【赤星憲広のセ・パ展望】阪神にビックリ「正直、最下位にいてもおかしくない」 ソフトバンクの独走に“待った”をかけられるのは?

前田恵

ソフトバンクの対抗馬になり得る3チーム

就任3年目の新庄監督(一番左)率いる日本ハムを赤星氏は「形になりつつある」と分析。赤星氏の読み通り首位猛追なるか 【写真は共同】

――次に、交流戦を経てもなおソフトバンクが独走するパ・リーグです。まずソフトバンクの強さの要因については、これはもう……。

 チーム打率もチーム防御率も、共にリーグトップですからね。順位として当然、こうなりますよね。何より、チームの総得点と総失点を見てください。263得点は12球団でもダントツです。なおかつ、失点は151しかないわけで、得失点の差が今、100点以上ある。打率と防御率だけでは計り知れない部分が、この数字にも表れています。主軸の柳田選手が(右半腱様筋損傷で全治約4カ月と診断され)離脱しても、戦力ダウンしているように感じないんですよね。

――やはり強いチームは選手層が厚いんですね。

 ソフトバンクは、若手の育成にも非常に力を入れています。だから、誰かが抜けても代わりがいるチームではあるのですが、昨年まではその戦力を生かし切れていなかった。それが今年は、うまくいっていると思います。何より近藤選手という、絶対的安定感のある成績を残してくれる選手がいるのが大きいですよね。今、両リーグで3割を打っているバッターは3人しかいない。これだけ投高打低であるにもかかわらず、3割4分6厘打っているのが、近藤選手。4割4分7厘という出塁率の高さも、出色です。近藤選手のような選手が柱になって、どっしり構えてくれていると強いですよね。

――これから2位以下のチームが少しでも、ソフトバンクに迫ってくれるといいのですが。

 交流戦ではオリックス、日本ハム、楽天が目に付きました。楽天は交流戦で優勝したことで、流れを変えたいところ。オリックスは結果としては10勝8敗でしたが、ここから上がってきそうな要素がたくさんあると思います。まだまだ若い紅林選手の成長も見られますし、前半、かなり苦しんでいた西川選手の状態が、この交流戦でグンと上がってきました。加えて、ケガで離脱していた選手が戻って来たり、復帰のメドが立って来たりしているのも、期待できるポイントですよね。そもそもオリックスは、去年までのリーグ3連覇の中心にいた選手が、ほとんどいなくなっていたんです。「こんな状況で、どうやって勝つねん」と思っていましたが、その中で古田島投手、本田投手といった面々が出てきたのは、オリックスのドラフト戦略も含めた若手育成の賜物だと思います。ケガ人の穴を埋められる選手層を、オリックスも持っている。だから、このチームはこのままでは終わらない。まだまだ上がってくる可能性があると私は見ています。

――日本ハムは交流戦で負け越しましたが(最終成績は7勝10敗1分で9位)、上位を争うロッテよりも可能性を感じるということですか?

 日本ハムは今年、非常にいいチーム状態だと思いますよ。新庄監督が、この2年間やろうとしてきたことが3年目、形になりつつあるのでしょう。何より選手たちが自信を付けてきた。選手の顔を見ていると、一番楽しそうに野球をやっているのが、日本ハムですよ。まあ、それを一番喜んで、選手たちと一緒に楽しそうにしているのは、新庄監督なんですが(笑)。最初のころは、選手たちもまだどこか「自分たち、これでいいのかな」と思いながら戦っていたように見えました。それが3年目にして、みんな分かってきた。だからソフトバンクを追いかける一番手は間違いなく日本ハムでしょうし、そこにオリックス、楽天がどこまでついていけるかだと思っています。

――最下位を独走する西武は、どうすればいいでしょうか?

 山川選手がソフトバンクに移籍することになった時点で、今年は長打力より機動力を生かした、若手選手中心の戦いをしていくところだったと思うんです。もともと投手力は非常に高いチームでしたからね。現状、今年1年は我慢の年になりました。もちろん、まだ諦めてはいけませんが、とにかく若い選手たちに経験を積ませて、ファンに来年以降楽しみだなと思わせる――チームの立て直しを進める1年にしてほしいと思います。

(企画構成:株式会社スリーライト)

赤星憲広(あかほし・のりひろ)

【写真提供:オフィスS.I.C】

1999年亜大卒業後、JR東日本を経て、2000年度ドラフト4位で阪神タイガース入団。プロ入り1年目に、盗塁王と新人王を獲得、以後05年まで5年連続盗塁王を獲得し、プロ通算381盗塁は球団最多記録。07年には1000本安打達成。ゴールデングラブ賞6度受賞。俊足を生かした全力プレーと、06年からは選手会長としてもチームを牽引するが、09年9月、試合中のダイビングキャッチで脊髄を損傷、同年12月に現役引退。小さな体格や度重なるケガとの戦い、現役時代から続ける車いす寄贈活動、野球界発展を目指した野球チーム設立などの自身のあらゆる経験から、現在は野球評論家、プロ野球解説以外でも、各種メディア出演、講演などをおこなう。

2/2ページ

著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント