25年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

J3降格の可能性もある危機的状況の“元J1”クラブとは? 3人のエキスパートによるJ2展望座談会【後編】

YOJI-GEN

昨季23ゴールの小森(中央)が抜けた穴をどう埋めるかが、今季の千葉の最大のテーマだ。2月9日のちば銀カップでは新加入の石川が先発したが、ノーゴールに終わった 【(c)J.LEAGUE】

 2025年のJ2開幕を目前にした恒例のシーズン展望座談会。主にAクラス予想チームについて語っていただいた前編に続き、後編ではBクラス、Cクラスを中心に各チームの戦力を分析してもらう。3人の識者から厳しい評価が下った“元J1クラブ”とは? 11年ぶりの復帰を果たした富山、J2初挑戦の今治の可能性は?(文中敬称略/座談会は2月2日に実施)

小林監督の続投から見える千葉の変化

──ここからは、全員がBクラスに予想した残りの2チーム、ジェフユナイテッド千葉(昨季7位)とレノファ山口(昨季11位)、そしてCクラスを見ていきます。まずは土屋さん、千葉からお願いします。

●Bクラス予想(並び順は北から)

佐藤拓也:秋田、いわき、水戸、大宮、千葉、藤枝、山口、徳島

土屋雅史:秋田、いわき、千葉、甲府、山口、徳島、長崎、熊本

池田タツ:札幌、秋田、いわき、千葉、甲府、藤枝、山口、熊本


土屋 千葉のテーマは、小森飛絢(→シント=トロイデン)の抜けた穴をどう埋めるのかってところに集約されるでしょうね。23ゴールですよ(笑)。昨シーズンそれだけのゴールを取ったFWの代わりが、誰に務まるんだって話なんです。ブラジルからデリキ(←アトレチコ・ゴイアニエンセ)というストライカーを獲りましたけど、結局は彼がどこまでやれるかに尽きるのかなと。

 それでもセンターバックにブラウブリッツ秋田から河野貴志を獲得し、セレッソ大阪からユース育ちの鳥海晃司を復帰させ、さらにJ1の多くのチームが欲しがるような前貴之(←山口)も獲得するなど、最終ラインに実力者を補強できたのは大きいと思います。ただし、懸念はGK。去年から残っているのは鈴木椋大だけで、新たに3人が加わったんですが、果たして誰が定位置をつかむのか。このGK問題がどうなるのかは、今シーズンのジェフの命運を左右する1つの要素になるんじゃないかと見ています。

 期待の選手を挙げるなら、ボランチの品田愛斗。FC東京から期限付き移籍を繰り返していましたが、今回、昨シーズン途中に加わった千葉に完全移籍。年齢も25歳になって、今年はまさに勝負の年でしょう。同じくFC東京の下部組織育ちで、なかなかブレイクできなかった平川怜(東京ヴェルディ)に重なるところがあるんですが、高校時代から見ている者としては、なんとか殻を破ってほしいなと。

佐藤 小林慶行監督が3年目のシーズンを迎えたことが、今までのジェフとの違いです。これまでなら、昇格プレーオフを逃した時点でクビにしていましたよ。今回小林さんの続投を決めたのは、強化部が今のサッカーやチームの一体感を評価しているからだと思うんです。おそらく選手たちもそうした変化を感じているでしょうし、今年こそはという想いがきっとあるはずなんです。「小森がいなくなったから」とは言わせまいと、これまで以上にチーム一丸となって戦いそうな気がしています。

 小森の穴埋め役として、個人的には石川大地(←ロアッソ熊本)に期待しています。彼は水戸啓明高出身で高校時代から見ていた選手ですし、怪我に苦しんできたサッカー人生でもあるので、フクアリで大暴れをして小森並みに注目されてほしいですね。

池田 千葉の補強で一番大きかったのは、やっぱり前でしょうね。土屋さんには申し訳ないんだけど、京都との練習試合を見たときにボランチの品田が物足りなくて、確かに上手いんだけどなかなかボールを前に運べなかったんですね。相手にしてみれば相方の田口泰士さえ抑えておけばオーケーっていう感じになる。そう考えると、サイドバックが本職ながら複数ポジションをこなせる“ミスター・インテリジェンス”の前をボランチで使うってことも、ワンチャンあるなって思うんです。田口を抑えられたときの二の矢としての前。このチームにおける彼の存在感が爆上がりしている印象があります。

