週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#12】栗山氏も注目する大分の逸材・狩生聖真 球速は全国屈指!パワーピッチャーの井上剣也

西尾典文

「この春急浮上!スピードは全国屈指のパワーピッチャー」

上背こそない井上だが、出力の高さは全国でもトップクラス 【写真提供:西尾典文】

井上剣也(鹿児島実 3年 投手 178cm/77kg 右投/右打)

【将来像】矢崎拓也(広島)

コンパクトな腕の振りとフォームが重なる。リリーフで大成しそうな雰囲気

【指名オススメ球団】DeNA
若手のパワーピッチャーが不足しているチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 狩生と並んで九州で高い注目を集めているのが鹿児島実の井上だ。地元鹿児島の出身で、中学時代は九州の硬式野球の連盟であるフレッシュリーグの谷山イーグルスでプレーしている。鹿児島実では1年夏に出場した甲子園はメンバー外だったが、2年から主戦となり、昨年夏の鹿児島大会でも3試合に先発。しかし秋は3回戦で21世紀枠の最終候補にも選ばれた鶴丸に1対2で惜敗し、九州大会出場を逃した。

 そんな井上の名前が一気に評判となったのは今年春の県大会での快投がきっかけだ。準々決勝では国分中央を相手に16奪三振で完封。決勝の鹿屋農戦でも12奪三振で完封を記録し、ストレートの最速は151キロをマークしたのだ。続く九州大会でも初戦で東明館を相手に被安打3、2失点で完投勝利をおさめている。ちなみに筆者はこの試合を見る予定だったが、雨で大幅に日程が変更となったことで見ることはできなかった。

 ようやく井上のピッチングを現場で見ることができたのが、狩生のところでも紹介した中九州ベースボールウイークの5月4日に行われた富島との練習試合だった。先発した井上は走者を背負いながらも安定したピッチングを披露。5回を投げて被安打3、8奪三振で無失点の好投でチームを勝利に導いた。特に見応えがあったのが5回の投球だ。立ち上がりは少し慎重に投げているように見えたが、徐々に調子を上げ、この回が最後ということもあってストレートで打者を圧倒し、三者連続三振を奪って見せたのだ。ちなみにこの日最速となる150キロも5回に計測しており、まだまだ余力も感じられた。

 フォームは狩生と比べるとステップが狭く、少し上半身の力に頼っている印象を受けたが、リリースでしっかりボールを抑え込むことができ、抜けるようなボールが少ない。プロフィールの数字を見ても分かるように投手としては決して上背がある方ではないが、上半身も下半身もしっかり鍛えているのがよく分かるたくましい体つきで、体幹の強さも十分に感じられた。また小さいテイクバックでボールの出所を上手く隠しており、それでいながら肘はしっかりと高く上がっているためボールの角度も申し分ない。少し力を抑えながら投げているように見えた試合序盤でもコンスタントに145キロ以上をマークしており、出力の高さに関しては間違いなく全国でもトップクラスと言えるだろう。

 上半身の力が強く、上背がそれほどない本格派投手というと不器用な印象を受けるかもしれないが、変化球もしっかり操れるというのが井上の持ち味だ。この日も8個の三振を奪ったが、ストレートだけでなく小さく変化するスライダー、鋭く落ちるフォークも決め球として使っており、どちらも制球は悪くなかった。課題をあげるとすれば、全体的にリズムが単調になることがある点だ。もう少しボールにも投球にも緩急をつけられるようになれば、ストレートがもっと生きてくるはずだ。

 体格的なスケールがないため、昨年までは狩生に比べると報道されることも少なかったが、この春に見せたピッチングで一躍肩を並べる存在となった印象を受ける。馬力のあるパワーピッチャーはどの球団も需要が高いだけに、夏も高い注目を集めることは間違いないだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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