【週刊ドラフトレポート#12】栗山氏も注目する大分の逸材・狩生聖真 球速は全国屈指!パワーピッチャーの井上剣也
6月22日の北海道、沖縄を皮切りに続々と幕を開ける夏の高校野球地方大会。今回は大分と鹿児島で注目を集めている本格派右腕2人を紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)
*現時点のレベルバロメーター:
★★★★★5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆3:2位以上の可能性あり
★★☆☆☆2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆1:育成であれば指名濃厚
「高い将来性が魅力!栗山英樹氏も視察に訪れた大分の逸材」
スタミナやフィジカル面の強化によって大化けも期待できる狩生 【写真提供:西尾典文】
【将来像】高橋光成(西武)
まだ細身だが、体ができれば高橋に近いスケールの投手になる可能性が高い
【指名オススメ球団】オリックス
細身の高校生投手を多く育ててきた実績から
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚
大分商で長く指揮を執り、源田壮亮(西武)や森下暢仁(広島)など多くの選手をプロに輩出した実績を持つ渡邉正雄監督が2022年4月に就任した佐伯鶴城。その年には古川雄大(西武)がいきなりドラフト2位で指名を受けているが、そんなチームで今年プロのスカウト陣から高い注目を集めているのがエースの狩生だ。中学時代は地元佐伯市の軟式野球部でプレーしており、決して評判の高い選手ではなかったという。しかし高校入学後にメキメキと頭角を現し、昨年夏の大分大会では140キロを超えるスピードをマーク。県内だけではなく、九州全体でも一躍注目の存在となった。春先に九州担当のNPBスカウトと話したときにも、「紅白戦で145キロが出ていました。見ておいた方がいいですよ」と教えてもらった。
春の県大会は準々決勝で敗れて九州大会出場を逃し、ようやく実際にピッチングを見ることができたのは5月3日に行われた宮崎商との練習試合だった。ちなみにただの練習試合ではなく、毎年大分に九州各地の強豪が集まって行われている「中九州ベースボールウイーク」という取り組みがあり、関係者にはスケジュールが公開されていたこともあって、会場となった佐伯中央病院スタジアムには20人近いスカウト陣が集結。今年から日本ハムのCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)に就任した栗山英樹氏も姿を見せており、その注目度の高さがうかがえた。
相手の宮崎商は春の県大会と九州大会の7試合で合計56点をたたき出している強力打線を誇るチームだが、そんな相手にも狩生は4回まで無失点と好投。5回に味方のエラーも絡んで1点を失い、6回には集中打を浴びてさらに4失点と最終的には6回を投げて5失点で降板となったが、ポテンシャルの高さは十分感じられる内容だった。まず目立つのが長い手足を持て余すことなく使い、力むことなく鋭く腕が振れるという点だ。少しテイクバックで腰を回す動作があるのは気になったが、しっかり軸足に体重を乗せてから踏み出し、ステップ幅の広さも十分にとることができている。肩の可動域が広く、肘の使い方も柔らかいため、ただでさえ長い腕がさらに長く見え、球持ちが良いのも特長だ。この日のストレートの最速は145キロで、アベレージは140キロ台前半とそこまで目立つ数字ではなかったが、指にかかったときのボールの勢いは素晴らしいものがあった。また勝負所でギアを上げ、右打者の内角にも狙って速いボールが投げられるのも魅力だ。
一方で課題と感じたのは変化球だ。120キロ台前半のチェンジアップはブレーキがあったが、スライダーは120キロ程度で曲がりが早く、決め球として使うにはスピードも変化の鋭さも物足りない印象を受けた。大きい変化で打者の目線を変えるようなボールもなく、そのことも中盤につかまった原因と言えるだろう。またタイミングを外そうとして、走者がいなくてもクイックで投げるなどの工夫も見られたが、少し小手先のテクニックに頼った感は否めなかった。
この日のピッチングを見る限りでは上位候補と呼ぶには少し力不足という感じだったが、担当スカウトの話しではリリーフで短いイニングを全力で投げたときのボールは素晴らしいものがあるという。体もまだまだ細いことを考えると、スタミナやフィジカル面の強化によって大化けも期待できるのではないだろうか。夏にさらなる進化を遂げた姿を見せてくれるかに注目したい。