところ、応援用のサンダースティックを渡された。

「これを振っておけ」

 言われた通り、周りに合わせてサンダースティックを振り、叩いていると、「ノリがいいなぁ」と褒められ、「一緒に、応援しよう」と仲間入りを認められた。

 その試合が終わって、マリナーズのクラブハウス前に現れたウィルヘルムセンはもはや、サンダースティックを両手に六甲おろしのメロディを口ずさむほど。「選手だとバレなかったの?」と聞くと、首を振った。

「まったく。最後まで、ただのファンだと思われていたみたいだ」

日米スターがそろい客席は立錐の余地なし

16日に行われた阪神対ドジャースの観客動員数は42059人。プレシーズンゲームは連日の超満員で盛り上がった 【写真は共同】

 さて、カブスとアスレチックスの人気の違いもあるが、当時、マリナーズの試合以外は、空席も目立った。確認すると、阪神対アスレチックスの観客数は10681人。2019年も同様。だからこそ、ウィルヘルムセンもフラッと外野に足を運んで、試合を観戦できた。

 一方、15日の阪神対カブスの観客数は、41978人。他の試合でも完売が続く。

 ドジャース戦は予想できたことだが、カブスにも今永昇太、鈴木誠也というオールスタークラスがいる。さらにイアン・ハップ、カイル・タッカー、ダンスビー・スワンソンら、日本のファンにも馴染みのある選手も所属している。今回の開幕戦は、カブスが軸だったとしても、興行として十分に成立したのではないか。

 ドジャースにしても、大谷翔平に注目が集まりがちだが、2021年から3シーズン連続で沢村賞を受賞(金田正一に次いで史上二人目)した山本由伸、惜しくも2試合連続の完全試合を逃した佐々木朗希もいる。

 もちろん、フレディ・フリーマン、テオスカー・ヘルナンデスもいて、今回の開幕シリーズが、盛り上がらない理由が見つからない。

 加えて、巨人、阪神にも、将来のMLB候補選手がゴロゴロ。巨人なら岡本和真、戸郷翔征、大勢。阪神には才木浩人、森下翔太らがいて、大谷を筆頭に、ここまで名前を挙げた選手らは、来年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に選抜される可能性が高く、連覇も期待される。完売続きも当然で、だからこそ先日、こんな質問が大谷、今永らに飛んだ。

――今の日本人選手は、最強世代ですか?

 大谷は、「今までもたくさん素晴らしい選手がメジャーリーグでプレーしていたと思いますし、必ずしも今がそうかというのはわからない」とした上で、こう続けた。

「今回5人プレーしているので、たまたま多くのメジャーリーガーが所属しているチーム(同士)がプレーできて嬉しく思います」

 決してたまたまとは思えないが、今永は、日本にいる選手も含めて、最強世代であることを実感しているような口ぶりだった。

「(カブスの)スタッフ、選手から、今日本でプレーしている選手の中で、この投手知ってる? この選手すごいよな。この選手いつアメリカに来るんだ?っていう質問をたくさん受ける。米国の選手も日本の野球の素晴らしさに関して情報を持っている」

 そうしたやりとりはすなわち、日本野球のレベルの高さを物語る。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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