現地発! プレミア日本人の週刊リポート(毎週水曜更新)

際立っていたNo.6鎌田の出足の速さ 三笘のすごさが凝縮された絶品ファーストタッチ

森昌利

鎌田はマンU戦でプレミア初のフル出場。本職のトップ下ではなく、2センターハーフの一角で奮闘した 【Photo by Sebastian Frej/MB Media/Getty Images】

 クリスタルパレスの鎌田大地は、9月21日(現地時間、以下同)のマンチェスター・ユナイテッド戦でプレミアに来て初めて90分間を戦い抜いた。相手に押し込まれる苦しい展開だったが、中盤の底で体を張り続け、チームに貴重な勝ち点1をもたらしている。一方、22日のノッティンガム・フォレスト戦に臨んだ三笘薫は好調をキープ。格下相手のホームゲームで2-2の引き分けと悔しい結果に終わったが、高度なスキルを次々と繰り出して地元サポーターを沸かせた。

三笘の言葉通りの資質を見せた鎌田

「頭がいい選手ですし、走れる選手です。攻守において、本当に考えてポジショニングを取っているのがわかります。代表で一緒にやっていて、本当にやりやすい。そういういろんな人をつなぐ役割というのは本当にすごいと思います」

 今季初めて鎌田大地の試合に出かけた。試合後の取材が楽しみだった。

 相手は強豪マンチェスター・ユナイテッド。前節のレスター戦がベンチスタートだったので、まずは先発してくれと願った。キックオフ1時間前に配布されたチームシート(先発メンバー表)に「Daich Kamada」の名前を見つけた。第一関門突破。結果は0-0のドロー。負けはしなかった。そして鎌田はこの試合でクリスタルパレス移籍後初となる90分フル出場を果たした。

 よし! これで話ができる!

 試合後、取材ができる条件は整っていたはずだった。しかし28歳の日本代表MFはミックスゾーンに姿を現さず、筆者は無念の思いでクリスタルパレスの本拠地セルハースト・パークを後にした。

 冒頭のコメントはその翌日にブライトン戦を取材して、三笘薫が語った鎌田評である。鎌田はマンチェスター・U戦で三笘が発言した通りの資質を見せた。

鎌田は左右に動いて最終ラインの左半分をプロテクト

前半はほぼ防戦一方。鎌田は中盤の底で守備に追われたが、自分がやるべき仕事をしっかりこなしてマンUにゴールを許さなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 マンチェスター・Uは試合開始直後から果敢に押し上げてきた。前半は完全にアウェーチームが優勢の試合。クリスタルパレスは3-4-2-1の布陣で対抗したが、最初の45分間は常に押し込まれ、記者席から見たフォーメーションは5-2-3。鎌田は豊富な運動量で左右に動き、ウイングバックが全く上がれず、5バックの陣形が続いた最終ラインの左半分をプロテクトした。

 完全なるNo.6。守備面の負担が大きい役割だった。

 前半を見て、不安を抱いた。というのも筆者の鎌田のイメージは攻撃的センスのあるMFで、トップ下が最適のポジションだと思っていたからだ。それまでに鎌田を生で観たのは、フランクフルト時代の2022年10月12日に行われたトットナムとの欧州チャンピオンズリーグ。鎌田はトップ下に入り、ゴール前に飛び込んで見事な先制点を奪っていた。

 それなのにこの試合では中盤の底までポジションを下げ、近年は不振とはいえ、スピード、フィジカル、スキルの三拍子揃ったマンチェスター・U攻撃陣と対峙しなくてはならない。

 しかも相手は開幕4戦で早くも2敗を喫し、エリック・テン・ハグ監督に多大な重圧がかかっている。つまり勝とうと必死なのだ。

 案の定、マンチェスター・Uは前半4分にこの試合初のコーナーキックを奪い、今夏バイエルン・ミュンヘンから加入したオランダ代表DFマタイス・デ・リフトが頭を合わせて枠を捉えると、同10分にはスルーパスに抜け出したアレハンドロ・ガルナチョが左足を振ってオン・ターゲットのシュートを放った。

 この2本の危険極まりないシュートはマンチェスター・Uユース出身で、昨夏にクリスタルパレスに完全移籍したGKディーン・ヘンダーソンが見事にセーブ。しかしこの幕開けが象徴するように、前半はマンチェスター・Uが完全に試合を支配した。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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