栗山巧 独占手記「生涯つらぬく志」

栗山巧の覚悟「僕はまだまだ戦っていける」 全力を尽くし、ファンを幸せにする一年が始まる

栗山巧

「由伸さんのスイングがシンプルの極地」

自主トレでバッティング練習を行う栗山。一球一球、自身のフォームとスイングを見つめ精力的に打ち込んだ 【撮影:スリーライト】

 1月8日、ライオンズの室内練習場。マシンを使って、3カ月ぶりにバッティング練習をしました。

「牛骨バット」も話題になっていますが、僕は去年までと同じバットを使っています。打席に立ったら、自然とグリップエンド側を余して、短く持った。「よりシンプルに」と頭の中で描いてきたイメージがそうさせたのかもしれません。

 打ってみたら、びっくりするほどの快打が!

 ……だったら面白いところですが、実際にはそんなことはありません。でも、久々にしては気持ちよく打てました。

 一周回ってシンプルに、で思い出されるのが、高橋由伸さんです。

 プロ入り直後。当時の二軍の打撃コーチ・田邊徳雄さんが「これが理想のスイングだ」と言って、よく連続写真を見せてくれました。

 左耳近くにグリップを寄せて、足でタイミングを取る。上半身にまったく無駄な動きが生じないまま、ボールにバットを入れていく。

 美しい振り抜きも含めて、まったく力みのないスイング。あれこそシンプルの極地なのかな。あらためてそう思います。

 僕は由伸さんや同期のおかわりのような、自分の「型」を持てないままここまで来ました。

 いつか、どこかでそういうものに巡り合えるのだろうか。シンプルも突き詰めれば、由伸さんのように型になったりするのかな。

 そんなことを思いながら、日々練習をしています。



 シーズンに入って1本ヒットが出ると、今年もやれると思える。

 そんな話を聞くことがあります。たしかにホッとはしますよね。ただ、僕の場合は「今年もやれる」のバロメーターは、少し違うところにある気がしています。

 それは「気持ち」です。

 長年やっていれば、技術は正直、シーズンに入ってから調整がきいていくところがあります。気持ちはそうはいかない。「勝ちたい」。「うまくなりたい」。そういったシンプルな意欲を持てているのか。こればかりは、経験やコツで何とかなるものではないような気がしています。

 頭の中でずっと描いてきたイメージを、どう現実の打撃に反映させていくか。一周回って「シンプルに」に戻ってきた野球との向き合い方が、この先どうなっていくのか。

 ワクワクできる。自分に期待もできる。今年も現役を続けるための最初のハードルは、すでに越えることができた気がしています。

 あとは球場で皆さんと再会したときに「喜んでいただきたい」という強い気持ちがちゃんと加わってくれば……僕はまだまだ戦っていける。そんなことを思っています。

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著者プロフィール

1983年9月3日生まれ。兵庫県出身。背番号1。外野手。右投左打。177cm/85kg。プロ24年目。育英高から2001年ドラフト4巡目で西武に入団。2008年に自身初の規定打席に到達し最多安打(167安打)を獲得するなどチームの日本一に貢献。08年から9年連続でシーズン100安打以上を達成、12年から16年まではキャプテンを務めるなどチームの顔として活躍。稀代のヒットメーカーとして安打を積み重ね、21年に生え抜き選手では球団史上初となる通算2000安打を達成した。これまで獲得した主なタイトルは最多安打(08年)、ベストナイン(08、10、11、20年)、ゴールデン・グラブ賞(10年)。

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