【ボクシング】世界バンタム級3位の堤聖也はどう見る? 「4大世界戦プラス1」(5.6東京ドーム&5.4大阪)

船橋真二郎

5月6日、東京ドームで武居由樹の挑戦を受けるジェーソン・モロニーのスパーリングパートナーを務めた堤聖也(右) 【写真提供:堤聖也】

帰国直後の堤聖也を直撃

 4月28日、WBO世界バンタム級王者のジェーソン・モロニー(豪)が来日し、東京ドームで5月6日に開催される4大世界戦の全キャストが日本に集結。決戦ムードが高まってきた。

 同日、別の便で前日本バンタム級王者の堤聖也(角海老宝石)も帰国した。3月18日に日本を発ってから約6週間、モロニーのチームに加わり、仮想・武居由樹(大橋)としてスパーリングパートナーを務めてきた。

 東京ドームでモロニーが元K-1王者・武居の挑戦を受けるWBO戦、王者の井上拓真(大橋)が1位の石田匠(井岡)を挑戦者に迎えるWBA戦に加えて、5月4日にはエディオンアリーナ大阪第1競技場で王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に1位の西田凌佑(六島)が挑むIBF戦もあり、この短期間でバンタム級の3つの世界王座の行方が決まる。

 WBC世界バンタム級王座には中谷潤人(M.T)が君臨し、結果次第ではバンタム級の4団体で日本人世界王者が並び立つ可能性があると注目されている。ほかにも世界ランクに名を連ねる那須川天心、増田陸(ともに帝拳)、比嘉大吾(志成)など、バンタム級には有力な日本人選手が多く、ここから大きな盛り上がりが生まれる期待感もある。

 現在、WBA、IBFともに3位、WBO6位、WBC9位と主要4団体で世界ランク入りする堤も動向を注視し、その渦の中に飛び込むときを虎視眈々と狙っているひとり。

 また4大世界戦のキャスト8人のうち3人は、タレントを数多く輩出している1995年生まれで堤と同い年。世代トップのひとりである井上拓とは高校2年のインターハイ準決勝で対戦してポイントで敗れており、「プロでリベンジしたい相手」と公言してきた。

 WBA世界フライ級タイトルマッチに舞台を移し、2年10ヵ月ぶりに相まみえる王者のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)と挑戦者の桑原拓(大橋)とも対戦経験がある。阿久井とは中学3年のU-15全国大会で初回RSC負けを喫し、高校2年のインターハイ3回戦ではポイント勝ちで雪辱した。桑原には高校2年の国体準々決勝でポイント負けしている。

 種々の関係性も踏まえ、帰国直後の堤を直撃。よく日焼けし、精悍さを増したバンタム級世界ランカーにまずは現地での様子、それから「4大世界戦プラス1」の見どころを聞いた。

 オーストラリア北東部クイーンズランド州のゴールドコーストから車で30~40分。山の中にモロニーが師事するトレーナーのアンジェロ・ハイダー氏の自宅はあり、馬、牛、羊、ブタなども飼育する広い敷地内にトレーニングの拠点となるプライベートジム、堤が池側純(角海老宝石)や中川抹茶(スパイダー根本)、そのほかのスパーリングパートナーと共同生活をしたプレハブの一軒家もあったという。

 海外では午前中にジムワークを行うとはよく聞く話だが、スタートはあまり聞かない朝7時半。アップをし、8時半頃からスパーリング開始。10時にジムワークを終了するという1日の始まりだった。

 最初の1週間は日本で負っていたケガで堤は大事を取って休養。約5週間のトータルラウンドは「マジで数えないので」と正確には分からないが、基本的にスパーリングは週3回、堤自身の最長は8ラウンドで、6ラウンドが多く、4ラウンドもあったというから90ラウンドほどか。

 右構え、左構えとスイッチするのが堤だが、もちろんサウスポーで通し、徹底して武居の特徴を捉えることを求められた。ジェーソンのほか、双子の弟で元WBA世界スーパーフライ王者のアンドリューとは右構えで、武居と対戦した経験のあるタンザニア出身のブルーノ・タリモ(豪)とも手合わせ。東京五輪フライ級代表でWBC世界ミニマム級2位のアレックス・ウィンウッド(豪)ともマスボクシングで対峙するなど、堤にとっても実り多き合宿になった。

「技術勝負の駆け引きでも負けてなかったし、もともとここが必要になるな、と考えていた課題も確認できたので、このまま突きつめて。(世界と)大きな差は感じなくて、十分通用すると自信も得られました」

 近い将来の勝負のときを見据え、着々と牙を研ぐ堤はライバルの戦いを含めた5つの世界戦をどう見るのか。(以下は堤のひとり語り)

ネリが勝とうとすればするほど終わりは早くなる

◆5.6 東京ドーム 4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
王者 井上尚弥(大橋/31歳、26勝23KO無敗)
WBC1位 ルイス・ネリ(メキシコ/29歳、35勝27KO1敗)※サウスポー


 この試合に関しては、何も考えないで見て、純粋に楽しんだらいいんじゃないですかね(笑)。すごい! 強い! カッコいい! っていうのが感覚的に分かる試合になると思うので。

 個人的にネリのスタイル、めっちゃ好きなんですよ。あのアグレッシブさ。で、結構、型にもハマってないから。ただ、あんなにガンガン、勢いよく行ったら、どこかで一発もらって、尚弥さんに砕かれるとは思いますけど。

 力量的にネリが尚弥さんとどうこうできるとは、僕はあまり感じない。だから、アグレッシブにも行けないかなとも思います。それはそれで、どんどん追い込まれて、頑張って行こうとしたところをつぶされるか。途中で逃げに徹したら、ちょっと時間がかかるかもしれないけど、僕にはつぶされるネリしか見えないですね(笑)。

 要はネリが勝ちに行こうとすればするほど、終わりやすくなる。もし、最初からアグレッシブに行ったら、序盤で終わることも全然あります。僕の予想は中盤。終わるなら腹だと思います。まあ、5ラウンド、左ボディということにしましょうか(笑)。いずれにしても、尚弥さんがまた、みんながドン引きする(呆気にとられる)ような内容を見せるんじゃないかな、と思います。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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