現地発! プレミア日本人の週刊リポート(毎週水曜更新)

「プレミアでも間違いなくトップのウインガー」 鎌田は敵として戦った三笘をこう評した

森昌利

リバプールは10人での戦いを強いられながら敗北を逃れた

早々と先制されたうえ、70分以上にわたり10人での戦いを強いられながら、リバプールはなんとかドローに持ち込んだ。遠藤はリーグ戦3試合連続で出場なしに 【Photo by Liverpool FC/Liverpool FC via Getty Images】

 アーセナル対モナコの3日後、14日に出掛けたのがリバプール対フラムのリーグ戦。プレミアリーグ首位を快走し、欧州CLのリーグフェーズでも唯一全勝で首位を突っ走る南野の古巣リバプールが、前半11分に一瞬の隙を突かれて先制された挙げ句、その6分後に左サイドバックのアンディ・ロバートソンが一発退場となった。

 スコットランド代表主将が自陣ペナルティエリア手前で元リバプールのハリー・ウィルソンを倒し、フラムに与えたそのチャンスが“得点の絶好機だった”かどうかは議論の余地がある。けれども、ロバートソンがファーストタッチミスでボールを奪われて、窮地を作ってしまったことは間違いない。ミスをした直後のインテンシティも足りなかった。

 しかし10人での戦いを強いられたリバプールは、コーディー・ガクポのダイビングヘッドで同点にすると、後半に再びフラムにリードを許しながらディオゴ・ジョッタのゴールで再度追いつき、辛くも敗北を逃れた。

 残念ながら、我らが日本代表主将の遠藤航はこの試合でも出番なし。記者と接触するミックスゾーンには当然のように現れず、今季の状況について31歳のMFに尋ねる機会はまたしても訪れなかった。

 その一方で、遠藤と話せなかった欲求不満は翌日の15日に行われたブライトンとクリスタルパレスの対戦で見事に晴れた。試合後に三笘薫と鎌田大地の両選手に話を聞くことができたからだ。

 試合はクリスタルパレスがアウェーで3-1の勝利を飾った。試合後、鎌田は「ダービー感は正直なかったです」と話したが、ロンドン南部のクリスタルパレスとイングランド南端の浜辺の街であるブライトンの対戦は、高速道路のM23で2つの街が結ばれていることから“M23ダービー”と呼ばれ、熾(し)烈を極める。無論、両軍のサポーターとしては、他のどのカードよりも敵意をむき出しにして戦うべき試合である。

 そのおかげで筆者も巻き添えを食った。ブライトン駅とスタジアムがあるファルマー駅の警備がいつもより厳重で、普段は10分で着くところが、途中何度も通行止めがあって、50分もかかってしまったのだ。

 三笘人気でブライトンの試合に訪れる日本人ファンが日増しに増えているが、スタジアムの最寄駅はファルマーで、ブライトン駅で乗り換えて6分ほどかかる。実はこれがけっこう大変なのだ。

 試合日にはこの6分間の路線に乗車規制がかかる。ホーム、そしてアウェーのファンが鈴生りとなり、プラットフォームへの入場が規制され、キックオフの1時間前になると、20分おきの電車にすぐには乗れない状況になる。なので、遅くても1時間半前にはスタジアムに着くようにしたほうがいい。

戦況をガラッと変えた1本のコーナーキック

「狙っていることはすごくできている」と鎌田が言うように、フィジカルを前面に押し出し、相手の弱点を突いたクリスタルパレスが3点を奪いブライトンを下した 【Photo by Shaun Brooks - CameraSport via Getty Images】

 少し話が脱線したが、クリスタルパレスが宿敵に勝って、アウェー席は試合後もしばらくは“満員”のまま勝利のチャントが高らかに響き渡っていた。

 試合は前半3分に三笘が左サイドから左足で強烈なシュートを放ったことが象徴するように、ブライトンペースで始まった。ところが1本のコーナーキックでガラッと状況が変わった。

「今、自分たちがプレミアのなかでも、たぶんすごくフィジカルなサッカーをしてるチームの1つであると思います。もう試合前から『セットプレー』『セットプレー』って話していて。そのセットプレーで(先制点が)取れたというのと、相手の右サイドバックの選手(身長163センチのタリック・ランプティ)が少し、身長の部分で小さいんで。そこで裏を取ったりだとか、ロングボールを蹴ってガチャガチャして、2点目もそういう感じで取れた。チームとして狙ってることはすごくできてるなと思います」

