中国戦でいきなり10人に…パリ五輪への最初の一歩、日本は「全員キャプテン」で苦境を乗り切る
松木の先制点までは順風満帆だったが、日本は急転直下の劣勢を強いられることに…… 【写真は共同】
最高の先制、まさかの退場
サッカーの世界で、よく言われることには違いない。丸いボールをめぐって熱くなる22人+審判のあれこれが生み出す“インシデント”に備えておけ、そしてすぐに対応しろというわけだ。
ただ、言うほど簡単な作業ではない。特に急造であることを余儀なくされる代表チームにおいて、突然の事態に混乱なく対応するのは難しい。
4月16日にAFC U23アジアカップの初戦を迎えたU-23日本代表が直面したのは、まさにそうした部分である。
U-23中国代表を向こうに回しての第1戦、日本の出足は至って好調だった。及び腰にも見えた相手を押し込み、前半8分にMF山田楓喜(東京V)のクロスから、DFの間へ入り込んだMF松木玖生(FC東京)が左足でフィニッシュ。「練習してきた形」と松木が胸を張ったとおり、手応えのある先制点でチームは勢いに乗っていた。
ただ、そこから10分も経たない前半17分のことだった。DF西尾隆矢(C大阪)がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の検証によって主審の視界外で相手選手に肘を入れてしまっていたことが発覚。レッドカードを提示され、日本は開始早々に10人での戦いを強いられることとなった。
“想定内の”想定外にも対応
守備のリーダーである西尾の退場。当然想定外なのだが、想定内の事態でもあった 【REX/アフロ】
セオリー的にはポジションが動く選手は少ないほうがいいが、関根は元よりセンターバックの経験も長く、187センチの高さもある選手。松木も少ないながらも左サイドバックの経験はあり、競り合いの強さと左足キックは折り紙付き。右に回った内野貴は本来そのポジションの選手ということで、選手の適性を考えれば妥当な配置だった。
「選手がこっちの指示を待つのではなく、すぐにフィールドプレーヤー9人で話して決めた。そこはものすごく選手を評価していいと思います」(大岩監督)
急場しのぎの時間帯のあと、センターバックに控えの木村誠二(鳥栖)を投入。松木がボランチに入る形に変更し、何とか防備を整えることに成功した。
ただ、ここからの時間帯が一番苦しかった。関根が「前半は少なからず、ちょっとした動揺があって、どうしてもビビってラインに並んでしまう展開が多かった」と率直に振り返ったように、相手のボールを持った選手へプレッシャーをかけられず、あっさりとシュート、クロスを入れられるシーンが連続してしまう。GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)の好守で耐えたが、ポジティブな内容ではなかった。
ただ、「前日のセットプレー練習で10人になったときの形もやっていた」(松木)という準備の部分は効いていて、試合のキーポイントとなったセットプレーの守備に混乱はなく、これがゼロ封できた一つの要因にもなった。
「セットプレーでの練習だけでなく、流れの中でも『もし10人になったら』という話はミーティングであった。そういう想定外がまさか起きるとは思っていなかったですが、一応想定外ではなかったんです」(関根)