栗山巧の覚悟「僕はまだまだ戦っていける」 全力を尽くし、ファンを幸せにする一年が始まる
「由伸さんのスイングがシンプルの極地」
自主トレでバッティング練習を行う栗山。一球一球、自身のフォームとスイングを見つめ精力的に打ち込んだ 【撮影:スリーライト】
「牛骨バット」も話題になっていますが、僕は去年までと同じバットを使っています。打席に立ったら、自然とグリップエンド側を余して、短く持った。「よりシンプルに」と頭の中で描いてきたイメージがそうさせたのかもしれません。
打ってみたら、びっくりするほどの快打が!
……だったら面白いところですが、実際にはそんなことはありません。でも、久々にしては気持ちよく打てました。
一周回ってシンプルに、で思い出されるのが、高橋由伸さんです。
プロ入り直後。当時の二軍の打撃コーチ・田邊徳雄さんが「これが理想のスイングだ」と言って、よく連続写真を見せてくれました。
左耳近くにグリップを寄せて、足でタイミングを取る。上半身にまったく無駄な動きが生じないまま、ボールにバットを入れていく。
美しい振り抜きも含めて、まったく力みのないスイング。あれこそシンプルの極地なのかな。あらためてそう思います。
僕は由伸さんや同期のおかわりのような、自分の「型」を持てないままここまで来ました。
いつか、どこかでそういうものに巡り合えるのだろうか。シンプルも突き詰めれば、由伸さんのように型になったりするのかな。
そんなことを思いながら、日々練習をしています。
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シーズンに入って1本ヒットが出ると、今年もやれると思える。
そんな話を聞くことがあります。たしかにホッとはしますよね。ただ、僕の場合は「今年もやれる」のバロメーターは、少し違うところにある気がしています。
それは「気持ち」です。
長年やっていれば、技術は正直、シーズンに入ってから調整がきいていくところがあります。気持ちはそうはいかない。「勝ちたい」。「うまくなりたい」。そういったシンプルな意欲を持てているのか。こればかりは、経験やコツで何とかなるものではないような気がしています。
頭の中でずっと描いてきたイメージを、どう現実の打撃に反映させていくか。一周回って「シンプルに」に戻ってきた野球との向き合い方が、この先どうなっていくのか。
ワクワクできる。自分に期待もできる。今年も現役を続けるための最初のハードルは、すでに越えることができた気がしています。
あとは球場で皆さんと再会したときに「喜んでいただきたい」という強い気持ちがちゃんと加わってくれば……僕はまだまだ戦っていける。そんなことを思っています。