祝結婚&誕生日! ロコ・ソラーレ吉田夕梨花、夫の好きなところは「いっぱいあるけれど、いちばんは……」
昨年同様、今季もアドヴィックスカップが初戦になりそうだ 【(C)北海道カーリングツアー】
姉の知那美が所属先のネッツトヨタ北見のホームページに寄稿したコラムによると、七夕に生まれた彼女の名前は「夕子」と書いて「バタコ」というプランがあったそうだ。父・修一さんの尖りまくった命名センスが暴露されていたが、それはともかく、ロコ・ソラーレの最年少選手も31歳になる。
ロコ・ソラーレ発足が発表された2010年夏、吉田夕梨花は17歳になったばかりの高校2年生だった。
本橋麻里というカーリング界のアイコンに誘われたはいいが、「お金をいただいて、あるいは活動を金銭面でサポートしてもらってカーリングすることに慣れなかった」と本人が当時を振り返ってくれたことがある。
意訳すると、スポンサーへの接し方、メディアやファンの目が集まることへの戸惑いなど「カーリングで食べていく」という環境がまだ10代の高校生にはなじまなかったのだろう。盟友の鈴木夕湖が「うちらはかなりのクソガキだったと思う」と反省と自虐と本橋への感謝をことあるごとに口にしていたが、誇張ではなさそうだ。
しかし、吉田夕梨花本人が札幌での大学生活や医療法人社団美久会の勤務を競技と両立させ続けているうちに「ちょっとは大人になれたと思う。自分自身がどんどん変わっていくのは面白く感じた」と振り返るように、キャリアを重ねてトロフィーも増えていく。世界選手権や五輪を経て、淡々と堅実にチームに有益な情報をもたらす、世界屈指のリードとして大成した。
また、その間、5ロック、ウィックショットの有効活用あるいは制限といった、ルール変更やゲーム性の変化もあった。特にフロントエンドはプレーの幅も質も柔軟に求められることになったが、「それでも私はできることをしていくだけ」と、アイスリーディングの基準となる有効な1投をチームのために投げ続けた。
友人として好きな選手は大勢いるけれど、憧れのカーラーも参考にしているリードもいない。職人気質、頑固者、一途、孤高etc.……。彼女を表現するとそんな言葉が並ぶ。
それだけに彼女が入籍し、家庭を持つニュースはポジティブな驚きに満ちていた。
伴侶であり同士
そんなマイペースな性格であるがゆえに、将来や結婚について「結婚という形には縛られたくないという気持ちもある。自分のタイミングで幸せを見つけられたらいい」と語っていたこともある。
シーズンの大半は海外で過ごし、国内にいても合宿や大会に時間を費やす。パートナーとの時間を確保し、それを理解してもらう。簡単ではないはずだが、伴侶となったスピードスケートの新濱立也選手も同様の競技生活を過ごす同志なのだ。
道東の別海町という小さな町に生まれ、そこから世界に挑み続ける冬季競技のアスリート。ストイックに強化に邁進するスタイルやよく笑うところも共通している。違うのは30センチ差の身長くらいだろう。
国内外で多拠点での新婚生活となるが、彼女は夫の好きなところは「たくさんあるけど一番は、なにがあっても毎日超ご機嫌なところ」と照れ笑いを隠し切れずに挙げてくれた。なかなか会えなくてもお互いの存在自体が“超ご機嫌”な理由となり、メンタル面でも競技生活がさらに充実したものになってゆく。
取り巻く環境は変わっても
今季は2026年に控えたミラノ・コルティナダンペッツォオリンピック出場に関わる重要なシーズンとなる。イタリア行きのためには、来年2月に横浜で開催される日本選手権は落とすわけにはいかない。
願った成績に届かなかった昨季、国内では若手が台頭し「世代交代」という言葉、あるいはロコ・ソラーレの捲土重来を願う声が多数、聞こえてきた。
果たして17歳の夕梨花には、この変化を思い描くことはできなかっただろう。チームは高いステージに上がり、カーリングはより注目と声援を集め、自身は五輪のメダルを手に入れて、新しい家族もできた。
ただ、カーリングと彼女を取り巻く環境は変わっていったが、彼女自身も芯の強さや目指すところは実は大きく変わってはいない。来る重要なシーズンもチームのためにいつもどおり淡々と有益なショットを決めてゆく。むしろそんな姿しか想像できない。
吉田夕梨花選手、ご結婚とお誕生日おめでとうございます。近々、改めてお祝いをさせてください。
入籍発表前に相棒の鈴木夕湖を巻き込んだ、ちょっとした、しかし安定のすべらないアクシデントがあったと小耳にはさみましたので、それもぜひ聞かせてください。今季もよろしくお願いします。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