【赤星憲広のセ・パ展望】阪神にビックリ「正直、最下位にいてもおかしくない」 ソフトバンクの独走に“待った”をかけられるのは?
球団史上初のリーグ連覇を目指す阪神はここまで打撃不振に陥り苦戦を強いられている。岡田監督の手腕が問われる 【写真は共同】
交流戦明け、“混セ”を抜け出すのは…
今年のセ・リーグは正直、開幕前から順位予想が非常に難しかったんです。そこで、戦力の整った阪神、巨人を私は上位に挙げたのですが、フタを開けてみれば、この2チームが思ったように成績を伸ばせなかった。それがより一層、この混戦を招きましたね。(交流戦終了時点で)首位に立っている広島に関しては、もともと投手陣がいいので、上位に来る可能性は十分あると考えていました。実際、序盤戦はチーム防御率がリーグのトップ3で、なおかつチーム打率はワースト3、というチームが途中まで皆、Aクラスにいたんですよ。
――はっきり傾向が出ていたんですね。
完全に“投高打低”でしたね。その中で、広島のチーム打率が上がって、打線がつながり始めた。今、チーム打率(.240)はリーグ2位ですからね。そこが、3ゲーム差を付けて首位に立った大きな要因です。
――では交流戦明け、抜け出すチームは出てくるでしょうか?
正直、抜け出すチームはないかなと思っています。ある程度、この“だんご”状態が続くのではないか、と。というのも過去、交流戦を徹底的に苦手にしてきた広島(12位が過去6回、昨季までの通算成績166勝227敗15分)が、今季は10勝8敗と勝ち越した。抜け出す要素があるとしたら、広島に最も可能性があるんですよ。
交流戦でセ・リーグのトップだったDeNAは、現在チーム打率がリーグトップ(.250)。中心バッターの宮﨑選手を欠く中、筒香選手が加わり、オースティン選手が復活、ルーキーの度会選手も調子を上げてきたなど、プラス要素は非常に多い。投手陣も、東投手という軸がいて、石田裕投手のような若手も出てきました。楽しみな点は多いのですが、チームとして圧倒的な力はそこまでない。では阪神と巨人に抜け出せる要素があるかといったら、現状、この2チームにもそれは感じません。
――巨人は今季、菅野投手が復活しましたが……。
菅野投手は、明らかに昨季より体のキレがよく、球速も戻ってきました。巨人は今季、戸郷投手、山﨑伊投手、菅野投手の3人、防御率1点台の先発陣がいるのが大きい。ここまで戸郷投手が金曜、山﨑伊投手が火曜と、3連戦の頭に先発し、菅野投手が日曜、という形である意味、3連敗しづらいローテーションをしっかり組んできました。それが、大崩れしなかった要因ではあるんですよね。
――阪神は“アレンパ”に向けて、なんとかいい位置に付けているのでは?
いや、阪神がここにいること自体、ビックリしているんですよ。正直、一番下にいてもおかしくない。その中で貯金を作れているのは、なんだかんだ言っても昨年日本一を経験したチーム、選手たちの実力もあるのでしょう。チームの結果が出なくなると、「監督の采配」が問われ始めますが、これだけ選手の状態が上がってこないと、采配以前の問題ですよね。思い出すのは岡田監督が指揮を執っていた2008年、首位を独走していたにもかかわらず、一時は13ゲーム差を付けていた巨人に終盤、逆転優勝を許してしまった。当時私も現役だったんですが、あのときは9月にチーム全員、調子が悪くなってしまって、さすがの監督も手の打ちようがありませんでした。今季も同様で、阪神はとにかく選手一人ひとりが打率を1分でも2分でもいいから上げないと、厳しいですよ。特にレギュラーメンバーですね。
――ヤクルトも交流戦では4位、と気を吐いています。
ヤクルトは今季、とにかくケガ人が多いですよね。そもそも塩見選手、山田選手という2枚看板が1年間機能しなかったら、ヤクルトの上位進出は厳しいかなと思っていました。サンタナ選手、オスナ選手が頑張ってくれていますが、やはり村上選手の状態が上がってこないと、厳しいでしょう。それから、中日。投手陣が本当にいいチームなので、そこを巻き返しの原動力にしてくれればいいですね。とはいえ、首位から6位まで6.5ゲーム差。パ・リーグの1位と2位のゲーム差よりも少ないことを考えれば、ヤクルト、中日にだってまだチャンスはありますよ。