「再延長」の死闘で宇都宮を下し、SF進出決定 千葉Jのピンチを救った強心臓ルーキー内尾聡理
再延長で千葉が突き放す
富樫の「足」は最後まで止まらなかった 【(C)B.LEAGUE】
「(ニュービルは)どういうプレーが得意か、HCやスタッフ陣から言われていたので、そこをやらせないように努めました。ただどうしても判断などのミスがまだ多かった印象で、結構やられました」
とはいえニュービルと堂々と渡り合ったことは間違いない。彼はこう続ける。
「『疲れさせる』ことが自分の仕事でもあったので、そこは粘り強くやらないといけないのかなと思いました。ルーキーですし、他の選手が少しでも楽にできるように、自分はそこでファイトするのが役目です。そこは確かに今日も、この前の試合もしっかりできたと思います」
83-83で2度目のオーバータイムにもつれ込んだ試合は、最後の5分で千葉が突き放した。のびのびとオフェンスに専念していたクリストファー・スミスがこの試合は36得点。キャプテンでポイントガードの富樫勇樹も47分02秒という異例の長時間出場ながら、消耗を感じさせないプレーを見せた。
パトリックHCはこう述べる。
「自分のチームにとって一番大切な選手は(富樫)勇樹。勇樹がいなければ、ウチは今シーズンどうなったか分かりません。彼はダブルオーバータイムで47分出て、まだ最後に走って回っていました。普通じゃないけど、びっくりはしていません。ロッカールームでも、大きい声でみんなを盛り上げている。こういうドゥ・オア・ダイ(生きるか死ぬか)の試合に関しては、一番メンタルがすごいと思います」
富樫は言う。
「第3クォーター、第4クォーターあたりは、足が止まりそうな瞬間もあったんですけど、オーバータイムとダブルオーバータイムは、なぜか逆に足の動きだしたような感覚がありました」
千葉は103-93で50分の死闘を制し、琉球ゴールデンキングスとのセミファイナルに向かうことになった。
若手が見せたステップアップ
パトリックHCが育成、采配の両面で手腕を発揮している 【(C)B.LEAGUE】
パトリックHCはこう振り返る。
「最初にリビルディング(再建)のシーズンと自分も思ったし(クラブから)言われていました。ずっと千葉ジェッツでやっていたギャビン(・エドワーズ)たちを、キープできなかったのは事実です。できるだけ早く若い選手に経験させて、タイトル(の可能性)が出てくるときは全力でタイトルを獲ろうと(考えていました)。勝ったり負けたりすることは最初から気にしなかったけど、ギリギリでチャンピオンシップに入れた。その間で自信になったのはやっぱりEASLです。結構強い相手に対して全勝優勝できて、それから天皇杯でも優勝できた。自分も含めて、若い選手も含めて、全体の自信になったと思います」
富樫は若手の奮闘、成長をこう評価する。
「初戦は金近(廉)選手の大きな3ポイントで引き離しました。この3試合は(小川)麻斗がプレータイムをもらえなかったかもしれないけど、シーズンを通しては彼に大きな役割が与えられて、活躍してくれました。内尾に関しては正直、僕の中でもよく分からないです(苦笑)ここまでディフェンスとハッスルができる選手はなかなかいません。ディージェイ(・ニュービル)相手にあれだけのしつこさでディフェンスができる選手は、このリーグにもそうはいません。この3日間、彼のディフェンスが、千葉ジェッツをセミファイナルに連れていったと言っても過言ではないくらいです」
富樫は記者から繰り返し勝因を問われていたが、そのたびに首をかしげていた。確かにどちらが勝ってもおかしくない試合で、「試合を分けたポイント」も5個や10個では済まないだろう。ただ内尾の活躍がなければ、千葉がセミファイナルに勝ち上がることはなかった。そもそも若手の底上げがなければ、チャンピオンシップまでたどり着けなかった。
ファンの作り出す空気も含めて、宇都宮が素晴らしかったことは、改めて明記しておきたい。Bリーグの歴史の中でも、間違いなくベストゲームの一つだった。