フェルスタッペンもいなくなり、2年後のレッドブルF1はBチームに転落する?

柴田久仁夫

スペインGPの勝利を祝うレッドブル。しかしとても圧勝とはいえない内容だった 【©️Redbull】

もはやレッドブルに、去年までの絶対的な優位はない

 第10戦スペインGPも、マックス・フェルスタッペンが優勝した。これで今季は10戦7勝。選手権2位のランド・ノリスに70ポイント近い差をつけ、数字の上では四連覇に向けて順調に勝ち進んでいるように見える。

 しかし実態は、かなり危うい状況というべきだろう。シーズン序盤こそ開幕5戦4勝。落としたレースはブレーキトラブルでリタイアしたオーストラリアGPだけだった。だが第6戦マイアミGPではノリスに初優勝を許し、モナコGPは6位と惨敗。続くカナダは勝ったものの、週末を通じてマシンバランスに苦しみ、セイフティカーのタイミングで拾った勝利だった。

 ここまでの10戦を通じて明らかになったのは、「もはやレッドブルに、去年までの絶対的な優位はない」という事実だ。モナコ、カナダでの苦戦は超低速コーナーとか高い縁石など、レッドブルの苦手なコース特性ゆえという見方もあった。

 ところが得意なはずの今回のカタルーニャサーキットでのレースも、薄氷の勝利だった。フェルスタッペンの奮闘がなければ、望めない勝利だったことは間違いない。

 開幕序盤はフェラーリが、第5戦以降はマクラーレン、そしてここ1、2戦はメルセデスが、一気にレッドブルとの差を詰めてきた。グランドエフェクトカーが導入されて3年目。F1の勢力図は劇的に変わりつつある。

首脳陣の確執で、チーム内はガタガタに

サウジでの1-2勝利を祝うマルコ博士(左)とホーナー代表(右から2人目)。すでにこの時、二人は舞台裏で激しい権力争いを繰り広げていた 【©️Redbull】

 レッドブルがここまで追い詰められているのは、もちろんライバルチームの戦闘力が向上したことも大きい。しかし同時にレッドブル自体に、かつての強さもなくなっている。

 それにはさまざまな要因があるが、中でもクリスチアン・ホーナー代表とヘルムート・マルコ博士、二人の首脳の長く続く確執が、チーム内をガタガタにしているのは確かだ。

 二人はつい最近まで、チーム代表と最高顧問という立場で、協力してチームの躍進を支えてきた。しかしレッドブルの共同創業者でマルコ博士の友人でもあったディートリヒ・マテシッツが2年前に亡くなると、主導権争いが表面化した。

 今年2月にはホーナー代表による、女性従業員への「不適切な行為」が発覚。一時はホーナー代表の解雇も確実視された。ところがその後、内部情報を流出させたとして、マルコ博士の去就問題に発展。最終的に二人ともチームにとどまることになり、ホーナー代表のセクハラ疑惑もお咎めなしとなった。

 この騒ぎで明らかになったのは、この種のスキャンダルがあっさり表に出てしまうほどに、今のレッドブルはチーム内統治がうまくいっていないという事実だ。そんなゴタゴタに嫌気がさしたスタッフも少なくない。かつてはライバルチームからどんなに好条件のオファーを受けてもレッドブルに忠誠を誓い続けた設計者のエイドリアン・ニューウィが退団を決めたのも、まさにこの理由からと言われる。

 ホンダとの密接な協力関係も含め、かつてのレッドブルの強さはチーム全体の一体感あればこそだった。しかし今は急速に、チーム内の求心力が低下しているように見える。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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