MLBポストシーズンレポート2024

ヘルナンデスの満塁弾で猛追も、大谷が悔恨する「最後まで訪れなかった“あと少しの流れ”」【地区シリーズ第3戦】

丹羽政善

好投を見せた両チームのリリーフ

大谷翔平は三回、バットを折りながらセンター前にヒット。チャンスを広げた 【Photo by Harry How/Getty Images】

 さて、二回を終えて6対1。早くも試合に決着がついたかと思いきや、翌三回表、ミゲル・ロハス、大谷、ベッツの3連打で、無死満塁。1死後、テオスカー・ヘルナンデスがセンターに満塁本塁打を放ち、1点差に。

 二回が終わったあと、ダグアウトでウォータークーラーを放り投げるなど暴れたビューラーが三回以降は立ち直り、0を並べた。六回からは3人のリリーフ投手が、パドレス打線をパーフェクトに抑えた。

 そこだけを切り取れば、完全にドジャースに流れが傾いている。

 ところが、ドジャース打線も四回以降は1安打。五回、大谷が放ったセンターへの打球も、あとひと伸びがなかった。

「あそこも入ってくれたら、ゲームを戻すいい一打になったと思うんですけど、あと少しのところだった」

 その言葉が、中盤以降のもどかしさを代弁する。

 ただ、試合を振り返って大谷は、「ミスも絡んで嫌な雰囲気でしたけど、そこから盛り上がって盛り返してあそこまでいけたというのは一番、自信にしていいと思う」と話し、「あと少しの流れさえつかめていれば十分に勝つチャンスはあった」とポジティブに展開を受け止めていた。

 しかしながら、“あと少しの流れ”は、最後まで訪れることはなく、5番以下はわずか1安打。大谷は、この日も得点圏に走者を置いて立たせてもらえなかった。

あくまで前を向く大谷、ベッツら

第3戦、初回にソロホームランを放った、ドジャースのムーキー・ベッツ。この試合で2安打を放ち、復調を印象付けた 【Robert Gauthier / Los Angeles Times via Getty Images】

 これでドジャースは1勝2敗。いよいよあとがなくなった。1勝1敗で第3戦を勝ったチームが、そのままシリーズを制する確率は73%(62回中45回)。現在の2-2-1フォーマット(今回の場合、第1戦、第2戦がロサンゼルス。第3戦、第4戦はサンディエゴ。第5戦がロサンゼルス)において、2勝1敗で第4戦をホームで戦うチームが勝ち上がる確率は81%(31回中25回)。そのまま第4戦に勝ったケースは18回となっている。

 そんな不利な状況ではあるものの、大谷は「後がないという感覚自体が、今の僕には特にない」と言い切った。

「もう2連勝したら勝ち。そういうゲームだと思ってやればいいんじゃないかなと思う。ここまで1勝2敗というのは別に考える必要はないですし、単純に2連勝するゲームだと思えばいいんじゃないかな」

 他の選手も同じようなマインドで臨めるのか。ベッツは言った。

「復調してきた?負けは負けだ。プレーオフでは、個人的なことは関係ない。ただ、ワールドシリーズで勝ちたいだけだ」

 明日、パドレスはディラン・シースが中3日で先発する。ドジャースはブルペンゲーム。リリーフを総動員して2勝2敗のタイに持ち込み、舞台をロサンゼルスに移すことに、まずは集中する。2連勝するには、まずは1勝しなければならないのである。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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