ヘルナンデスの満塁弾で猛追も、大谷が悔恨する「最後まで訪れなかった“あと少しの流れ”」【地区シリーズ第3戦】
10月8日に行われたドジャースとパドレスによる地区シリーズ第3戦、三回にテオスカー・ヘルナンデスが放ったグランドスラムで生還し、ダグアウトで祝福される大谷翔平 【Robert Gauthier / Los Angeles Times via Getty Images】
「せめてファウルにできればよかった」
1点を追う八回、大谷がこの試合で3度目となる先頭で打席に入ったが、三振。このとき、勝利の行方は、大きくパドレスに傾いた。
決してスコットが、あのコースを狙ったわけではない。ストレートを立て続けにファールされ、苦し紛れのスライダー。捕手の構えは外角低めだったが、高く浮いた分、大谷の想定になかった。
ただ、「その前の直球2球もちょっと甘かったので、もちろんそれを打てるのが一番よかった」と大谷。ベンチに下がって険しい表情を見せたのは、審判の判定というより、打ち損じた自分への苛立ちか。
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「日本は盛り上がっているのか?」
ドジャースとパドレスの地区シリーズ第3戦が始まるおよそ4時間半前のこと。ドジャースの早出守備練習が終了すると、引き上げてきたクレイトン・マッカロー一塁コーチ(ドジャース)がカバンから、ゴルフで使う距離測定器を取り出して、ホームベースの上に立った。
何をしているのか?
「一応、フェンスまでの距離を確認している。一部しか、表示されていないから」
通常、飛距離の表示は、両翼、中堅、左中間、右中間の4箇所。その数字からは分からない外野フェンスの膨らみを測っていたのだ。
「まあ、ここはシーズンに何度も来るから必要ないけど、習慣かな」
そんなやり取りが終わると、おもむろに聞かれた。
「日本では、何時から試合が始まるの?」
現地時間は、午後6時8分開始なので、日本は午前10時8分。
「みんな、見るのか?」
残念ながら平日なので、テレビの前で、というケースは限られるかもしれないが、今は、視聴方法が多様化。電車の中でも、ネットに繋げば見られる。
「そうだな」
「盛り上がっているのか?」とも聞かれたが、大谷とダルビッシュ有(パドレス)が戦っているのである。盛り上がらないはずがない。
「別のスパイスが加わったし」と返すと、マッカローコーチは笑った。
「とっとと引っ込め」荒れた第2戦
荒れた展開となった第2戦の六回、パドレスのマチャドはダグアウトでチームメイトを集めて檄を飛ばした 【Photo by Matt Thomas/San Diego Padres/Getty Images】
左翼席のファンとジュリクソン・プロファー(パドレス)。右翼席のファンとフェルナンド・タティスJr.(パドレス)。マニー・マチャド(パドレス)とジャック・フラーティ(ドジャース)。そして、マチャドとデイブ・ロバーツ監督(ドジャース)。
六回表、フラーティがマチャドから空振り三振を奪うと、汚い言葉を使って「とっとと引っ込め」と罵った。
そのイニングが終わっても、マチャドは三塁から、フラーティは三塁側のダグアウトからやり合っていたが、それにはまた別の理由があった。
マチャドがドジャースベンチに向かって――ロバーツ監督のすぐ近くにボールを投げたのである。そのことに対し、フラーティはキレたのだった。
10月7日の会見。思い当たる節はあるかと聞かれたロバーツ監督は、「ジャックがマチャドを三振にとった後、二人が少しやり合っていたが、その光景に対して首を振ったからかな」と答えた。
「意図的かどうか分からない。でもそうだとしたら、敬意を欠く行為だ」
ドジャースは映像をリーグに送って、調査を依頼したそう。
10月8日の試合前、そのいきさつについて聞かれたマイク・シルト監督は、「過去のことにいつまでこだわっているなんて、残念だ」と話し、それは誰に向けられたものか分からないが、火に油を注ぐ形になった。
物議を醸した「バナナのような」マチャドの走塁
第3戦ではマチャド(パドレス)の走塁が物議を醸した。試合後、両チームの選手、監督がこのプレーに対する私見を述べた 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】
試合前の選手紹介でロバーツ監督が紹介されると、凄まじいブーイング。かつて、パドレスで活躍した彼に対しても、容赦なかった。
試合が始まると、「BEAT LA!」「BEAT LA!」という合唱が響き渡り、それは初回、ムーキー・ベッツ(ドジャース)が先制本塁打を放って、一時的に収まったが、二回、パドレスが一挙6点を奪うと、最高潮に達した。
その二回、再びマチャドが物議を醸している。先頭の彼がヒットを打って出塁。続くジャクソン・メリルの一塁ゴロを処理したフレディ・フリーマンが二塁へ送球。しかしこの時、マチャドが大きく内側へ蛇行し、フリーマンと二塁ベースの直線上に入った。結果、送球がマチャドに当たって、無死一、三塁。そこからドジャース先発のウォーカー・ビューラーが乱れ、一挙6点を失った。
ドジャースファンにしてみれば、「汚いプレー」と映ったはず。試合後、マチャド、フリーマン、ロバーツ監督、シルト監督が、それぞれの立場から話をしたが、フリーマンの言葉が一番腑に落ちた。
「自分でも走者ならやるよ。あのバナナのような走塁をね」
一塁手と二塁ベースの線上に体を入れるのは走塁の基本。さすがに今回のように芝生にまで入るケースは少ないが、ロバーツ監督も「頭を使ったプレー」と表現した。
マチャドは、「ボルチモアにいた頃からやっていた」と話した。「後は、二塁にスライディングしないとか。色んな技術がある」
ただ、フリーマンは悔しそうだった。「普通なら、もう少し、内側にステップして投げるんだけど」。倒れ込んで打球を止めたフリーマンは、右足首を痛めていることから、踏ん張って立ち上がることができず、膝立ちで投げた。その分、走者を避けるような送球ができなかったのだ。
「送球そのものは、決して悪くなかったんだけど」