王者のプライドをかけ、保田克也と宇津木秀が激突 大型ホープ・今永虎雅と対する齊藤陽二の意地――ライト級の戦いに注目【11月のボクシング注目試合】
今永虎雅、保田克也、主催の大橋ジム・大橋秀行会長と共同プロモーターの瀬端幸男・DANGANジム会長、宇津木秀(2024年9月24日) 【写真:船橋真二郎】
セミファイナルは「アジア最強」と銘打たれたライト級トーナメントの決勝。ともに予選、準決勝を序盤KOで勝ち上がってきたアマチュア通算10冠のホープ・今永虎雅(いまなが・たいが、大橋)と勝利はすべてKOの齊藤陽二(角海老宝石)が戦う。
さらに日本タイトル挑戦権をかけた最強挑戦者決定戦が2つ。スーパーウェルター級は、キック出身で無敗の日本1位、左右田泰臣(EBISU K’s BOX)と元ウェルター級の東洋太平洋、WBOアジアパシフィック、日本王者で現・日本スーパーウェルター級2位の豊嶋亮太(帝拳)、ウェルター級は、日本5階級制覇王者・湯場忠志の長男で日本2位の湯場海樹(ワタナベ)と3位で日大出身のシーサー皆川(平仲ボクシングスクール)が来春のチャンピオンカーニバル出場を目指す。
また前・日本ライト級王者で同級2位の仲里周磨(オキナワ)が再起。メインで2冠を争う保田と宇津木には過去に勝ったことがあり、日本スーパーライト級2位で1階級下のライト級に進出するベテラン、アオキクリスチャーノ(角海老宝石)との上位ランカー対決でアピールを狙う。
2025年にトーナメント戦が企画されているヘビー級の4回戦を含めた全試合は、NTTドコモの映像配信サービス「Lemino」でライブ配信される。
難関のライト級で世界を目指す戦い
ライト級2冠王座統一戦に臨む保田克也(左)と宇津木秀(2024年9月24日) 【写真:船橋真二郎】
「一番の目標は世界なので、チャンスがあれば(世界戦を)やりたいんですけど、層が厚い階級で、なかなかそうもいかないと思うので。その場合は3冠を狙っていきたい」(保田)
「世界に行けるチャンスなので、まずはしっかり勝ちたい。話があれば、日本も獲りに行きたいし、(宿敵の)三代とやってほしいという声がいっぱいあるので、視野に入れながら」(宇津木)
今年4月に仲里周磨を下し、スーパーフェザー級の東洋太平洋王座に続き、1階級上の日本王者となった三代も積極的に「ベルトを3つ集めたい」と意思表示してきた。
「僕にとっても、宇津木選手にとっても、この試合は世界につながる大切な一戦」
9月24日の発表会見で、保田が宇津木との2冠戦の位置づけを語ったように、実力派の3人の王者がそれぞれのベルトをかけ、“ハイリスク・ハイリターン”の直接対決に意欲を示すのにはわけがある。
現在のライト級は、WBA王者にジャーボンテ・デービス、WBC王者にシャクール・スティーブンソン(いずれも米)、IBF王者にワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と世界的なスター選手が王座に君臨し、マーケットの中心はアメリカ。保田がWBO6位、三代がIBF10位と各1団体で世界ランクに入り、挑戦資格を有しているとはいっても、おいそれと挑戦できるわけではないのが現実だ。
世界に向けては、地域タイトルを束ねることでランキングを上げ、団体を広げ、世界挑戦者決定戦を含めた可能性を高めること、国内に向けては、真の日本最強を証明することで、難関のライト級で世界に挑む実力をアピールする戦いになる。
アジア2冠を制するのは――
発表会見で保田(左)と宇津木がフェイスオフ。まだ試合2ヵ月前、両者の人柄も相まって、照れ笑いが浮かぶ(2024年9月24日) 【写真:船橋真二郎】
カウンターが得意な懐の深いサウスポーで、アクションの少ないことが課題だったが、ここ2戦はTKO、KO防衛中で少しずつきっかけをつかみつつある。
宇津木はアマチュア時代、主要タイトル獲得歴こそなかったものの、花咲徳栄高から平成国際大、社会人にかけて通算108戦(81勝)ものキャリアを積んだ。2022年2月、プロ10戦目で鈴木雅弘(角海老宝石)との王座決定戦を制して日本王者となり、2度の防衛にも成功した。
昨年4月に初黒星となるKO負けで日本王座を明け渡すも、今年7月、東洋太平洋王者となっていた鈴木を返り討ちにした。これが初防衛戦になる。攻守のバランスに優れたプレッシャー型で、テンポとパワーを兼ね備えたコンビネーションで相手を切り崩す。
保田は王座奪取の1ヵ月前から本格的に組んだ元オリンピアンの鈴木康弘トレーナーが課すハードトレーニングで、心身ともども鍛えられてきた。この1年半、積み上げてきた成果を発揮できるか。
宇津木は9月に待望のラスベガス合宿が実現。参考にする選手のひとりに挙げてきた井岡一翔(志成)を指導するイスマエル・サラス・トレーナーに師事し、1階級上の現役WBC世界スーパーライト級王者、アルベルト・プエジョ(ドミニカ共和国)とスパーリングするなど、「より自分のスキルが上がる合宿になった」と手応えを語っていた。
まずは宇津木が仕掛け、保田が迎え撃つ構図が軸になると予想される。ともに世界をアピールするには手堅く勝つだけでは十分ではなく、相応のインパクトが求められると理解しているはず。序盤の駆け引きをどちらが抜け出していくか。注目である。