 ただ、デリキはトレーニングしか見ていないんですけど、ちょっと厳しそうに感じました。見た目は超イケメンなんだけど、練習のプレーを見ても少し緩くて(笑)、これはちょっと時間がかかりそうだなって。小森の穴は簡単には埋まりそうにないという判断から、Bランクにした感じですね。

──山口も満場一致でBランクですね。

池田 はっきり言って山口は、去年とはまったく別のチームです。昨シーズンのレギュラークラスはほぼ全員、移籍してしまいましたからね。ただ、志垣(良)さんというのは、去年もそうだったんですけど、チームを早く作り上げられる監督なんです。それはなぜかというと、すごくシンプルで、分かりやすいチーム作りをするから。だから大幅に選手が入れ替わっても開幕にはしっかり間に合わせてくると思っています。

 補強面で、サポーターが泣いて喜んだのが成岡輝瑠(←清水エスパルス)の復帰。彼にとっては決意の移籍だったと思うんですね。もちろんユース時代を過ごした清水で輝きたいとの思いはあったでしょうが、昨シーズンにレンタルバックした古巣では出番を得られず、完全移籍で再び山口に戻ってきた。今年は彼がチームの中心になっていくはずで、シンプルなサッカーに天性のテクニックでアクセントを加えてほしいですね。

土屋 調べてみると、去年の最終戦のスタメンから8人が移籍しているんですね。池田さんが言うように、去年とはまったく違うチームになりました。ただ、まずは守備がベースのチームであることに変わりはないので、そう考えると両サイドバックの右に岡庭愁人(←千葉)、左に亀川諒史(←福岡)という実力者を獲得したのは、いい補強だったと思います。

 成岡は、宇多田ヒカル好きのお父さんが「輝瑠(ひかる)」という名前を付けたってエピソードも知っているくらい、僕も昔から何度も取材をしている選手なので、もちろん期待しています(笑)。それともう1人、山本桜大という柏からから期限付き移籍してきたストライカーにも注目していて、プレースタイルこそちょっと違いますけど、僕は「ネクスト細谷真大」になれる逸材だと見ているんです。昨シーズンも夏に武者修行に出された栃木SCで印象的なゴールを決めている。山口で少しずつ経験を積んでいけば、シーズン後半戦にはエースになっていてもおかしくないポテンシャルを秘めていますよ。

池田 あとはGKですよね。関憲太郎が引退して、後釜にオランダ人のニック・マルスマン(←ローダ)を獲得しましたけど、外国籍のGKは当たり外れが読めない。

佐藤 今年、京都からレンタルで加入したセンターバックの松田佳大は、元々は水戸の選手で、大卒でチームに加わった当時は、レギュラー争いに食い込むのは難しいだろうなっていう印象だったんです。それが育成型期限付き移籍で短期間、FC大阪でプレーして帰ってきたら、劇的にパフォーマンスが上がっていた。数ヵ月でこんなにも変わるんだって驚いたんですが、そのときのFC大阪の監督が志垣さんだったんです。わずかな期間で選手に技術や戦術を教え込み、落とし込む能力が相当高い監督だなって、思いましたね。

 補強で言うと、横浜FCに抜かれた左サイドバック、新保海鈴の穴はかなり大きいと思うんですけど、ここにもタイプは違いますが亀川という信頼性の高いベテランを加えていて、チームとしての抜け目のなさを感じます。あと、個人的にはモンテディオ山形から獲得した横山塁が好きですね。サイズがあって、サイドからドリブルで崩せる。山口でレギュラーポジションを取ってもらいたい新加入選手の1人です。

池田 さっき土屋さんが言った山本桜大、佐藤さんが挙げた横山塁は、どちらも志垣さんが好きなタイプのFWなんですよ。つまり、自分のやりたいサッカーにハマる選手を補強できているわけで、だから陣容は大きく入れ替わりましたけど、期待値はそんなに下がらない。選手はガラッと変わったけど、スタイルは変わらないのかなと。

土屋 プレーオフ圏内をキープしていた昨シーズン前半戦の良いイメージが絶対にあると思うんですよ。停滞感が否めなかった一昨年までの山口だったら、たぶんここまでのレベルの選手は獲れていないでしょうね。

停滞感漂う甲府は「Cに近いBクラス」

ダウントレンドで今は我慢のときだと捉えるクラブと、「今すぐJ1昇格」を求めるサポーターの温度差が否めない甲府。戦力どうこう以前の難しさを抱えている 【(c)J.LEAGUE】

