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闘志むき出しの三笘がもたらした大逆転劇 2つのラストパスの裏側にあった思考とは…

森昌利

前半で2点のビハインドを負ったブライトンだが、三笘(左)が勝利への執念を露わにしてチームを引っ張り、後半に3ゴール。大逆転でトットナムを破った 【Photo by Sebastian Frej/MB Media/Getty Images】

 10月6日(現地時間、以下同)、ホームにトットナムを迎えた一戦でブライトンが大逆転勝利を飾った。その原動力となったのが三笘薫。2ゴールに絡む活躍で、劣勢に立たされていたチームに価値ある勝点3をもたらした。

「COME ON!」と発して味方を鼓舞した三笘

「覚えてないですけど。うん、そうっすね。そういう一人ひとりのアクションがつながるとは思うんで。やっぱりそういうところからやらないといけないと思います」

 ホームで相手のトットナムに前半だけで2点をリードされた。するとハーフタイムを挟んだ後半開始のホイッスルが鳴る直前、左サイドに張った三笘薫がピッチの中央、つまりチームメイトのほうを向いて「COME ON!」と言いながら両手を下から振り上げた。

 さあ来い、みんな! さあ行くぞ!と、三笘がチームを叱咤激励したのだ。

 ブライトンで今季が3シーズン目。27歳になった日本代表MFが、プレミアリーグの舞台で闘志をむき出しにした。クールで、スタイリッシュな三笘が、こんなふうになりふり構わず自分をさらけ出すのを見たのは初めてだった。

 しかし試合後、三笘はそんなゼスチャーをして味方を鼓舞したことを「覚えてない」と言った。しかし「やっぱり、そういうところからやらないといけないと思います」と語って、自然ににじみ出た闘志を説明した。

 そして“あの活躍”を見せた。0-2と2点をリードされて、ブライトンは一刻も早く1点差に迫りたかった。1-2となればがらっと戦局が変わる。そのきっかけを作ったのが三笘だった。

むき出しの闘志の裏には冷静さも

後半3分の追撃弾、その10分後の同点ゴールはいずれも三笘(左)のパスから生まれた 【Photo by Sebastian Frej/MB Media/Getty Images】

 理想の時間帯に1点を返した。後半が始まってわずか3分、今季ニューカッスルから3000万ポンド(約59億4000万円)でブライトンに加入した20歳のガンビア代表FWヤンクバ・ミンテが左足を巻き込むように振って、反撃の狼煙(のろし)を上げる1点目を奪った。

 三笘が左サイドから左足で放ったクロスがファーサイドのミンテに届いて生まれたゴールだった。トットナムDFのディスティニー・ウドジェが触っていなければ、三笘にアシストがついていた。

 さらにこのゴールの10分後の後半13分、左サイドからやや中央に入った三笘が、後半の頭から出場した左サイドバックのペルビス・エストゥピニャンからのパスを足元に収めると、この試合でトットナムの主将を務めたアルゼンチン代表DFクリスティアン・ロメロが右足を伸ばしたタックルより一瞬早く、流れるように、ゴール方向に走るジョルジニオ・リュテールにパスを送った。こちらもまた今季加入の22歳フランス人FWは、このボールを右足でコントロールすると、左足でミートしてネットを揺らし、ブライトンが同点に追いついたのである。

 この三笘の完璧なラストパスにはしっかりアシストがついた。

 そしてさらに8分後、後半開始直前の三笘が飛ばしたゲキに呼応したかのように、同点弾を決めたリュテールがエンドラインを今にも割りそうだったルーズボールを諦めずに追い、スライディングしながら右足でクロスを放つと、ゴール前のダニー・ウェルベックがどんぴしゃりのタイミングで頭を合わせて3点目を奪取。ブライトンが逆転に成功した。

 ところが三笘はこの驚くべき逆転劇の要因が「相手の守備の強度というか、集中力が切れたのはすごくあると思います」と話すと、「相手は連戦なんで」と続けて、週中の木曜日にヨーロッパリーグのアウェー戦をハンガリーで戦ったトットナムの日程にあったと言った。しかし、「サポーターの1点入ってからの声援もすごかったですし、それ(相手が連戦の影響で疲れていたこと)でスペースもありました。キープするところとやりきるところは考えてました」と続けて、しっかりと状況判断をしながら後半をプレーして結果を出したことも明かした。

 いけると判断すればいく。難しいと思えば、しっかりボールをキープする。後半、闘志をむき出しにした三笘のパフォーマンスの裏にはこうした冷静さも備わっていたということだ。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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