中国戦でいきなり10人に…パリ五輪への最初の一歩、日本は「全員キャプテン」で苦境を乗り切る

川端暁彦

タフにつかみ取った勝点3

ビッグセーブを連発し、チームを救った小久保 【写真は共同】

 ハーフタイムは騒々しかったらしい。「全員がキャプテンみたいだった」と関根が笑って振り返るように、選手たちは活発に意見を交換し、「本当にロッカールームは会話が絶えなかった」(関根)と言う。

 まず徹底したのは「1-0で俺たちが勝っているんだから」という状況の再確認。極端な話、守り倒してそのまま終わってもいい。焦る必要なんて何もない。むしろ時間経過で焦ってくるのは相手のほう。当たり前のことだが、劣勢になるとこうした前提が抜け落ちたプレーをしてしまう選手が出るのもよくあること。精神的な余裕を持つことを含め、あらためて全員が共有した。

 プレー面では相手のボールホルダーにプレッシャーがかからなかった部分を特に修正。監督からの指示と選手サイドの問題意識は合致しており、すぐに意思統一が図られたと言う。

 後半立ち上がりにあった最大のピンチも小久保が「冷静に対応できた」と見事に左手一本で好セーブ。相手に流れが渡りそうな場面は試合の中でいくつかあったが、そうした要所を制し、後半はボール支配率こそ劣勢だったものの、前半よりも内容は明らかに改善されていた。

 大岩監督は後半22分、両サイドハーフを“タイヤ交換”する形でまずは藤尾翔太(町田)と佐藤恵允(ブレーメン)を両翼へ投入。馬力自慢で競り合いに強く、単独でボールを運べる上に守備もできる2人を消耗していた両翼に投入することで活力を確保した。

 最後は中盤にテコ入れするか迷った末に、左SBに本来はCBの鈴木海音(磐田)、前線に疲れの見えた細谷真大(柏)に代わってセットプレーの防空要員にもなれる長身FW内野航太郎(筑波大)を入れて逃げ切りへと舵を切り、チームの意思統一を崩さなかった。

 結果は1-0。10人の劣勢を跳ね返し、勝点3をつかみ取ることとなった。

タフにつかみ取った勝点3

想定外も準備し、逃げ切りへの舵取りも的確だった大岩監督(左) 【写真は共同】

 お世辞にも好内容と言える試合ではなく、ネガティブに振り返ることも容易な試合だった。ただ、個人的にはそうした見方に異論を唱えておきたい。

 まず言えるのは、「先制しておいて良かった」ということ。特に重視した初戦の立ち上がりは、事前に攻守のやることを明確化する形で準備したものをぶつけて主導権を握り、練習からやってきた形で先制ゴールを奪い取ってみせている。

 どうしても「退場以降」の流れがクローズアップされるであろう試合展開だったが、そもそもこの理想的な立ち上がりをしっかりやった「貯金」があったからこそ、退場者を出しながらも勝ち切れたと言える。この点はしっかり指摘しておきたい。

 ハーフタイムを挟んで内容を良化できたのもポジティブなこと。「そこがこの年代の良さでもある。非常にこのゲームを勝ち切ったことは大きいことだなと個人的に思っています」と松木が振り返ったように、急造チームとしての難しさを避けられない代表において、こうしたタフな試合展開を乗り切る経験を全員で共有できた意味は大きい。

「チームの誰も隆矢くん(西尾)のことを悪いと思っていないですし、逆にこれを勝ててチームの士気もさらに高まったというか、そういうところはある」(松木)

 西尾の退場は個人の失態ではあるのだが、そうしたミスを全員でカバーできてこその「チーム」である。未完成の選手もまだまだ多い年代の集団が、こうした経験を乗り越えた意味は大きいと捉えておきたい。

 もちろん、楽観するばかりではいけない。「締め直さないといけない」と言ったのは他ならぬ松木だった。精神面の問題だけでなく、肉体的な消耗を強いられたのも事実で、ポジティブな面だけではないのも確かではある。

 次は中2日、19日のUAE戦である。

 大岩監督は「ここから次の試合まで時間がない。どの選手が(体力的に)いけるのか。事前のプラン通りにいかないというところも再確認したので、23人全員が最高の準備をすることが必要」とフレッシュな選手へのメンバー入れ替えも示唆。あらためて「23人全員で」パリへの切符をつかみにいく。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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