王者のプライドをかけ、保田克也と宇津木秀が激突 大型ホープ・今永虎雅と対する齊藤陽二の意地――ライト級の戦いに注目【11月のボクシング注目試合】

船橋真二郎

日本の女子世界王者2人がドイツ遠征

WBA・WBO女子世界アトム級王者の松田恵里(左)と鳥海純会長 【写真:ボクシング・ビート】

 23日には、ドイツ・ハイデルベルグでWBA・WBO女子世界アトム級統一王者の松田恵里(TEAM 10COUNT/30歳、7勝1KO1敗1分)がWBC王者のティナ・ルプレヒト(ドイツ/32歳、13勝3KO1敗1分)と3団体王座統一戦を行う。

 今年1月、キャリア3度目の挑戦で黒木優子(真正)を破り、念願の世界王者となったばかりか、2団体王者となった松田。初防衛戦で今度は3つ目のベルト奪取のチャンスをつかんだ。キャリア初の海外選手、初の海外遠征となるが、シミュレーションも兼ねて、9月にメキシコで2週間のスパーリング合宿を敢行したという。

 フットワークを駆使するサウスポーのミッションは、敵地でいかに明白にポイントを取っていくか。中学3年の頃、体験でジムに入ったときから指導を受ける鳥海純会長と日本女子初の3団体統一王者を目指す。

 松田と同日、同会場では、元WBO世界ミニマム級王者の山中竜也を兄に持つIBF女子世界アトム級王者の山中菫(真正/22歳、8勝3KO無敗)が、ルプレヒトに世界王座を追われた前WBC王者のファビアナ・バイトイキ(チェコ/28歳、21勝5KO1敗2分)を挑戦者に初防衛戦に臨む。

 山中は身長146cmと小柄ながら、“パワフル”なサウスポー。WBC王座を4度防衛した実力者を相手に持てる力を存分にぶつけたい。

 アトム級の王者が一堂に会し、勝者が4団体統一戦に進む可能性は十分ある。日本人王者の連勝なるか。

強打の王者の完全復活なるか

3度目の防衛戦に臨む日本スーパーフライ級王者の高山涼深 【写真:船橋真二郎】

 新人ボクサーの登竜門である「新人王トーナメント」が東西で大詰めを迎える。3日の後楽園ホールでは東日本新人王決勝戦(「U-NEXT」でライブ配信)、10日の大阪・エディオンアリーナ大阪第2競技場では新人王西軍代表決定戦が行われる。全12階級の東西代表は12月21日、後楽園ホールで開催される全日本新人王決定戦で激突。2024年の新人王が決まる。

 12日の後楽園ホールのメインは、日本スーパーフライ級王者・高山涼深(たかやま・すずみ、ワタナベ/28歳、8勝7KO無敗)の3度目の防衛戦。挑戦者に同級12位の青山功(セレス/35歳、14勝4KO12敗1分)を迎える。

 この一戦は当初、7月に予定されていたが、高山の急性胃腸炎で中止となり、4ヵ月後に仕切り直されたもの。駿台学園高、法政大出身で強打を誇るサウスポーの王者優位は動かしがたいが、ここ最近は強打頼みの荒い試合が目立つ。完全復活に期待したい。

 元IBF世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑と同い年で、セレスジム現役最古参となるベテランの青山は念願のタイトル初挑戦。デビューから15年分の思いも込め、王者に食い下がりたい。

 この日のセミは、ミドル級の最強挑戦者決定戦。日本同級1位の友松藍(RK蒲田)と同2位の京原和輝(博多協栄)が初のタイトル挑戦権を争う。宇津木秀と平成国際大の同期で全日本選手権ライトヘビー級覇者の友松に対し、叩き上げの京原は王者経験者との対戦が豊富。拮抗した戦いが予想される。試合は「FOD」でライブ配信される。

韓国で激闘必至のダイレクトリターンマッチ

初戦は劇的な初回逆転KO勝ちで帝尊康輝がユン・ドクノを下した 【写真:ボクシング・ビート】

 22日、大橋ジムが継続してプロモートしている「フェニックスバトル・ソウル」が韓国・江南で開催。現・WBOアジアパシフィック・スーパーミドル級王者の帝尊康輝(たいそん・こうき、一力/31歳、17勝14KO5敗3分)と前王者のユン・ドクノ(韓国/29歳、8勝6KO2敗)がダイレクトリターンマッチで対戦する。

 前戦、6月の後楽園ホールでは王者のユンにサウスポーの帝尊が挑戦。いきなり初回に倒され、窮地に陥ったが、起死回生の一撃で痛烈に倒し返し、劇的な逆転KO勝ちを飾った。立場と場所を入れ替えた再戦も激闘必至。また武居由樹のキック時代の後輩で、ヘビー級の星龍之介(大橋)のデビュー戦も行われる。

 24日の大阪・堺市金岡公園体育館では、フェザー級の最強挑戦者決定戦が行われる。日本同級王者の松本圭佑(大橋)への挑戦権を同級1位の殿本恭平(勝輝/29歳、16勝8KO4敗1分)、同2位の大久祐哉(金子/28歳、8勝5KO 1分無敗)が争う。

 殿本はコロナ禍の2020年7月、無観客試合で当時の東洋太平洋王者でロンドン五輪銅メダリストの清水聡(大橋=引退)に挑戦して以来、2度目のタイトル挑戦を目指す。中央大出身で3連続TKO中の大久はプロ初の遠征試合で初の挑戦権をつかみに行く。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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