大岩ジャパン、パリ五輪アジア最終予選はこう戦え! 中国、UAE、韓国の攻略法&キープレーヤー

松尾祐希

3位以内に入らなければ、ストレートでパリ五輪出場権を手にできない厳しいアジア最終予選。まずは難敵が揃うグループステージを、いかに勝ち抜くかだ 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップが、いよいよ4月15日からカタールの地で始まる。はたして大岩剛監督率いる若き日本代表は、このタフな戦いを勝ち抜き、8大会連続の五輪出場権をつかめるだろうか。ここでは中国、UAE、韓国と同居するグループステージの3試合を展望。それぞれキープレーヤーを挙げながら、日本の勝ち筋を探っていく。

対戦相手のスタイルによって得手不得手が

 U-23アジアカップ2024は文字通り23歳以下のアジア・ナンバー1を決めるコンペティションであるとともに、パリ五輪のアジア最終予選も兼ねた重要な戦いだ。

 アジアに与えられたパリ五輪の出場枠は3.5。大岩剛監督が率いる日本代表はグループBに組み込まれ、16日に中国、19日にUAE、22日に韓国と対戦する。ここで上位2カ国に入れば8チームで行われるノックアウトステージに進み、最終的に3位までに入れば出場権を獲得できるレギュレーションだ。4位となった場合は大会終了直後の5月9日に五輪開催国・フランスのクレールフォンテーヌ国立サッカーセンターへと赴き、アフリカ4位のギニアとラスト1枠を懸けた一発勝負のプレーオフを戦うことになる。

 4月4日に発表された23人の招集メンバーを見ると、パリ五輪世代の中核を担ってきた選手が数名リストから漏れている。U-23アジアカップはインターナショナルマッチウイークではない時期の開催で、代表チームに拘束力がないからだ。

 さらに今大会は当初、今年1月に開催予定だったが、2023年6月に実施されるはずだったA代表のアジアカップがここにスライドした影響で、3カ月後ろ倒しされた。国内組は1チーム最大3人まで招集可能という協力体制を築けた一方で、海外組の派遣は所属クラブの意向次第。「イレギュラーな形で前例のない時期の開催となってしまった」と山本昌邦ナショナルチームダイレクターが嘆いたように、拘束力を持たない上に欧州各国リーグが終盤戦に差し掛かったタイミングでの開催で、海外組の招集は困難を極めた。

 もちろん、“最強チーム”を作るために協会側も早い段階から交渉を進めていたが、A代表組のGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)やMF久保建英(レアル・ソシエダ)は言うまでもなく、これまでチームの屋台骨を担ってきたMF鈴木唯人(ブレンビー)やMF斉藤光毅、MF三戸舜介(ともにスパルタ)の招集も実現しなかった。

 ヨーロッパでプレーする選手でメンバーに組み込めたのは、わずか5名。MF藤田譲瑠チマ、MF山本理仁(ともにシント=トロイデン)という中盤の核を担う主力コンビ、昨夏に明治大卒業を待たずに渡独したMF佐藤恵允(ブレーメン)、そしてDF内野貴史(デュッセルドルフ)とGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)だけだった。

 とはいえ、もとよりこうした状況は想定の範囲内。「コントロールできないことよりも、(代表活動に)来た選手、選んだ選手でどう戦うか。今までもずっとそう考えながらやってきた」という大岩監督は、22年3月のチーム発足当初から確固たる軸を持って強化を進めてきた。

 守備は前線からのハイプレスと中盤の連動した囲い込みによるミドルプレス、攻撃は丁寧なビルドアップによる遅攻とショートカウンターの二段構えで、システムに関しては4-3-3をベースに、守備時は4-4-2に可変する形を一貫して採用。誰がピッチに立ってもレベルを落とさずに戦えるチーム作りをしてきた。

 ただその一方で、確固たる柱が定まらないセンターバック(CB)に不安を抱え、また対戦相手のスタイルによって得意、不得手がはっきりしている点は懸念材料だ。

 ヨーロッパの国々のようにボールポゼッションを高め、戦術的に戦ってくる相手には強い。前線からの組織的なプレスがハマり、実際に欧州遠征では強豪国と互角以上の勝負を演じている。その反面、ラフにボールを蹴り込んでくるチームには脆さをのぞかせる。昨年10月のアメリカ戦(1-4)や今年3月のマリ戦(1-3)もフィジカルで押し込まれ、ロングボールや個の力で局面を打開されて成す術がなかった。

初戦の重圧を跳ねのける松木のメンタル

重要になるのが初戦の入り方。タフなメンタルの持ち主で、昨年3月のU20アジアカップでキャプテンとして中国と対戦した経験も持つ松木(左から2番目)の存在は大きい 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

 こうした前提を踏まえた上で、大岩ジャパンは本番のグループステージでどのように戦うべきなのか。3つのカードを、それぞれキーマンを挙げながら展望していこう。

 初戦で対峙(たいじ)する中国は、パワーと技術を兼ね備えた好チームだ。ただ、中盤の底に構えるムテリップ・イミンカリやトップ下のタオ・チャンロンらには警戒が必要とはいえ、実力的に日本が優位に立っているのは間違いない。冷静にボールを動かして相手の陣形を揺さぶり、確実に決定機を仕留められればおのずと勝利に近づくだろう。

 しかし、大会初戦の独特な緊張感もあるだけに、難しい試合になる可能性も否定できない。なにより中国はサイズがあり、日本が苦手とするフィジカルで押し込むようなラフな戦い方をしてくる。実際、昨年3月にU-20アジアカップのグループステージ初戦で中国と対戦した際には、立ち上がりから相手のパワーと高さに圧倒された。最終的に2-1で逆転勝利を飾ったものの、開始6分にオウンゴールで先制点を献上し、後半の半ばまでリードを許す苦しい展開を強いられている。

 だからこそ、求められるのはどんな状況にも動じず、タフに戦える選手。キーマンにはMF松木玖生(FC東京)を挙げたい。「武器はメンタルの強さ」と言ってのける20歳の俊英は、大舞台に滅法強い。

 ムテリップ・イミンカリ、タオ・チャンロンという中盤の要人を、松木が自慢のインテンシティで抑え込むことで、パスの出どころをつぶせる。さらにボールを奪ってからの推進力という持ち味も発揮できれば、ミドルゾーンの攻防で優位に立つだけではなく、攻撃に厚みももたらせるだろう。前述したU-20アジアカップの中国戦をキャプテンとして経験している点も含め、頼りにしたい存在だ。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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