高校サッカー選手権準決勝、東福岡vs.前橋育英を展望 共通項の多い名門校対決

安藤隆人

守備力の高い東福岡と攻撃で魅せる前橋育英がぶつかる80分は熱い戦いになりそうだ 【写真:長田洋平/西村尚己/アフロスポーツ】

単純な『矛と盾』の戦いではない、“守り”の東福岡と“攻撃”の前橋育英

 共通項の多い名門校同士の対決となった。共に全国優勝をした経験があり、現在は高円宮杯プレミアリーグのWESTとEASTに所属。『赤い彗星』と『上州のタイガー軍団』と異名を持っていることも共通している。

 この試合を分かりやすく区分すれば、県予選を含めてトーナメントでは7試合連続クリーンシートで、8位でフィニッシュしたプレミアWESTでもリーグ4位の失点の少なさという堅守を誇る東福岡。今大会4試合で8ゴール、6位だったプレミアEASTで37ゴールを叩き出した攻撃力の前橋育英。

 強烈な『矛と盾』の戦いとなるが、個人的には東福岡のこれまでとは若干異なるワイド攻撃に対して、前橋育英の守備陣がどう対応して行くかが大きなポイントになると感じている。

新生・東福岡の“ワイド攻撃”の変化

東福岡の右ウィングを担う稗田幹男 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 東福岡は両サイドに突破力を持ったウィングを置く【4-3-3】、もしくは【4-1-4-1】が伝統で、これまで長年コーチを務め、今年から監督に就任した平岡道浩監督もこのスタイルを継承している。しかし、サイドを崩すアプローチとして、昨年まではワイドに展開してから鋭い縦突破からのクロスをメインにゴールをこじ開けてきたが、今年はウィングが取った幅を活用したうえで、内側のレーンで選手の距離感を縮め、ショートパスを織り混ぜながら複数人でポケット(ペナルティーエリア内の左右のスペース)を取りに行くサッカーを展開している。

 具体的に言うと、左ウィングの神渡寿一もしくは児玉愁都、右ウィングの稗田幹男がワイドに張ってボールを受けると、その内側のスペースに塩﨑響と西田煌などのインサイドハーフが飛び込んだり、1トップのFW伊波樹生が潜り込んだりする。それに対して左の柴田陽仁と右の福川聖人の両サイドバックが、ウィングと内側のレーンに入ってきた選手をサポートするように絞り気味のポジションを取りながらパスコースを作り出す。

 サイドでトライアングルを作り、ショートパスでポケットを突いたり、両ウィングがカットインを仕掛けミドルシュートやポケットの侵入を試みたりするなど、変化を加えながら切り崩して行く。

 これまで4試合で4失点を喫している前橋育英の守備陣にとっては、ボールを奪われてワイドに展開をされたときに、いかに人に食いつかずにスペースを埋める守備ができるかがポイントになる。ここの判断や切り替えがずれた時は大きなピンチを招く危険性がある。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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