町田の快進撃を支える「直線的でシンプル」な攻撃 サイドから生まれる得点と好循環
C大阪戦の決勝点も、クロスボールから生まれた 【(C)FCMZ】
J2から昇格したばかりの新参者が、初のJ1で旋風を起こしている。そのインパクトから今季は様々な記事が発信され、専門家や解説者の言及も多い。町田のスタイルは「徹底」「直線的」といった用語で形容される場合が多く、それはおおよそ正しい。
194センチの長身FWオ・セフンにハイボールを競らせて、他のアタッカーがこぼれ球を狙うアップ&アンダーの連携は町田の基本形と言っていい。ロングスローの多用も間違いなく町田の特徴だ。ただ町田の試合をじっくり見ると、別の強みが見えてくる。それはクロスボールからの得点力で、C大阪戦の2ゴールも「サイド」「クロス」から生まれている。
町田が14試合で挙げた20得点を振り返ると、クロスからのフィニッシュは「7」ある。これはセットプレーから生まれたゴールと同数で、さらに町田はクロスから生まれた得点がJ1の中でもFC東京に次いで2番目に多いチームだ。
スピードを強みに
まず単純に町田のサイドアタッカー(ウイング)は速い選手が多く、スピードで優位性を作れている。C大阪戦の先発は右がU-23日本代表の平河悠、左は藤本一輝という組み合わせだった。後半はナ・サンホ、荒木駿太が交代で入ったが、この4人は揃ってスピードに恵まれている。
ボランチの柴戸海はこう述べる。
「ヨーイドンをすれば、ウチには速い選手が揃っているので、そこの優位性を生かせたと思います。最初から出た選手もそうですけど、途中から出た選手にスピードがありました。相手も疲労が溜まっていたので、そこをどんどん突いていって得点が生まれたと思います」
黒田剛監督は、C大阪戦の展開をこう振り返る。
「交代で入った選手にスピードがあり、相手のハイラインの背後を突くことで、かなり相手のディフェンス(DF)を苦しめられたと思います。後半に(右サイドの)ナ・サンホが入ってから、前にすごく躍動感が出ました。それからデュークもかなり運動量が上がってきて、前から強くプレッシャーをかけられていました」
町田が70分に挙げた先制点は、右サイドでFW藤尾翔太がボールを収めてDFを引き付けたところから生まれた。後方から右サイドバック(SB)の鈴木準弥がサポートに入り、縦にフィードを送る。するとナ・サンホは相手DFとの1対1から前に抜けてクロスを送り、そこにオ・セフンがボレーで合わせた。完全に「スピード」でアドバンテージを取った形だった。
「切り替え」「ハードワーク」で上回る
ナ・サンホ(左)も俊足、突破力の持ち主 【(C)FCMZ】
ここでポイントになったのは「切り替え」「ハードワーク」だ。林はこう説明する。
「プレーが切れた後の切り替えで、奥まで運んでいきました。そこのトランジション、相手が休んでいる間に走るところは、何回も意識してやっていました。やっと結果に結びつきました」
Jリーグが公表しているトラッキングデータを見ると、今季の町田は14試合中12試合で走行距離が相手を上回っている。さらに切り替えはチームが特に徹底しているポイントだ。相手が戻っていない、守備が揃っていないうちに動き出し、そこにボールが入れば、やはり高確率でチャンスにつながる。
また黒田監督は「4枚入り」という用語で、サイドからのクロスに対してエリア内の厚みを作る意識づけを選手にしている。林のクロスに対してはデューク以外にもエリキ、荒木駿太がゴール前に飛び込んでいたが、「4人目」で林の脇から縦に入ったボランチ下田北斗の動きが実は肝だった。DFとしてはその動きを放置するわけにいかず、結果的に林のマークが空いた。
町田の決勝点は後半ロスタイムだった。敵味方が疲れている時間帯にもかかわらず、左SB林が忠実なスプリントを見せ、交代選手4名がエリア内の厚みを作っていた。エリア内の「枚数」もクロスを得点につなげる大切なポイントだ。