──続いてヴァンフォーレ甲府(昨季14位)ですが、土屋さんと池田さんがBクラス、佐藤さんがCクラス予想ですね。ますは土屋さんからどうぞ。

土屋 陣容をパッと見たときに誰もが思うのは、アダイウトン(→未定)とピーター・ウタカ(→未定)がいなくなったんだなっていうことだと思います。ここ数年チームを支えてきた得点源2人との契約を更新しなかったのは、もっとボールを動かすサッカーをしたいという大塚(真司)監督の決意の表れなのかなと。ただ、昨シーズン終盤のサッカーからは、いまひとつ“大塚色”というものが見えてこなかった。シーズンの頭から指揮を執る今年、それをどれくらい打ち出せるかが1つのポイントでしょうね。

 その意味でも、12年ぶりに復帰した地元出身の柏好文(←サンフレッチェ広島)が、体調面の問題でしばらく離脱することになったのは残念なニュースで、これで序盤戦の戦いが少し難しくなるかもしれません。過去4年の順位は3位→18位→8位→14位。この停滞感を打ち破るくらいのエネルギーが生まれるかどうかは、新加入選手の顔ぶれを見ても現時点ではちょっと分からないというのが、正直なところですね。

池田 僕も「Cの可能性もあるBクラス」という評価です。今年はかなりヤバいんじゃないかという感じがしていて、それはオフのIN&OUTにも表れている。とはいえ「IN」に関しては頑張ったほうです。柏をはじめ、田中雄大(←ファジアーノ岡山)、小出悠太(←ベガルタ仙台)、大島康樹(←栃木SC)と、即戦力と言える実力者を補強できたのは大きいと思います。もちろん彼らがハマらなければ、残留争いに巻き込まれる可能性は十分ありますけど。

佐藤 僕は昨シーズン終盤に、水戸のアウェーゲームで見た甲府と大分トリニータをいずれもCクラスにしたんですが、元J1のクラブでありながら、どちらも今のJリーグの流れに乗れていないんですね。資金力が大きくなるチームが増えている中で、資金的な成長というか、可能性を感じられない。しかも、今は我慢のときだとクラブが考えている一方で、サポーターは「今すぐJ1昇格だ」って言っている。その温度差をすごく感じるんですよね。戦力どうこう以前に、そういった部分に難しさがあるので、僕はこの2チームをCクラスにしました。

 ちなみに甲府は今年のJリーグで平均年齢が一番高いチームなんです。40歳のウタカが抜けても(笑)。例えばかつての伊東純也(現スタッド・ランス)や佐々木翔(現広島)とか、甲府って大卒のいい選手を見つけてくるのが上手いチームだった印象があるんですが、長谷川元希(現アルビレックス新潟)以来、最近はそのレベルの若手が出てきていない。そういった停滞感から抜け出す突破口が今は見えないので、戦力的には「B」だと思いますが、クラブの置かれた状況も考えると「C」。そう言ったほうが、サポーターの方々ももっと危機感を持っていただけるんじゃないかと。

──なるほど。続いて佐藤さんと池田さんがBクラスに入れている藤枝MYFC(昨季13位)です。

池田 「藤枝がこのレベルの選手を獲れるようになったのか」って思えるような補強を近年はしていて、去年の梶川諒太に続き、今年も金子翔太(←磐田)、松下佳貴(←仙台)といった実力者を獲得するなど、クラブとしての成長を感じさせます。もちろん流出も多いんですが、きちんとその穴を埋める補強ができている点を評価して、僕はBクラスにしました。

佐藤 ここは何よりも須藤(大輔)監督が素晴らしい。藤枝はこの人で持っていると僕は思っていて、とにかく勝負師というか、ここで負けたらやばいぞっていう試合に必ず勝つんですよね。もちろんそれは、ただ運が強いわけではなく、状況に応じた戦い方を心得ているからこそなんです。基本的にはエンターテインメント路線ですが、状況によっては現実的なサッカーにも切り替えられる。だから、最低限の勝ち点はきっちり稼げるんです。

 藤枝の強みは攻撃力ですが、それを後方から支えているのがGKの北村海チディ。彼の守備範囲の広さとダイナミックなフィードがチームに勢いをもたらしています。この守護神を引き抜かれることなくチームに留めることができたのは大きいですよ。

土屋 チディのことは高1の頃から知っていますが、もうあと10センチ身長が高かったら日本代表になれるくらいのポテンシャルがありますよ。身体能力の高さはもちろん、足もとの技術も上がって、GKとして確実にスケールアップしている印象です。

──それでも土屋さんはC評価なんですね。

土屋 今年は「超超超攻撃的サッカー」を掲げていると聞いていて(笑)、確かに清水からの期限付き移籍を延長した千葉寛汰もJ2で20得点を奪えるポテンシャルを秘めているとはいえ、やっぱり昨シーズン16得点の矢村健(→新潟)がいなくなったのは痛いですよ。

 失点の多さは織り込み済みで、どんな試合も打ち勝つんだと言っても、攻撃は水物ですし、J2参戦3年目で対戦相手の対策も進んできますからね。メンバーがそこまで入れ替わっていないとなればなおさらで、そうなると守備の脆さが成績に直結しちゃうんじゃないかと。確かに見ていてすごく面白いサッカーだし、攻めまくって存在感を出す藤枝みたいなチームはリーグにとっても重要だとは思うんですけど、“3年目の壁”が、特に守備面で立ちはだかるんじゃないかと予想しています。

変革期の徳島と大木スタイルを貫く熊本

高校在学中にユースからトップチームに昇格した17歳の神代は、ルーキーイヤーの昨季に5得点とインパクトを残す。退団した石川に代わって熊本の前線をけん引したい 【(c)J.LEAGUE】

──徳島ヴォルティス(昨季8位)の評価もBとCに分かれましたね。Bクラス予想の土屋さんからお願いします。

土屋 徳島は今、クラブとして変革の時期にあって、スペイン化など、ここ数年「徳島って面白いことをやっているよね」って思わせるムーブメントを生み出してきた人たちが、岡田明彦強化本部長をはじめ軒並みいなくなってしまった。今は、地元出身で昨年から強化本部長を務めている黒部光昭さんのもと、いろんな意味で生まれ変わろうとしているタイミングなんですね。それを象徴するのが、黒部さんが京都時代に師事したゲルト・エンゲルスのヘッドコーチ就任。経験豊富な彼が、Jリーグでの実績がそこまでない増田功作監督とどんなタッグを組むのか、すごく興味がありますね。

 ただ、徳島はいつも序盤戦がいつも良くない。ここをどう乗り切るかと考えたときに、前線がJリーグ初挑戦の新外国籍選手で占められそうなのは、ちょっと不安ですね。トニー・アンデルソン(←イトゥアーノ)という昔の名選手みたいな名前のアタッカーは、早々に8週間の離脱になってしまいましたしね。これまでの徳島とは異なる組閣の仕方とか補強戦略が、ここ2年ぐらい良くなかった序盤戦で吉と出るか凶と出るかで、今シーズンの行方が決まってくると思います。

 とはいえ、玄理吾(←栃木SC)、髙田颯也、髙田優といった高校年代で名を馳せた有望な若手がいるのは、明るい材料。彼らはいずれも、化ければJ2を代表するような選手になれるブレイク候補ですよ。

佐藤 去年水戸が対戦した中で、強かったなっていう印象を受けたチームの1つが徳島なんですよ。右にエウシーニョ、左に橋本健人(昨季途中に新潟へ)という両サイドが強烈で、サイドに追い込んでもボールを奪えなかった。そんなチームを途中就任で作った増田監督に対する評価が僕の中でかなり上がったんですね。

 もちろん個の能力に拠っていた部分もあるので、今シーズンもそれこそ新外国籍選手の出来次第だとは思うんですが、もともと堅い守備陣に、センターバックの森昂大(→新潟)は移籍したとはいえ、新たに山越康平(←千葉)や山田奈央(←水戸)も補強していますし、その土台はブレないんじゃないかと。もし、前線のブラジル人選手がハマったら、Aクラスにも行けるかもしれない。

池田 僕は正直、出て行った主力選手の穴がまったく埋まっていないという印象ですね。確かにブレイク間近の若手はいるし、髙田颯也とかめちゃめちゃ好きな選手なんだけど、彼にしたって、もう何年もブレイク候補と言われていて、そろそろ本当に頼むよと(笑)。

 頑張って後ろのほうはレギュラークラスを獲ったけど、永木亮太(36歳)とか岩尾憲(36歳)みたいなベテランにまだまだ頼らないといけない状況。彼らもすごい選手だけど、シーズンを通してどこまで働けるかを考えると、ちょっと厳しいのかなって思いますね。

──ロアッソ熊本(昨季12位)はどうですか?

