三笘が極限トラップ&技ありフィニッシュで殊勲弾 VARなしだからこそもたらされた「爽快感」
技術とスピードと反射神経、そして勝利への執念
「うーん、まあアクシデントのようなシーンでしたけど、ジョルジニオ(・リュテール)がいいパスをくれましたし、1対1なのは分かっていましたんで。トラップがでかくなりましたけど、逆にキーパーが出てくれたんで助かりました」
――体勢を崩しながら強引にトラップしたように見えたが、ボールは不意に来た?
「不意に来た感じですけど、たぶん、浮き玉でなければ通らないところだったと思いますし、あれが限界かなと思いました。自分自身もギリギリのところで触れて良かったと思いますし、少しの1メートルだったり、そういうところで勝負が決まるところがあったんで。そこを練習していて良かったと思います」
――トラップはどこで?
「肩ですね」
――左サイドからよく右足のアウトでクロスを出すが、あのシュートも右足アウトサイド。得意の形だったと思うが。
「そうですね、アウトサイドはインサイドより早く打てますし、得意なところはありましたけど、あのシーンではアウトしかなかったかなと思います」
これは、チェルシーとのFA杯4回戦終了直後の三笘薫との一問一答だ。当然ながら、日本代表MFが奪った決勝ゴールに質問が集中した。試合終了のホイッスルが鳴ってから45分後。こうして文字にしても、プレミアリーグ対決で強豪を破って、世界最古のカップ戦のベスト16入りを決めた、生々しい興奮が伝わってくる。
技術とスピードと反射神経、それに勝利への執念が見事に相まった、素晴らしいゴールだった。
開始早々のオウンゴールで1週間前の悪夢が蘇ったが…
チェルシーのエース、コール・パーマーの左サイドからの折り返しのパスを、こともあろうにオランダ人GKがキャッチミスした。ニアに入ってきたボールに反応して体がゴール側を向いてしまっていた。この体勢で捕れずに弾くと、ボールはそのままゴールラインを割った。
0-7の大敗を喫したノッティンガム・フォレスト戦から1週間後のホーム戦だった。ブライトンにとっては2シーズン前に準決勝まで進み、イングランド・フットボールの聖地ウェンブリー・スタジアムでプレーした記憶がまだ新しいFA杯だ。ここで優勝候補の一角であるチェルシーを破れば勢いもつく。ところがこのオウンゴールによる失点で、同じくオウンゴールで始まった1週間前の悪夢が蘇ってしまった。
ファルマー・スタジアムを本当にがっかりさせたオウンゴールだった。しかしそのわずか7分後、この試合でトップ下に入ったリュテールがゴール前で跳躍して頭を右から左に鋭く振り、右サイドバックのヨエル・フェルトマンが右サイドから放ったクロスに合わせてゴール左隅に流し込み、ブライトンが1-1の同点に追いついた。
ブライトンは失点した直後から、素晴らしいインテンシティでチェルシーを押し込んでいた。前週の大敗から1週間空いたのが良かったのだろう。フィットネスが充実していたホームチームがすかさず運動量を上げて、リュテールが自軍の守護神のミスをあっという間に帳消しにした。
そして後半12分には、結果的に決勝弾となった三笘のゴールが飛び出したのである。