【赤星憲広のセ・パ展望】阪神にビックリ「正直、最下位にいてもおかしくない」 ソフトバンクの独走に“待った”をかけられるのは?

前田恵

球団史上初のリーグ連覇を目指す阪神はここまで打撃不振に陥り苦戦を強いられている。岡田監督の手腕が問われる 【写真は共同】

 交流戦を終え、リーグ戦が再開された。交流戦終了時、6.5ゲーム差以内に6チームがひしめき合うセ・リーグに対し、パ・リーグはソフトバンクが2位に9ゲーム差を付けて首位独走中。セ・パともにどんな結末が待っているのか、これから3カ月の戦いに注目が集まる。そこで今回、阪神OBで野球評論家の赤星憲広氏に、ここまでの戦いを踏まえ、セ・パ両リーグの今後の展望について聞いた。(取材日:6月17日/文中の成績は同日時点)

交流戦明け、“混セ”を抜け出すのは…

――交流戦終了時点で、セ・リーグは1位・広島から6位・中日までのゲーム差が6.5という“だんごレース”です。赤星さんは、これをどう分析しますか?

 今年のセ・リーグは正直、開幕前から順位予想が非常に難しかったんです。そこで、戦力の整った阪神、巨人を私は上位に挙げたのですが、フタを開けてみれば、この2チームが思ったように成績を伸ばせなかった。それがより一層、この混戦を招きましたね。(交流戦終了時点で)首位に立っている広島に関しては、もともと投手陣がいいので、上位に来る可能性は十分あると考えていました。実際、序盤戦はチーム防御率がリーグのトップ3で、なおかつチーム打率はワースト3、というチームが途中まで皆、Aクラスにいたんですよ。

――はっきり傾向が出ていたんですね。

 完全に“投高打低”でしたね。その中で、広島のチーム打率が上がって、打線がつながり始めた。今、チーム打率(.240)はリーグ2位ですからね。そこが、3ゲーム差を付けて首位に立った大きな要因です。

――では交流戦明け、抜け出すチームは出てくるでしょうか?

 正直、抜け出すチームはないかなと思っています。ある程度、この“だんご”状態が続くのではないか、と。というのも過去、交流戦を徹底的に苦手にしてきた広島(12位が過去6回、昨季までの通算成績166勝227敗15分)が、今季は10勝8敗と勝ち越した。抜け出す要素があるとしたら、広島に最も可能性があるんですよ。
 交流戦でセ・リーグのトップだったDeNAは、現在チーム打率がリーグトップ(.250)。中心バッターの宮﨑選手を欠く中、筒香選手が加わり、オースティン選手が復活、ルーキーの度会選手も調子を上げてきたなど、プラス要素は非常に多い。投手陣も、東投手という軸がいて、石田裕投手のような若手も出てきました。楽しみな点は多いのですが、チームとして圧倒的な力はそこまでない。では阪神と巨人に抜け出せる要素があるかといったら、現状、この2チームにもそれは感じません。

――巨人は今季、菅野投手が復活しましたが……。

 菅野投手は、明らかに昨季より体のキレがよく、球速も戻ってきました。巨人は今季、戸郷投手、山﨑伊投手、菅野投手の3人、防御率1点台の先発陣がいるのが大きい。ここまで戸郷投手が金曜、山﨑伊投手が火曜と、3連戦の頭に先発し、菅野投手が日曜、という形である意味、3連敗しづらいローテーションをしっかり組んできました。それが、大崩れしなかった要因ではあるんですよね。

――阪神は“アレンパ”に向けて、なんとかいい位置に付けているのでは?

 いや、阪神がここにいること自体、ビックリしているんですよ。正直、一番下にいてもおかしくない。その中で貯金を作れているのは、なんだかんだ言っても昨年日本一を経験したチーム、選手たちの実力もあるのでしょう。チームの結果が出なくなると、「監督の采配」が問われ始めますが、これだけ選手の状態が上がってこないと、采配以前の問題ですよね。思い出すのは岡田監督が指揮を執っていた2008年、首位を独走していたにもかかわらず、一時は13ゲーム差を付けていた巨人に終盤、逆転優勝を許してしまった。当時私も現役だったんですが、あのときは9月にチーム全員、調子が悪くなってしまって、さすがの監督も手の打ちようがありませんでした。今季も同様で、阪神はとにかく選手一人ひとりが打率を1分でも2分でもいいから上げないと、厳しいですよ。特にレギュラーメンバーですね。

――ヤクルトも交流戦では4位、と気を吐いています。

 ヤクルトは今季、とにかくケガ人が多いですよね。そもそも塩見選手、山田選手という2枚看板が1年間機能しなかったら、ヤクルトの上位進出は厳しいかなと思っていました。サンタナ選手、オスナ選手が頑張ってくれていますが、やはり村上選手の状態が上がってこないと、厳しいでしょう。それから、中日。投手陣が本当にいいチームなので、そこを巻き返しの原動力にしてくれればいいですね。とはいえ、首位から6位まで6.5ゲーム差。パ・リーグの1位と2位のゲーム差よりも少ないことを考えれば、ヤクルト、中日にだってまだチャンスはありますよ。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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