土屋 昨シーズン、リーグワースト2位の62失点だったチームから、守備の最重要人物だったGKの田代琉我が新潟に引き抜かれ、さらに3バックの真ん中をやっていた江﨑巧朗も磐田に移籍した。普通に考えれば不安視されるところなんですけど、このチームはあんまりそこにはこだわらない(笑)。一方で昨シーズンのボール支配率とパス総数はリーグ1位。大木(武)さんがアグレッシブなサッカーを突き詰めていて、そうした一貫性がチームの根幹としてあるのは大きいと思います。

 今年は有望な大卒ルーキーも多く獲っていて、半代将都(←筑波大)、根岸恵汰(←仙台大)、小林慶太(←立教大)、渡邉怜歩(←鹿屋体育大)といった選手たちはみんな、大木さん流に言うと「サッカーができる選手」。熊本はずっと2年後、3年後を見据えたチーム作りをしてきて、今年もそこはブレていないなって思いますね。さらに既存選手で言うと、去年ブレイクした中盤の豊田歩が残留したのはポジティブなニュース。田代、江﨑以外の核になる選手はほぼ残せたので、戦力的にもBクラスには行くと見ています。

 あと、ヘッドコーチの藤本主税さんが長野パルセイロの監督に就任して、大木-藤本の2頭体制が崩れてしまったんですが、それでも京都と岐阜で大木さんのもとで働いていた田森大己さんをユースコーチからトップチームのコーチに昇格させ、さらにここ数年、好成績を残している熊本ユースの監督だった岡本賢明さんもトップコーチに引き上げている。こういったスタッフ人事もすごく的確だなって思いますね。

池田 熊本って、なぜか活躍しても抜かれないというか(笑)、地道にチームを支えている選手たちが相変わらず残ってくれているんですよね。竹本雄飛、三島頌平、黒木晃平といった、大木サッカーを熟知する彼らの存在って、戦術的にすごく大きいと僕は思っていて、そこのベースがあるから、なんだかんだ言っても成績が安定するんです。

 ただ、痛いのは石川(→千葉)の流出。多彩なゴールパターンの持ち主だった彼の穴をどう埋めるのかっていう点はちょっと気になるけれど、ただ結局このチームは後釜をきちんと育てるんだよね。17歳ながら昨シーズンに5点取った神代慶人あたりがさらに伸びてくれば問題ないし、確かに未知数な部分はあるけれど、これまでの流れを見ても期待値のほうが上回る。

 ルーキーイヤーの昨シーズンに台頭した古長谷千博も好きな選手で、僕は「ミスターキャンセル」って呼んでいるんですけど、めちゃめちゃキャンセルプレーが上手いんですよ。相手の出方を見ながら徹底的にいやらしいところを突いてくる。怪我なくシーズンを通して働ければ、もっとゴールもアシストも増えると思っています。

──そんな熊本を、佐藤さんだけがCクラス評価ですね。

佐藤 去年の水戸が、熊本に対して天皇杯を含めて3戦3勝だったんですよ。その印象の強さゆえのC評価です(笑)。

 大木サッカーの魅力は誰もが認めるところで、その特徴もみんな分かっている。熊本が強さ発揮する試合って互いにやり合ったときだから、J2のチームは上位陣を含めてどこもやり合わないというか、熊本の良さを消す戦い方を選択するケースが多いんです。そこをどう乗り越えるか。結局のところ石川が抜けた前線で、誰が点を取るのかということが今シーズンのテーマになってくると思っています。

 神代や半代もその候補でしょうが、僕が個人的に注目しているのが3年目の大﨑舜。スケールの大きなアタッカーで、チームの起爆剤になる可能性を秘めている。今年は5人交代制で9人ベンチに入れるので、選手交代も重要なカギを握ると思いますが、大﨑みたいな選手が後半から出てきたら、相手はかなり嫌だと思いますよ。

土屋 前線のキープレーヤー候補で言えば、福島ユナイテッドから加入した塩浜遼も楽しみな選手ですよ。昨シーズンのJ3で16得点ですからね。石川もそうでしたが、J3でしっかり結果を残して、熊本でさらに活躍してステップアップしていく流れに、彼も乗るかもしれません。

