賞金総額は日本ツアーの5倍! 13人の日本選手が挑む米国女子ツアー、古江、竹田、笹生は開幕戦、渋野、岩井ツインズらは第2戦より参戦

北村収

今週開幕する米国女子ツアーには13人の日本人選手が参戦。左から古江、笹生、渋野 【Photo by Getty Images】

 すでに開幕している米国男子ツアーに続き、2025年の米国女子ツアーが今週開幕する。75周年となる今年は34試合(公式戦は32試合)で、賞金総額はツアー史上最高額となる1億2900万ドル(約201億円 ※1ドル156円計算)。日本女子ツアーの賞金総額の5倍近い規模となる世界最高峰の大会に13人の日本人選手が挑む。

※当初は全35試合(公式戦は33試合)の予定だったが、1月24日に3月開催予定の「ファー・ヒルズ・パク・セリ選手権(賞金総額200万ドル)」の開催中止が発表された

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2022年4人→2023年6人→昨年9人と日本選手の参戦が年々増加

 今季は13人の日本人選手が米国女子ツアーを主戦場とする。昨季も参戦した古江彩佳、西郷真央、笹生優花、畑岡奈紗、渋野日向子、西村優菜、勝みなみの7選手が、ポイントランキング80位以内に入り今季のシード権を確保。また、竹田麗央は昨年の「TOTOジャパンクラシック」優勝により、出場資格を手にした。さらに、米国女子ツアーの最終予選会を突破した山下美夢有、岩井千怜、岩井明愛、吉田優利、馬場咲希の5選手も出場資格を取得。その結果、計13人の日本人選手が今季の米国女子ツアーに参戦することになった。

昨年の「TOTOジャパンクラシック」に優勝し、今季の米国女子ツアー参戦の資格を得た竹田麗央 【Photo by Yoshimasa Nakano/Getty Images】

 日本選手は、近年増加傾向にある。2022年は前年の賞金ランキングによりシード権を獲得した畑岡と笹生に加え、予選会を突破した古江、渋野の計4人が参戦。翌2023年には、予選会を突破した勝と西村も加わり6人に。さらにその翌年の2024年は、予選会を通過した西郷、吉田に加え、前年のTOTOジャパンクラシックで優勝した稲見萌寧が参戦し、計9人となった。そして、前述の通り、今季は13人の日本人選手が米国女子ツアーを主戦場とする。

昨年日本8勝の竹田麗央より、未勝利の渋野日向子が獲得賞金で上回る

 なぜ、これだけ多くの選手が米国ツアーに挑戦するのだろうか?理由として考えられるのが、米国女子ツアーの賞金額の高さだ。今年は34試合(公式戦は32試合)で、賞金総額はツアー史上最高額となる1億2900万ドル(約201億円 ※1ドル156円計算)。37試合、賞金総額44億円で行われる日本女子ツアーの賞金総額の5倍近い規模となる。

 今季の予定を発表した昨年の11月、当時のUSLPGAツアーのコミッショナーであるモリー・マルクス・サマーン氏(1月9日付で「3人の子供との時間を大切にしたい」のと理由で退任)は、「これはツアー75年の歴史で最大の賞金総額であり、2021年比で約90%増加、4年間で6200万ドル以上増加したことを示し、協会の成長と成功を裏付けている」と語っていた。

 この賞金差は個人の獲得金額にも大きな影響を与えている。昨年は未勝利だった渋野だが特に高額賞金の全米女子オープンで2位、全米女子プロでは7位と上位に入り年間の賞金獲得額は1,719,878ドル(2億6830万968円 ※1ドル156円計算)。円安の影響もあり、日本女子ツアーで8勝を挙げ賞金女王になった竹田の賞金総額2億6573万16円を上回った。

渋野日向子、笹生優花、古江彩佳に続くメジャー覇者は今年も出るか?

