日本代表初選出も「サプライズ」ではない 望月ヘンリー海輝が持つオンリーワンの可能性
望月ヘンリー海輝(町田)が代表初招集を受けた 【(C)FCMZ】
27名中20名がヨーロッパのクラブに所属する選手で遠藤航、久保建英ら定番メンバーも顔を揃えている。冨安健洋は負傷で招集外となったが、三笘薫と伊東純也の復帰は代表サポーターにとっては嬉しいニュースだろう。
今夏のパリオリンピックに参加したU-23代表メンバーからはDF高井幸大、FW細谷真大が招集されている。最年少の高井とともに代表初選出となるのが、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)だ。ヘンリーの愛称で親しまれる彼のメンバー入りは、多くのメディアやファンからサプライズとして受け止められている。
アスリート性は世界レベル
高校時代からプロ入り後まで望月を観察している筆者にとって、招集はそれほどサプライズでなかった。特に2024年4月以後のパフォーマンスと成長曲線を見て、いずれ日本代表に入るべき選手だと確信していた。今回は橋岡大樹の負傷もあり、森保一監督はここで試してみようと判断したのだろう。
近年の日本サッカーは、右SBにアスリート性が高い選手を配置する例が多い。2023年卒の関東大学サッカーリーグに限っても望月、モヨマルコム強志(藤枝MYFC)、長澤シヴァタファリ(水戸ホーリーホック)といった大型のアスリート系SBが目立っていた。パワー、勢いでサイドの「アクセント」となり、攻撃の幅と深みを作れるタイプだ。
まず望月の走力はJ1でもトップレベルだ。スピードにも様々な種類はあるが、望月は10メートル、20メートルとスプリントが「伸びる」タイプ。また1試合の走行距離が長く、上下動を繰り返せる持久力の持ち主でもある。
跳躍力も圧倒的だ。このレベルになるとヘディングには技術と駆け引きが必要で、望月はセットプレー時などのヘディングにまだ改善点がある。とはいえ「身長+跳躍力」の合計は走力と同様にJ1最高レベルだろう。フィジカル面はSBとして理想的で、間違いなくワールドクラスだ。
さらに素晴らしいロングスローの持ち主でもある。もっとも望月がロングスローを投げる側に回ると、そのヘディングが活きないジレンマがあり、実戦ではあまり投げていない。
国士舘大3年夏の全国大会でブレイク
「高さ」は圧倒的な武器になる 【(C)J.LEAGUE】
ただ国士舘大進学後に、望月は台頭した。大学3年夏の第46回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントでは、右SBのレギュラーとして全国制覇に貢献している。当時の彼は内側のスペースから攻め上がり、エリア内にも飛び出すユニークな攻撃参加をしていた。
プレーは明らかに粗削りで、先輩MFが献身的なカバーリングで望月を「自由に動けるようにしてあげている」状況が見て取れた。本人も大阪学院大との決勝戦における自らのプレーを「最低だった」と後に振り返っていた。それでも筆者が望月の強烈な可能性に気づいた試合だ。
そこから大学3年冬、4年夏と徐々に「SBらしさ」が増していく。どこに飛ぶか怪しかった右足クロスもそれなりの精度が出るようになり、大学4年の5月には町田の内定も発表された。もっとも当時の町田はJ2だったし、争奪戦になるような評価は受けていなかった。
プロ入り直後は壁に苦しむ
監督やコーチ、先輩のサポートを得ながら成長を遂げている 【(C)J.LEAGUE】
ただしチームと黒田剛監督からは「望月にチャンスを与えよう」という意図が当初から感じられていた。J1開幕戦のガンバ大阪戦(2月24日/1-1△)は味方に退場者が出た中でサイドハーフとして途中起用された。決していい出来ではなく、その後はしばらくJ1では出番がなかった。
3月10日のトレーニングマッチではJ3・SC相模原相手に苦しいプレーに終始。硬い表情でコーチからフィードバックを受けていた様子をよく覚えている。「壁があるな」「少し時間はかかるな」というのが、その時点の予想だった。
しかし適応と成長のスピードは想像以上だった。望月は4月14日のヴィッセル神戸戦で途中出場のチャンスを得ると、同21日のFC東京戦では先発に抜擢。先制点をアシストするなど、勝利に貢献するプレーを見せた。
ここまで28試合中11試合に先発していて、見た試合によって「なぜ望月が代表なのか?」という感想を持つ人もいるだろう。ただ、いい出来の彼は手のつけられないプレーをする。