──Bクラスの最後は、佐藤さんが推している水戸ホーリーホック(昨季15位)ですが、たっぷりお話を聞かせてください。

佐藤 お2人はCクラス評価ですが、過去2シーズンの低迷(17位→15位)を見れば、それはそうでしょうって僕も思います(苦笑)。ただ、この結果に対してクラブも相当な危機感を持っていて、今年に関してはチーム編成のやり方を変え、若手だけでなく即戦力の中堅・ベテランも高いお金を払って獲得しているんですね。飯田貴敬(←甲府)や渡邉新太(←大分)のような実績のある選手は、これまでの水戸だったら獲れなかったので、そこはすごくいい変化を感じています。

 実際、彼らのパフォーマンスはめちゃめちゃ良くて、若手を引っ張る存在にもなってくれている。チームを取り巻く空気は、去年から大きく変わっていますよ。なかでも栃木SCから加入した左サイドバックの大森渚生が予想以上に良くて、ちょっと注目してもらいたい選手の1人です。

 それと同時に、大卒ルーキーもレギュラー争いに絡んできていて、中盤の川上航立(←立正大)なんかは練習試合からずっとスタメンを張っていますし、選手層はかなり厚くなっています。森(直樹)監督も「競争」をテーマに掲げていて、軸は作らずに練習試合でも今一番調子のいい選手を使う。そこはまったくブレずに、すごく面白いチーム作りをしていると思います。唯一、櫻井辰徳(→鳥栖)の穴が埋まらなくて、ボランチが弱点になるのかなと考えていたんですが、最近ここにも特別指定で立教大の嵯峨康太(3年/26年入団内定)を加えているんですね。彼、ちょっとスーパーなタレントなので、もしかしたら今シーズンの水戸のキーマンになるかもしれませんよ。

 戦術面では、確かにハイプレスが武器とはいえ、J2はロングボールを蹴ってくるチームが多いので、そこへの対応がポイントになると見ています。

土屋 客観的に見ると、多少戦力アップしたのかなっていう印象はあります。ただ、昨シーズンもそうでしたが、「今年はこういうサッカーをやります」という水戸のスタイルが、正直見えてこない。そこがCクラスにした理由の1つです。

 おそらくチームは、この2年ぐらいで獲得した高卒、大卒の若い選手たちの伸びしろに期待していて、僕もそこがカギになるのかなって考えています。実際、高校・大学時代に有望株と呼ばれていた選手たちが入ってきていて、それこそ昨年、桐光学園高から加入した齋藤俊輔なんて、今年のU20アジアカップ(2月12日開幕)の代表メンバーにも選ばれましたからね。こういう選手たちの躍動、成長がポジティブな影響をもたらせば、面白いチームになっていくのかなっていう期待感はあります。

池田 佐藤さんの話を聞いて、なるほど水戸は中堅クラスを結構獲っているなって、あらためて思いました。軸になるような選手が何人か出て行きましたが、一方で計算できる即戦力も補強している。飯田、知念哲也(←RB大宮アルディージャ)は最終ラインのレギュラー候補で、前線には奥田晃也(←栃木SC)も帰ってきた。あと、若手の中では津久井匠海(←アスルクラロ沼津)も面白そう。

土屋 僕も今まさに、佐藤さんに津久井のことを聞きたかったんです。高2で横浜F・マリノスと契約して、でもなぜかJFLで2年、J3で2年と下位カテゴリーにレンタルに出されて、去年沼津に完全移籍。昨シーズンのJ3では右ウイングを務めながら9得点を挙げているし、2002年生まれ世代の中でもポテンシャルは随一だと、僕は思っているんですけどね。どうですか、津久井。

佐藤 めっちゃいいですよ(笑)。いわゆるエリートなんですが、JF、LJ3とカテゴリーを這い上がってきたからこその凄みがあるというか、ギラギラ感がハンパない。今までの水戸だと、そういうギラギラした若手がただイケイケでやっていたんですけど、そこを今年は飯田とか知念といったベテランが後ろから締めている。これまでとの大きな違いはそこでしょうね。

土屋 大津高出身で高卒2年目の碇明日麻にも期待していますよ。スケール感があって、U18プレミアリーグWESTではボランチやセンターバックなど複数ポジションをこなしながら20ゴールを挙げて、得点王にもなりましたからね。

佐藤 彼も近いうちに年代別代表に呼ばれるだけのポテンシャルがありますよ。今年はボランチで試合にも絡んでくると思うので期待していてください。

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