昨年、全米女子オープンで2位に入った渋野日向子 【Photo by Patrick Smith/Getty Images】

 日本選手の米国女子ツアーへの挑戦が増えている理由の一つとしてあげられるのが、近年のメジャーチャンピオンの続出だ。この高い壁を近年最初に乗り越えたのは渋野。2019年、1977年全米女子プロを制した樋口久子以来となるメジャー制覇を果たした。2021年には笹生が全米女子オープン、2024年には笹生が再び全米女子オープンを制し、さらに古江がメジャーのアムンディ・エビアン・チャンピオンシップで優勝を果たした。

2024年全米女子オープンを制した笹生優花 【Photo by Sarah Stier/Getty Images】

「この3人ができるなら自分でもできる」、「この3人に続きたい」と米国女子ツアーに出場している他の日本選手の多くも、最大の目標として「メジャー制覇」を掲げている。世界最高峰の舞台である米国女子ツアーは、トップレベルの選手が集まり、国内女子ツアーとは異なる厳しい競争や高難度のコースセッティングが特徴。こうした環境で経験を積むことが、メジャー大会という特別な舞台で結果を出すために不可欠だと考え、挑戦を続ける日本選手が増えている。

ドライビングディスタンス134位の古江彩佳が平均スコアでは1位に

 米国女子ツアーと国内女子ツアーの選手の飛距離には大きな差がある。昨年、国内女子ツアーでドライビングディスタンストップだった竹田の記録は263.19ヤード。一方、米国女子ツアーのトップ選手は290.61ヤード。なお、竹田の記録を上回る選手が55人もいた。

 非力で飛ばない日本人には米国女子ツアーは厳しいという固定的なイメージを破って活躍しているのが古江だ。2024年のドライビングレンジでは250.41ヤードで134位。ところが平均ストロークを69.988とし、年間平均ストローク1位の称号『ベアトロフィー』を日本人として初めて獲得。「70台を切れたのがとてもうれしい。ベアトロフィーを獲得できて光栄です」と昨年の最終戦を終えた直後に振り返った。

米国女子ツアーの年間平均ストローク1位の称号『ベアトロフィー』を受賞した古江彩佳 【Photo by Michael Reaves/Getty Images】

 古江のデータを見ると、スクランブリング(パーオンできなかったホールでパーかそれよりいいスコアで上がること)で1位。ショートゲームの上手さでボギーを叩かないプレーをベースにする。また、バーディ数は9位とチャンスでは高確率でスコアを伸ばす。そして興味深いのが飛ばし屋有利のPar5のスコアアベレージが32位なのに対し、Par4は3位、そしてPar3は1位であることだ。

 飛ばないのは古江だけでない。2024年の米国女子ツアーのスタッツでは吉田は251.27ヤードで127位、西村は241.19ヤードで160位だった。ただ、古江が実績を出している通り、ドライビングディスタンスでは下位にいても上位に入り、メジャーに勝つチャンスも十分にある。

昨年に続き今年も参戦をする吉田優利(左)と西村優菜 【Photo by Getty Images】

日本の飛ばし屋選手の活躍にも期待

 日本選手の中にも飛距離で負けない選手が数多くいる。筆頭は昨年全米女子オープン2勝目をあげた笹生。ドライビングディスタンスでは昨季25位につけた。すでにメジャーで2勝をあげている笹生だが、米国女子ツアー全体での勝利はこの2勝のみ。2021年の全米女子オープン勝利後に参戦をしている米国女子ツアーで何度も優勝争いに絡んでいる笹生。メジャー以外での勝利と、米国女子ツアーのポイントランキングで上位に入ることも期待される。

 日本ツアーでは2020-21にドライビングディスタンスで2位に入った勝、2020-21に10位だった西郷、そして2022年の米ツアーのドライビングディスタンスで33位に入った畑岡も飛ばし屋。彼女たちには、豪快なショットをベースにした活躍に期待がかかる。

左から勝みなみ、西郷真央、畑岡奈紗 【Photo by Getty Images】

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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