 前半にクリスタルパレスがあれよあれよという間に2点を奪った。鎌田はその様子をベンチから見ていたが、このコメントでも分かるように、テクニック上位のブライトンを相手に、クリスタルパレスは自分たちが優位に立てると信じるフィジカルなセットプレーで、狙い澄まして先制点を奪った。

 さらにブライトン右サイドバックのランプティの身長が低い弱点を突いて、高いボールを使ってチャンスを作り、裏に抜けたタイリック・ミッチェルのクロスボールにイスマイラ・サールがゴール前でしっかり頭を合わせ、これまた狙い通りに2点目を奪った。

 試合終盤に両軍が1点ずつ取り合ったが、フィジカルの強いクリスタルパレスが最終ラインを5人で固め、結果的に前半の2点のリードを守り切った形になった。

 そのことに関しては完敗した試合後、取材に対応せずにスタジアムを去りたいところであっても記者団の前に姿を現した三笘自身も、後半になって相手がフォーメーションを5-4-1にしたことで、「前進できなかった」とその堅固な守りに苦しんだことを認めていた。

三笘は鎌田のプレーを見て「本当に刺激になる」

試合には負けたが、開始直後にゴールを脅かすなど三笘は相変わらずの輝き。鎌田はそんな日本代表の僚友を「プレミアでもトップのウインガー」と評した 【Photo by Alex Pantling/Getty Images】

 昨季はブライトンがホームでクリスタルパレスを4-1で撃破したが、この日は1-3の完敗。しかしこの結果も、ほんの少しボタンをかけ違えただけで勝敗が入れ替わるプレミアリーグの怖さが表れたものだったと思う。ボールを動かす技術ではブライトンが優勢だったが、当たりの強さ、球際のしぶとさで勝るクリスタルパレスが自分たちの得意な土俵に相手を引きずり込み、勝利をつかんだ。

 三笘は痛い敗戦を振り返って、「セットプレーで引き続き失点しているところで、僕自身も責任がありますし。1個やられるとやっぱり流れは持ってかれると思います」と話して、先制点を奪われる起点となり、流れが変わったコーナーキックの対応を悔やんでいた。

 しかし今回の取材で筆者の関心を最も強く引いたのは、鎌田、三笘の両者が敵味方に別れて戦ったお互いの印象を語った部分だった。

 まずは鎌田の三笘評。

「使われ方を見ても、やっぱり常に90分出続けていて、明らかに“薫のチーム”だと思います。うん、そしてプレミアのなかでも間違いなくトップのウインガーであるとも思う。やっぱりすごい。今日は自分たちがすごく守備的で、難しさもあったんだろうなとは思います。けれどもプレミアのなかでもトップの選手だなっていうふうには思います」

 フランクフルトとラツィオで欧州CLを戦い、今季からプレミアリーグに参戦。そして強豪ひしめくイングランド1部リーグのチームをほぼ一回り見た鎌田が、実際に対峙した三笘を「プレミアのなかでも間違いなくトップのウインガー」と言い切った。

 英国メディアのゴシップ欄には、マンチェスター・シティ、バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーなど、三笘を獲得したがっているビッグクラブの名前が次々と登場して、ブライトンのエースに成長した日本代表MFの評価の高さを読み取ることができるが、こうして鎌田が実際のピッチ上での存在感を語ると重みが全く違う。

 一方の三笘はこう言った。

「途中から入ってアグレッシブに動いて、守備をしながらカウンター、ショートカウンターをしているところは見えました。彼がやりたいプレーができているのか、それは分からないですけど、そのなかでもしっかりとプレーしてるのを見て、素晴らしいプレーをしていたと思いました。(追撃に精いっぱいで)そこまで僕も見る余裕はなかったですけど、今は先発していないところもありますが、やっぱりそれでもああいういいプレーをしてるっていうのが本当に僕の刺激になりますし、代表にも必ず活きてくると思います」

 三笘が言った「彼がやりたいプレーができているのか、それは分からないですけど」という部分は、鎌田本人が「しっかり守備で中に絞って、外にボールを出させて、あんまり相手のやりたいことをやらせないようにっていう感じでした」と、監督からの指示を明かしたところと符合する。

 しかしそんな制約があるなかでも、しっかり存在感を見せた鎌田がしっかり三笘の目に留まった。そして代表に戻れば頼もしい味方になると語った。

 プレミアリーグ取材24シーズン目。こうしてブライトンとクリスタルパレスで、三笘と鎌田がピッチ上に浮き立つようなパフォーマンスを披露した。日本代表選手の存在感はフットボールの母国イングランドで日増しに強くなるばかりだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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