「再延長」の死闘で宇都宮を下し、SF進出決定 千葉Jのピンチを救った強心臓ルーキー内尾聡理

大島和人

千葉Jが宇都宮との激闘を制してSF進出を決めた 【(C)B.LEAGUE】

 2023-24シーズンのB1チャンピオンシップ(CS)は、波乱のスタートを切った。クォーターファイナル(QF/1回戦)の4カードを見ると、レギュラーシーズンの順位で下に位置するチームが3勝している。

 宇都宮ブレックスは51勝9敗の東地区首位、全体1位でレギュラーシーズンを終えていた。しかし東地区3位、「全体8位」のワイルドカードでCSへ進出した千葉ジェッツに1勝2敗で屈している。

 千葉はリーグ戦こそ35勝25敗と苦しんだが、2022-23シーズンのCSファイナリスト。今季は東アジアスーパーリーグ(EASL)を韓国やフィリピンなどの強豪を退けて制し、天皇杯も優勝している。そう考えると、CSの1回戦で宇都宮と千葉のどちらかが消えるのは勿体なく感じる顔合わせでもあった。

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エースキラーがファウルトラブル

 1勝1敗で迎えた「負けたら終わり」「勝ったらセミファイナル(SF)進出」の第3戦は両チームとも譲らず、ダブルオーバータイム(2度の延長)にもつれ込む激闘となった。

 千葉は第1クォーターを25-20、第2クォーターは39-35とリードして終えている。その一方で守備にトラブルが起こっていた。

 原修太は187センチ・96キロの強靭な肉体とフットワークを持つエースキラー。俊敏な選手にも、パワフルな選手にも、きっちり対応できる守備のキーマンだ。

 その原は第2クォーター残り1分25秒、残り8秒と立て続けにファウルを犯し、早々に3ファウルの状態となる。さらに第3クォーター残り4分54秒にはギャビン・エドワーズに対するファウルで4ファウル目。5ファウル、つまり退場まで「あとファウル1つ」の状況に追い込まれてしまった。千葉は試合の終盤に向けて、原をベンチに下げざるを得なくなった。

 宇都宮はD.J・ニュービルが司令塔にしてポイントゲッターだ。彼は自らボールを運び、様々な種類のシュートを狙ってくる。

 新たに「ニュービル担当」を任されたのが、中央大を卒業してまもない内尾聡理だった。184センチ・81キロのシューティングガードで、福岡第一高時代は河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)、小川麻斗(千葉J)とともに高校日本一も経験している。姉・聡菜も富士通レッドウェーブに所属し、今季のWリーグ優勝に貢献したトップ選手だ。

 弟・聡理は昨年12月にインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)を終えてチームに合流。1月、2月はほとんどプレータイムを得られなかったが、3月4月と徐々にプレータイムを増やしていた。

内尾がニュービルへの守備とリバウンドで貢献

【(C)B.LEAGUE】

 内尾が大一番で期待以上の働きを見せる。ニュービルを完全に封殺できたかといえば違うのだが、フロントコートからしつこく「まとわりつく」ことで、ボディーブローを打ち込んでいた。

 もう一つの大きな貢献はリバウンドだった。決して大柄ではない彼だが、いいタイミングでいい場所に飛び込む感覚と闘争心がある。さらにいうと大一番でも動じる様子が一切ない、そんな強心臓の持ち主だ。この試合における千葉の勝因の一つはリバウンドだが、内尾はオフェンスリバウンド4本、ディフェンスリバウンド1本を獲得している。

 QF第3戦の出場時間は29分27秒と完全に主力級だ。3得点2アシストと攻撃のスタッツこそ平凡だが、守備とリバウンドで存在感を見せた。

 ジョン・パトリックヘッドコーチ(HC)はこう振り返る。

「(原が)前半で3ファウルになって、後半はスタートじゃなかったけれど、出たらすぐ4つ目のファウル。チームにとってはハンディキャップだと思いました。内尾は22歳ですけど、ベテランみたいにD.J・ニュービルに付いていました。何回かステップバックスリーを決められたけど、(内尾の)リバウンドと、フルコートで疲れさせるようなプレッシャーが、勝利に関して大事な部分だったと思います」

原が勝負どころで「奇跡」の3Pシュート

QF第3戦の原はオフェンスで貢献を見せた 【(C)B.LEAGUE】

 原は第4クォーター残り4分27秒、63-66と3点ビハインドの状況で戻ってきた。休養十分でコートに入った彼は、そこから立て続けに3ポイントシュートを決めている。

 原はこう口にする。

「こんな大事な一戦で、チームの力になれないもどかしさがすごくありました。でも、その穴を埋めるという言い方が失礼なぐらい、(内尾)聡理が本当にいい仕事をしてくれて、つないでくれた。いい時間帯にフレッシュな状態で戻ることができました」

 第4クォーター残り3分19秒から原が決めた同点3Pシュートは本人が「奇跡」と振り返る、バンクをかすめてリングを通過するシュートだった。

「バンクスリーに関しては『ちょっとズレたな』と思ったら入った。誰がどう見ても奇跡のバンクスリーなので、みんなが乗ったと思います。『こっちに流れ、あるんじゃないか?』と思わせるようなシュートを決められて良かったです」

 1ポゼション、1点を競い合う状況になれば、リスクを犯しても原をコートに残さざるをえない。彼はこのままオーバータイム突入後も起用され、最終的には4ファウルのままで試合を終えた。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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